偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
295 / 434
【R-15】鈴音編 第2章

第293話 結婚式の翌日 その2

しおりを挟む
 無事に波津音市はずねしのショッピングモールに着いた俺達。
 このショッピングモールには初めて来る訳では無く、久しぶりで有った。
 まだ、山本(孝明)さんと仲が良かった頃、4人で何回か来た事が有る。
 その時にも映画を見たり、買い物を楽しんだ思い出が有る。

「この、モールも久しぶりだね♪」
「何かを色々と思い出すよ……。みんな、仲良くの時を……」

 最初は声が弾んでいた稀子だが、途中から“しみじみ”の口調に変わっていった!
 稀子も昔みんなで、来た事を思い出したのだろうか。

 今の俺と鈴音さんは、普段は波津音市まで出て来る事は無い。稀子も似たような者だ。
 日用品は地元の町で殆ど揃うし、今はネットショッピングが普及した御陰で、少し嵩張る物はネットショッピングで購入している。

 ネットショッピングなら、24時間注文が可能だし、買い物に行く時間も要らない。
 朝から晩まで農業に負われる俺と鈴音さんには、ネットショッピングが本当に便利で有り楽で有る。便利な時代に成った物だ!
 農業資材もネットショッピングで購入する時が有る。

「稀子さん…。過去の思い出よりも、今を楽しみましょう♪」
「折角、来たんですから!」

 鈴音さんは、過去を完全に克服したのだろう。
 穏やかな表情で、稀子に声を掛ける。

「……一番、りんちゃんが感傷にふけると思ったのに意外だ…」

 稀子は鈴音さんに向けてそう言う。
 俺も、心の中でそう思っていた。

(鈴音さんは俺と結婚して、一応幸せらしいからな)
(鈴音さんも、山本さんの恐ろしさを身をもって経験しているからな!)
(稀子の場合、まだ彼氏が出来ていないからな……。それが過去を引きずる原因かもな)

 稀子にも早く彼氏が出来れば、過去を忘れると思うが、稀子にはまだ彼氏は居ない。

「さて、お腹も空いていますし、お昼を食べに行きましょう♪」
「それに、映画の時間も有りますよね!」

「あっ、うん……。ご飯食べに行こうか……鈴ちゃん」

 稀子が映画を提案したのに今、一番元気なのは鈴音さんで有った!?

(本当に鈴音さんは、山本さんを過去に流したのだな……)

 山本さんが、俺達の前に現れる事はもう無い筈だ。
 本家も厳重に監視しているし、あの人もあの島で幸せに過ごしていると思う。
 俺達は駐車場からショッピングモール店内に入っていく。
 ショッピングモールだけ有って、人で賑わっていた。

「さて、何を食べましょうかね?」
「今日位は少し、豪華な昼食でも良いかもですね!」
「比叡さんの“へそくり”ですし!!」

「比叡さん!」
「昼食は稀子さんの分もご馳走しましょう!!」

「あっ、うっ、うん……」

 鈴音さんはご機嫌顔で、ショッピングモールのフードコートに向かっていく。
 鈴音さんは軽く言うが、これは俺のへそくりなんだが……
 今の場合は、鈴音さんと稀子が入れ替わったように見えた。

「今日の鈴ちゃん…。凄く元気だな…」
「今が、幸せ絶好調かも……」

 稀子はそう呟く。
 鈴音さんが幸せなのは良い事だが、稀子が元気なさ過ぎるのも気に成る。

「稀子!」
「今の鈴音さんは、本当に幸せなんだよ!」

「そりゃあ……鈴ちゃんと比叡君は、結婚式を挙げたばかりだからね」
「それで不幸せなら離婚だよ…」

 稀子は“しょんぼり”顔で言う。
 山本さんの思い出が稀子の中では、まだ大きいのだろう。

「……逆に言うと今日の稀子が、稀子らしくないんだよ!」
「モールに着くまでは一番元気だったのが、モールに着いた途端、一番元気が無くなるから」

「まぁ……そうだけど」
「鈴ちゃん……強くなったな…」

 稀子はそう言う。
 就農するまでは、お嬢様気質が抜け切らなかった鈴音さんだが、就農してからは少し変わった感じはした。

 体力も付いて来ていると思うし、動きも活発に成ったと俺は感じて居る。
 とは言っても、未だに軽トラは運転したがらないし、お嬢様と感じる時も有る。
 まぁ、そんな話は良いか。

 ……

 鈴音さんのさっきの言葉から、俺はへそくりの大部分を失う昼食だと覚悟していたが、結局ラーメン屋での昼食に成った。
 俺達の今住んでいる場所には、ラーメン屋は近所には無いし、気軽に行ける場所でも無い。

 自炊派の鈴音さんも流石に、ラーメンをスープからは作らない。
 鈴音さんがラーメンを食事で出す時は、市販の生麺とスープで調理している。

 普段はお店屋さんでラーメンを食べられない事も有るが、稀子がラーメンをリクエストしたからだ。
 フードコートと言っても、最近はステーキ屋さんも入っているから油断は出来ない!

 ラーメン屋さんでお腹を満たした後は、映画鑑賞で有る。
 どんな映画を見るかはまだ、稀子には聞いてないが、稀子の性格からしてアクション映画かなと思って、3人で映画館の方に足を向けた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...