偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
256 / 434
【R-15】鈴音編 第2章

第254話 就農から結婚式までの行方 その9

しおりを挟む
「店内の造りは『観光に来た!』と言う、感じがするお店ですね!」
おもむきが有りますわ♪」

 鈴音さんは店内を見渡しながら言う。
 地区交流センター自体がログハウスを意識した作りに成っているから、喫茶店の方もそれを意識した内装なのだろう。
 ちなみに、売店(直売所)の方は一般的な内装で有る。

 プレオープンとは言え、開店初日なのに座席は満席では無く、6割位しか席は埋まってなかった。
 営業時間も11時から16時までと5時間で有り、これでやっていけるのかと思った。
 この店はやはり、水とかもセルフサービスだ。
 店の奥側……偶々座った俺の目先に、給水機や使い捨てのおしぼりが見える。

「鈴音さん!」
「水とおしぼりを取ってきます」

 俺は席を立って、水とおしぼりを取り行って戻る。
 お互いが水を飲んで、おしぼりで手を拭く。

「比叡さん。お味はどうでしょうかね?」

 鈴音さんは和やかな表情で聞いてきた。

「オムライスとカレーライスですからね…!」
「地元の卵や野菜を使ったとは言え、頬が落ちる事は無いでしょうね…」

「う~ん。比叡さんはそう考えますか!」

 嬉しそうに言う鈴音さん。
 料理に期待している証拠だ。

「では、鈴音さんはどの様に期待しています?」

「まぁ、カレーライス関しましては色々なカレーが有りますので、コメントを控えます!」
「学校給食カレーを好む人や、サラリとしたカレー、ドロリとしたカレーを好む人と、カレーは奥深すぎます!!」

「うん。そうだね!」
「カレーは、どんなタイプでも食べるけど、やっぱり鈴音さんカレーが一番だしね!」

「ひっ、比叡さん///」
「ここで、そんな事言わないでください//////」
「恥ずかしいです//////」

「でも、今の鈴音さんの言葉で、鈴音さんの期待するオムライスが見えたよ!」

「じゃあ、私の期待するオムライスを教えてください♪」
「比叡さん!♪」

 鈴音さんは笑顔で言う。
 時々だが、鈴音さんもオムライスを作る。

「言うまでも無く、タマネギやニンジンの入ったチキンライスに、バターをたっぷり使った薄焼き卵でチキンライスを包んで、出来ればオリジナルのトマトケチャップをかけた、オムライスを期待しているのかと!」

「うん、うん。比叡さんの言う通りです!!」
「オムライスも色々な派生が有りますが、オーソドックスなオムライスが私は一番好きです♪」

 嬉しそうに言う鈴音さん!
 これで期待通りの物が出て味も良ければ、これから通う事に成るかも知れない。
 話の一段落が付いた所で丁度、俺達の番号札が呼ばれる。

「3番の方。お待ちどおさまでした!」

 先ほどのスタッフが、そう声を掛けた。
 俺と鈴音さんは出来上がった料理を取りに行き、席に座ってから料理を観察する。

「カレーライスはジャガイモ・タマネギ・ニンジン……肉は豚肉か…」
「サラダはキャベツ・キュウリ・トマトのサラダに、フレンチドレッシングがかかっている」

 地元野菜カレーライスと謳っているだけ有って、手作り感は有るカレーで有る。
 これで、業務用などのレトルトカレーだったら、優良誤認表示に該当するだろう……

「……」

 鈴音さんは、無言でオムライスを見つめていた。
 その訳は、直ぐに気付いた……

(これを、オムライスと言うべきか……)

 鈴音さんはオーソドックスのオムライスを求めていた。
 このオムライスも、ケチャップベースのチキンライスに薄焼き卵が乗せられていて、トマトケチャップもかけられているが……

「……包まれていませんね!」

 鈴音さんが、静かに文句を言う。
 そう、このオムライスは、楕円形の形が作られていないのだ!

「これは、私の中ではマイナスですよ!!」
「点数で言ったら、-100点です!!」

 珍しくケチを付けている鈴音さん!
 鈴音さんがオムライスを作る時、薄焼き卵が途中で破けてもオムライスの形を作るからだ。

(そう言えば、何かの番組で……オムライスの成形を、濡れ布巾を使って成形している店が有ったな!)
(専用布巾だと思うが、あれを見た時は衝撃的だった!)

 その技を使えば俺でも出来るだろうが、それで良いのかと同時に思った。

(この店の場合は、上手に包む事が出来ないと判断したから、チキンライスの上に薄焼き卵を乗せているが、これを『オムライスです!』とは言い切りにくいな…)

 見栄えは大事で有るし、それを邪道や手抜きをしては成らない。素人料理人なら別だが……
 布巾成形は王道では無いし、形作られてないオムライスなど、オムライスでは無い!
 只の、チキンライス薄焼き卵乗せで有る。

 鈴音さんは期待外れの表情に変わっていた……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...