偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第252話 就農から結婚式までの行方 その7

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 ある日の夜……

 俺は今月号の市広報誌を読んでいる。
 読む時間が無かったので、月の中途半端な時期に読んでいる。
 広報誌を読む人がどれだけ居るかは分からないが、俺は広報誌を読むのが好きで有る。
 市の状勢や、お知らせごとを誌面で確認出来る。

 市広報誌には稀子が以前言っていた通り、俺の家近くに有る、地区交流センターに飲食店がオープンする記事が掲載されており、その記事が書かれている。
 飲食店の名称は『軽食・喫茶 楓花ふうか』と書かれていた。
 この地域に相応しい名前で有ると俺は感じた。少し古風な感じもするが……

 その記事を読む限りで見た、紹介メニューは地元産蕎麦や地元野菜カレーライス。地元鶏卵を使った玉子サンドやオムライス、品数も少なく軽食メニューで有った。
 稀子の言う通り、来月中旬のオープン予定と書いて有った。
 その記事を見て、俺は鈴音さんに声を掛ける。

「鈴音さん!」
「この前、稀子が言っていた事が広報に載っていますよ!!」

「あぁ、例のお食事屋さんですか!」

「はい!」
「その、お食事屋の名前が『楓花ふうか』と言うそうです」

 俺はそう言いながら、広報誌を鈴音さんに見せる。

「楓花…。ふうか……ふうか!」

 鈴音さんは『ふうか、ふうか』と、呪文の様に呟き始めた!
 楓花で、鈴音さんは何かを思い出したのか!?

「確か……稀子さんの母親は、かえでさんでしたよね……」

 鈴音さんは謎の独り言を言いながら、急にスマートフォンの操作をし始める!?

「やっぱりです!」
「私の想った通りです!!」

 鈴音さんは1人で、納得した表情で言う。
 何を納得したのだ??

「比叡さん!」
「以前、稀子さんが比叡さんに耳打ちをした時は、お店の名前は教えませんでしたよね?」

「うん…」
「名前は広報でと、稀子に言われたからな」

「……比叡さん。気付かないのですか?」

 鈴音さんは不思議そうに聞いてきた!?

「えっ…?」
「楓花の名称で、何か気付く所が有るのですか??」

「楓花の楓……。これですよ!!」

 鈴音さんは広報誌の『楓花』部分を指し示す。

「えっと……何が問題なのですか?」

「はぁ~~」

 すると、急にため息をつく鈴音さん!!
 何で、ため息をつかれる!?

「比叡さん…。稀子さん、お母さんの名前は知っていますか?」

 鈴音さんは、小馬鹿にした態度で言う!

「勿論、知っているよ!」
「楓さんだろ!!」

 俺は少し怒りながら答える。
 一体、何がしたいのだ。鈴音さんは!!

「……楓と楓花のふうの漢字が、同じなのに気付きませんか…?」

「えっ!?」
「あぁ、ああ……同じだね…!!」

「んっっ!!」

「……やっと、気付きましたか?」

「もしかして、喫茶店の名称に、楓さんの漢字を入れた!?」
「……でも、偶然ですよね!」

「……本当にそう思いますか。比叡さん」
「稀子さんが比叡さんに耳打ちをした時、勿体ぶって言わなかった事を、疑問に感じませんでした?」

「あれは役所名物の、守秘義務なのかなと思って……」

「守秘義務ですか…」
「あながち間違ってはいませんが、喫茶店の命名に、稀子さんが絡んでいる可能性は高いですね!」

 鈴音さんは断定した様に言う。

「そりゃあ、稀子も地区交流センターの職員だから、命名に関わるだろうけど…、俺が稀子の立場なら逆に恥ずかしいよ//////」
「親の名前を入れた施設名なんて、見掛ける度に顔から火が出るよ……」

「普通の人はそうですが……稀子さんの場合、時々目立ちたがる時も有るのです…」

 鈴音さんは呆れ返りながら言う。

「けど、鈴音さん」
「楓さんは喫茶店で働く予定は無い筈だし、近所の人にも名字で呼ばれている」
「鈴音さんの気にしすぎでは……」

「そうだと、良いのですがね……」

 鈴音さんは最後に大きなため息をついた!
 喫茶店の名称に、稀子母親の漢字を入れた位で、大事に成る訳でも無いのに……
 けど、言い方を変えれば、地区交流センター内で稀子が、力を付け始めている証拠でも有った。
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