偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第300話 2年目の就農!

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 幸村さんからの問いを、鈴音さんは問題なく答えるだろうと思いながら、俺は静かに見ていた。

「はい!」
「私は、比叡さんを信じています!!」

「私が見つけられなかった、この地域でも栽培出来る作物を比叡さんは見つけました」
「数年間は試行錯誤が続くでしょうが……私はそれでも比叡さんに付いて行き、それに目処が付きましたら…、私はお母さんに成るつもりです!」

「!」

(鈴音さん!?)
(其処まで宣言しなくても良いよ!!)
(幾ら、幸村さん達とは良好な関係とは言え、鈴音さんは純粋すぎる!)

 鈴音さんの中では、ナス・キュウリを捨ててまで里芋に移行する気満々で有った!
 職業訓練同期生から聞いた話を鈴音さんに説明して、この地域での里芋栽培を適する事が出来れば、鈴音さんは子育てに専念出来るように成るからだ。
 鈴音さんも高齢出産は嫌らしい!?
 この発言に対して、幸村さんも楓さんも唖然としていた……

「そっ、そっか……鈴音さんは、比叡君を其処まで信じているんだ」
「結婚式も無事に終えた仲だし、それだけ結束力が有れば問題ないな!」

 幸村さんがそう言い終えた後、楓さんも鈴音さんに話し掛ける。

「お二人は本当に仲が宜しいですね♪」
「私も……そんな時期が有りましたわ!」
「無事に成功させて、新しい命を誕生させてくださいね。鈴音さん!」

「はい!」
「幸村さん、楓さん。有り難う御座います!!」
「比叡さんと二人三脚で、農業とこの地域を盛り上げていきます!!」

 鈴音さんの“びっくり”発言で俺は驚いたが、鈴音さんも覚悟決めていた事には痛感した。
 必ず、この地域での里芋栽培を成功させて、一日でも早く鈴音さんを身軽にさせて、そして今は2人の青柳家に、待望の家族を誕生させようと俺は心に誓った!

 ☆

 しばらく時が経ち……

 今年も暑い夏がやって来た。
 今日も朝から、うるさく蝉が鳴きまくる……
 この日も、朝から鈴音さんとナスとキュウリの収穫作業をしている。

 梅雨の時期は適度に雨が降り、水稲、ナス、キュウリ、そして里芋も順調に育っている。
 今の所、大きな台風が来る気配は無いから、この間に各作物が順調に育って欲しい!

 俺が一番気にしている里芋は、大きな葉っぱを広げており順調そうには見えるが、芋が育って無ければ意味が無い。
 だけど、見る感じでは順調で有った。

 この地域での里芋栽培が可能と判断出来た場合は、俺は水稲・ナス・キュウリの作付けを止めて、里芋専業に転換する予定で有る。
 今は晩生おくての品種だけだが、早生わせ中生なかせ・晩生の品種を作付けして行き、年間を通して営農が出来る様にして、収益の大幅増加を考えていた。

「比叡さん!」
「一旦、休憩にしましょうか♪」

 今日の収穫を大体終えた所で、野良着がすっかり板に付いた鈴音さんが、ナス圃場の向こう側から声を掛けてきた。
 鈴音さんの年齢はまだ20代前半だが、すっかり1人前姿で有った。

「そうだね!」
「今日も暑いし、休憩にしようか!!」

 此処は山間地区の圃場なので、近くに木陰の場所が有る。
 夏の時期は其処で休憩をする。
 この時期は休み休み作業をしないと、直ぐに熱中症に成る恐れが有る。

 鈴音さんが一足先に、休憩所にしている場所に辿り着いていて、お茶の準備をしていた。
 俺がその場所に辿り着いて腰を下ろすと、鈴音さんがコップに入った麦茶を渡してくれる。

「はい! どうぞ!!」
「良く、冷えていますよ♪」

「ありがとう、鈴音さん!」

 俺は鈴音さんからコップを受け取り、一気に麦茶を飲む!
 作業の合間に飲む、夏の冷たい麦茶は最高に旨い!
 鈴音さんも同じ様に麦茶を飲んでいた。

「ふぅ!」
「アイスティーも良いですが、屋外での作業時は麦茶が一番ですね♪」

 一気に麦茶を飲み干した、鈴音さんも満足顔で言う。

「今年も今の所は順調だね。鈴音さん!」

「はい。順調ですね♪」
「ナス・キュウリの収量も去年と比較して増えていますし、お米の方も大きな病気が出ていないから、今年の収益は期待出来そうですね!」

 ナス・キュウリの作付けは去年と同じだが、去年と比べれば現段階で収量は多い。
 天候が良いのも有るが、俺と鈴音さんの腕が上がった証でも有った。
 この後も天候に恵まれれば、良い成績を残せるだろう。

「比叡さん。後は里芋さんですね♪」
「里芋さんが、今後の私達の生活を変えてくれる筈です!」

 里芋は一反辺り、1トン以上の収穫が出来るそうだ。
 条件が良ければ、2トンを越える時も有るらしい!?
 それだけの収穫量が有ると言う事は、収益もそれだけ上がる。

 これは調べた話だが、里芋一反辺りで数百万円以上の収入に成るらしい!?
 鈴音さんが非常に期待するのも当然で有った。
 同面積の水稲を栽培するより、里芋の方が遙かに良いからだ。

「ここからが本番ですね。比叡さん!!」
「里芋栽培を無事に成功させて……そして、私達も子どもを授かりましょうね!」

「うん……鈴音さん」
「家族と里芋御殿を作りましょう!」

 俺は笑顔で鈴音さんに言うが、鈴音さんは微妙な顔をしていた!

「御殿は良いのですが、里芋御殿ネーミングが悪いですね…」
「普通に新居で良いですよ。比叡さん!」
「その時は、暖炉が有る家にしましょうね!!」

「それも、そうか!」
「あはは!」
「うん。新居を建てる時は暖炉を絶対に作ろう!!」

「うふふ!!」
「期待していますよ。比叡さん♪」

 蝉にも負けない、俺と鈴音さんの陽気な声が圃場に響く、ある日の午前中で有った。
 俺は今年の秋を期待しながら、鈴音さんとの合間の休憩を楽しんだ。
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