偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第256話 就農から結婚式までの行方 その11

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 別に業務品が悪い訳で無い。この様な喫茶店では良く有る話だ。
 此処の場合…、喫茶店がメインでは無く施設がメインで有る。
 厨房も広いとは言えないだろうし、使い勝手も悪いだろう……

 自慢話では無いが、鈴音さんがコーヒーをドリップして出してくれる時が有る。
 主に鈴音さんがリラックスしたい時にドリップコーヒーが出る。
 ドリップコーヒーは香りも良いし、味も美味しく感じる。

 しかし、俺は其処までコーヒーの味が理解出来ないので、普段はインスタントコーヒーで十分で有る。

 でも、ここは地域を盛り上げる店だ!
 ショッピングセンター、フードコートドリンク相応商品を、ぼったくり値段で出しては不味いだろう!!
 これでは俺達の住んでいる地区は、守銭奴地区にめでたく認定される!?

 俺はそう思いながら飲んでいると、鈴音さんも諦め表情で飲んでいた。
 舌の肥えている鈴音さんは気付いているのだろう…。思いっきり業務用で有る事を!!

 店内はやはりプレオープンでも初日だから、俺達が食事を終える頃には満席に成っていて、順番待ちも発生していた。
 けど、スタッフは4人位しか見当たらず、これで大丈夫かと感じた。
 この状況(満員御礼)が何日続くのだろうと思いながら、喫茶店を俺達2人は出た……

「残念ながら……もう、楓花ふうかに来る事は無さそうですね」

 鈴音さんは残念そうに呟いた。

「地元食材を使って、この味では……俺としても空しさが込み上げてくるよ!」
「鈴音さん…。家に戻りましょうか」

「はい…」

 俺と鈴音さんは、何とも言えない表情で家に戻った……

 その日の晩……

 俺と鈴音さんは、稀子に苦情を言うつもりでは無いが、昼食時に食べた喫茶店の感想を言うため、稀子の仕事終わりに俺達の家に寄って貰う。
 その連絡に関しては、鈴音さんが行った。

 19時少し手前……稀子は家にやって来た。

「こんばんは~~。りんちゃん、比叡君!」

 稀子は元気よく玄関から声を掛けた。
 俺と鈴音さんが出迎えて、稀子を居間に通す。

「初日から喫茶店に行ってくれて、ありがとう~~♪」

 クッションに座ると同時に、お礼の言葉を言う稀子。

「ちょっと、気に成っていたからな…。ねぇ、鈴音さん」

「……はい!」

「それで……どうだった。お味は?」

 稀子は味の感想を求めてきたが……稀子達は、喫茶店の試食をして居ないのだろうか?
 運営責任者は外郭団体に当たるのだから、試食会位は行われるべきなのに??

「俺達が感想を言う前に、稀子は食べてないのか…?」
「『軽食・喫茶 楓花』の味を……」

「うん! まだ食べてない!!」
「プレオープンから本当のオープンまで5日間有るし、その間に食べ行く♪」

 稀子は笑顔で言う。
 本当に試食会をやっていないのか?

「なぁ……稀子」
「楓花は、外郭団体が運営しているのだろ?」

「そうだよ!」
「喫茶店の設備類は市の備品に成って、喫茶店運営は外郭団体だけど、業務は他所がやっている」

「運営は外郭団体で、やはり業務は他所か…」
「それって、何年間契約なの?」

「その辺は私に聞かれても知らないよ!」
「私も話を聞いただけだし、私はそもそも担当でも無いし……」

(稀子は実質、販売担当だからな)
(けど、あんな味でどれだけ営業するかは分からんが、直ぐに客なんて来なくなるぞ…)

 この地区は標高が高い所に有るため、雪の時期に成ると、市街地では数センチの降雪でも、この地区になると数倍の降雪に成る。
 そして、大寒波が来ると一時的だが根雪に成り、そう成ってしまうと地元民でも身動きが取りにくくなる。

 そんな地域であるから『冬は本当に静かな町!』と稀子が言っていた。キャンプ場も冬季は休業する。
 これから冬の時期に入るのに、この喫茶店は利益を出す事が出来るだろうか?

 喫茶店の経営者も、やる気の有る料理を作って居る気がしないから、無理矢理引受けさせられたのだろう……
 また、見たくない闇を一つ見てしまった!
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