偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第257話 就農から結婚式までの行方 その12

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「それで、りんちゃん、比叡君は何を食べたの?」

「私はオムライスを食べましたが、……私が作ったオムライスの方が美味しいと感じました…」

 鈴音さんは稀子に、申し訳なさそうに言う。

「……お店の味より、鈴ちゃんの方が美味しい!?」
「それは……本当!!」

 稀子は目を見開いて言う!

「稀子…。鈴音さんの言う通りだ。俺もオムライスを一口食べた」
「味は鈴音さんの言う通りだが、肉体労働者には好む味だ!」

「喫茶店のオムライスは労働者向けの味…!」
「比叡君。農作業の後には良いかもね♪」

 鈴音さんは否定的な発言をしたのに、それを前向きに受け止める稀子。

「その値段がせめて、1コインだったらな…。観光地向け料金の食事を、俺達は頻繁には取れないよ」

「まぁ、その話は置いて置いて!」
「でっ、比叡君は何食べたの♪」

「……俺はカレーライスだよ。地元野菜が付いた」
「味は喫茶店のカレーだ。地元野菜を使っているはずだが、ジャガイモ・タマネギ・ニンジンで、地元特有の味なんて出にくいから、値段の割には合わないカレーだ!」

「比叡君は辛口評価だね~~」
「あはは。これは……期待出来ないかな…?」

 稀子は困った笑いをする。
 こんな料理ではリピーターが生まれる筈が無い。

「なぁ、稀子…」
「この料理と言うか、メニューは外郭団体が決めたのだろ?」

「うん! そうだよ!!」
「商工会や農協。市役所担当部門の人とか来て、メニュー決めたらしいよ」

「じゃあ、稀子が試食をして無くても、その人達が試食しているのだよね?」

「あぁ……しているのでは無い?」
「そうしないと、味の評価が出来ないからね!」

 稀子は本当に担当外のようだ。
 稀子が勤めている外郭団体は、市にとっては必要かも知れないけど、俺達市民目線では、本当に必要なのかの団体で有る……

「じゃあ最悪、喫茶店が閉店しても、稀子が責任を負う事は無いのだな?」

「えっ!?」
「負わないけど……何で、態々そんな事聞くの??」

 稀子は驚きながら返事をした。
 喫茶店の命名は、稀子が絡んでいるのだろ?

「楓花って名前…。稀子が提案したのでは無いのか?」

「楓花……。あぁ、喫茶店の名前だね!」

「比叡君!」
「新規職員の私に、そんな大きな仕事与えてくれると思う?♪」

「……何だ違うのか」

「……///」

 稀子がそう言った時、鈴音さんは“ばつ”の悪そうな顔をした。
 鈴音さんの早とちりだった……

 喫茶店が最悪潰れても、稀子が責任を負わなくて良い事に俺は安心した。

 ……

 稀子としばらく雑談をした後、稀子は家に戻って行った。
 稀子を見送った後、俺は鈴音さんに話し掛ける。

「良かったですね、鈴音さん」
「稀子に責任が行く事が無くて!」

「はい…!」
「あの時、確認を取れば良かったですね!!」

 稀子の話によると喫茶店の命名は、市役所の担当部門達が決めたそうだ。
 市や外郭団体一般職員からに依る、応募や投票は一切無かったそうだ。
 稀子が俺に耳打ちをした時に教えなかったのは、守秘義務に接触する可能性が有ったから教えなかったと言った。

 地区交流センターの空き部屋で動きが有るのは、稀子が耳打ちする前から気付いていた。
 市役所の車両等が、夏頃から頻繁に来る様に成っていたからだ。
 地元の人間なら直ぐに気付く。
 そして、興味を持った人間は必ず聞きに行く。

 店の詳細等も、断片的だが次第に分かる様に成ってくる。
 決定的な出所では無く、噂話程度で有ったが、稀子の耳打ちでそれが全て繋がる。
 稀子が店の名前を言わなかったのは、出所を知られるのを恐れたからだ。

「比叡さん。稀子さんのマイナスに成らないのは安心しましたが、仮に喫茶店の運用が行き詰まったら……問題に成りそうですね」

「間違い無しに成るだろうな…。あの味では他に店が無くても、味を知った人は再度食べたいとは思わない」

「今の時代は何でも民営化だ。地区交流センターも、最悪運営が変わるかもな…」
「運営は変わらなくても、喫茶店担当責任者が詰め腹を切られるのは避けきれないだろう…」
「本当。稀子で無くて良かったよ!」

「はい…。稀子さんで無くて良かったです!」

 地区交流センターにオープンした『軽食・喫茶 楓花』
 この味と値段では1年は持たないだろうと、俺と鈴音さんは感じていた。
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