偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第284話 親友同士で行くキャンプ その14

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「……」

「……起きてください。比叡さん……」

 鈴音さんの声が、耳元から聞こえてくる。
 やはり、自分の力では起きられなかったか……

 けど、よく考えたら、目覚ましを設定していなかったな!?
 そりゃあ、起きられる訳が無いわ!

「んっっ……」

 俺は声を出しながら、ベッドから体を起き上がらせる。
 ベッドの柵向こうには鈴音さんが居た。

「…おはようございます。鈴音さん」
「大分、寝過ごしてしまいましたか?」

 俺はそう言うが、鈴音さんは和やかな表情で答える。

「おはようございます。比叡さん!」

「いえ!」
「今の時刻は4時35分ですわ!!」

「……5分の寝坊なら良いか…」
「稀子はもう起きている?」

 本来なら稀子が起こす筈だが、鈴音さんが起こしてくれた。
 俺は、稀子も同じように寝過ごしたと思っていたが……

「はい!」
「稀子さんは既に起きていて、外に空気を吸いに行っています!」

「早朝から、アクティブな奴だな……」

 俺がそう言うと……鈴音さんは少し心配した口調で言う。

「稀子さん……少し頭が痛いそうです」
「『気分転換も兼ねて、外の空気を吸いに行く……』と言って、出て行きました」

「稀子の奴…。二日酔いに成ったか。結構飲んでいたもんな彼奴」
「……鈴音さんは大丈夫ですか?」

 稀子が二日酔いに成る位だ。
 鈴音さんの二日酔いの心配をして、俺は聞いてみる。

「私ですか!?」
「う~ん。少し頭が重い気はしますが、二日酔いと言う程では無いです」

「大分昨日酔っていたから、少し心配していたが、大丈夫なら良かった!」

「比叡さんはどうです?」

「俺?」
「俺は……普段と変わりが無い様な」

「じゃあ、二日酔いに成ったのは稀子さんだけですね…」
「稀子さんが『5時には出発』と言ってましたので、それまでに準備をお願いします!」

 鈴音さんはそう言って、俺の側から離れていった。
 準備と言っても顔を洗って、着替える程度だと思うが。

 ……

 朝の5時。
 稀子もバンガローに戻ってきて、今からご来光を拝みに行く。
 手荷物は特に無いが、ペットボトルの飲料水だけは持って行く。

「稀子!」
「調子はどうだ? 鈴音さんから聞いたぞ」

「お陰様で比叡君!」
「山の新鮮空気を深呼吸していたら、頭の痛いのも何処か飛んでいったよ~~♪」

 二日酔いの素振りを全く見せずに言う稀子!?
 稀子が凄いのか、山の力が凄いのか!?

「さぁ、元気も戻って来たし。りんちゃん、比叡君。出発だ~~」

「……」

「……」

 俺と鈴音さんは顔を見合わせながら、稀子先導で出発する。
 稀子は何時の間にか懐中電灯を用意していた。
 薄明るくは成って来ているが、無いより有った方が良い。

 当然、稀子は事前に場所の案内はしていない。
 今日の日の出は、5時半付近と言っていたから、そんなに遠い場所では無いのだろう。
 早朝から、本格登山をさせられても俺と鈴音さんが困るが……

 キャンプ場の整備された道から、獣道に近い遊歩道に入る。
 この道の何処かに、ご来光を拝めるスポットが有るのだろう。
 今朝の天気は少し朝霧が掛かっているが、曇っている訳では無く、ご来光は見られそうな感じで有った。

「稀子…。どれ位で着くのだ?」

「後、数分だよ!」
「山頂を目指す訳では無いから♪」

 稀子は元気よく答える。
 鈴音さんも農業で鍛えられたのか、軽い足取りで有った。

「新鮮な感じがしますね♪」
「キャンプ場よりも、森林の香りが強い感じがします!」

「そりゃあ、森の中だからね。鈴ちゃん♪」

 確かに遊歩道に入ってから、森林の香りが強くなった感じがする。
 心地よい匂いでは無く、ちょっと強めに来る香りと言えば良いのだろうか?

「こうやって、早朝の遊歩道を歩いていると、童話世界の気分ですわ♪」
「可愛い妖精さんも出て来ますかね♪」

 嬉しそうに言う鈴音さん。
 今の鈴音さんは、童話の主人公の気分だろうか?

 普段は大人びている鈴音さんだが、この様な一面も有る。
 本当に愛しい鈴音さんだ!!
 俺達は会話を楽しみながら、稀子先導で遊歩道を歩いた。
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