偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第250話 就農から結婚式までの行方 その5

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「んっ。私?」
「まぁ、まぁ、かな!」

 稀子は普通に答える。

「稀子は販売がメインなんだろ?」
「やっぱり、変なお客さんとか来るんだろ?」

「変なお客さん…?」
「あ~~、いない事は無いけど、丁寧に説明すれば問題ないよ」
「この地域は人気観光地でも無いし、常識が有るお客さんが多いよ!」

「ふ~ん。なら良いけど!」
「でも、それだと、売り上げも無いでしょ…」

「……まぁ、そうなんだよね!」
「週末は、ツーリングや家族連れで賑わうけど、平日は地元民以外来ないからね」
「売店は、野菜や漬物以外に工芸品も売っているけど、工芸品は平日全く売れないからね!」

「……それでは、普通の八百屋さんだな」

「そう、そう! 地域の八百屋さん!!」
「……まぁ、市の施設だから、売り上げはどうのこうとは言われないけど、やっぱり活気が有る店が良いよね!」

「稀子らしい考えだ!」
「俺も稀子の所にナス、キュウリを置かせて貰っているが、平日は余り売れないからな…」

 収穫したナスやキュウリは、稀子が勤めている地区交流センターや、少し距離が有るが道の駅。俺達が愛用しているスーパーの地元品コーナーに置かせて貰っている。
 本来、新参者がスーパーに入り込みにくいのだが、鈴音さんや稀子の親友がそのスーパーに勤めている伝手で、置かせて貰える様に成った。
 やっぱり、地元の結束力は強い。

 売り上げ順で言うと、スーパー>道の駅>稀子の順で有る。
 これは週末でも変わらない。
 平日だけで言うと、稀子の所は本来なら赤字で有る。
 赤字に成らないのは売れなくても、徒歩で回収出来る圏内なので、燃料代等の経費が掛からないからで有る。

「平日でも、お客さんが来る方法が有れば良いのにね!」

 俺が稀子にそう言うと……稀子は顔をにやつかせて寄って来る。

「……比叡君にだけ、こっそり教えて上げるね!」
「まぁ、来月の広報には掲載される事だけど!!」

 稀子の口振りから、地区交流センターに何かの変化が起きるらしい?

「新しい店でも開くのか?」
「交流センター事務所左側がずっと…、空き部屋だもんな」

 地区交流センターは正面から見て、左側は空き部屋と言うか、以前何かの店が有った場所。真ん中が事務所兼地区交流センター。右側が売店(直売所)で有る。
 表から入口がそれぞれ有るが、地区交流センターと売店は繋がっている。

「おっ! 比叡君。目の付け所が良いね!!」

「…良いも悪いも、たんびたんびに野菜を置きに行けば嫌でも気に成るよ」
「食べ物でも売り始めるのか?」
「この辺りは食事処が無いし、有れば便利だとは思うが……」

 すると、稀子は満面の笑みで言う!

「勘が冴えるね、比叡君!!」
「彼処はね、以前喫茶店が有ったのだけど……言うまでも無いよね///」

「……週末営業だけなら良いけど、平日に客は来ないだろうな…」
「良く、そんな場所に喫茶店をオープンしたよ。過去の観光ブームの影響かな?」
「この道路が主要道路ならまだしも、分断道路だからな……」

「けど、そんな場所で食べ物屋を開いても、厳しいのは変わらないだろ?」

「うん!」
「比叡君の言う通り!!」

「だから、10月中旬オープン予定のお店は、お昼の時間帯だけ営業する地産地消のお食事屋さんだよ! 名前は決まっているけど……それは広報で!!///」
「地元蕎麦粉のみのお蕎麦とか、この地域で採れた野菜、卵を積極的に使った、お食事屋さんオープンさせるの♪」
「後、もちろん、喫茶店の様なドリンクも提供する予定!」

「昼限定のレストランと言うか食事処か…」

(稀子の口から出る言葉だから民間では無く、外郭団体が絡んでいる訳か…?)

 営利を追求したら、こんな辺鄙な場所で飲食店なんか開かない。
 分断道路を繋げる話も聞かないし、新たな観光地が出来る話も無い。

(稀子の言う通り、ランチ限定に成ると、更に利益を出しにくくなる)
(名目上は……地域貢献だろうが、こんな場所でも店を開く旨みが有るのだろうな…。何かの交付金目当てだろうか?)

「……けど、稀子の所は飲食の部門なんて無いだろ?」
「まさか……稀子が、飲食部門に人事異動とか!?」

 俺は驚きの言葉を含ませて言うが、稀子は特に気にせず返事をする。

「んっ…。私はそのままだよ。今の所は!」
「お食事屋さんの運営は、何処かに委託するんでは無いかな?」
「今の人数でお食事屋さんなんて、当然無理だし……」

(出た! 委託!!)

 この国は本当に、上から下が好きで有る。
 稀子が勤めている地区交流センターだって、本来だったら外郭団体を噛ます必要性は無い。
 そうしたら、稀子は純粋な公務員に成る。給与面や待遇面もかなり良くなる筈だ。

 でも、人件費や“ごにょごにょ”の事情が有って、市の直轄運営では無く、外郭団体が委託運営する。
 その地区交流センターに、食事処を開く事は悪い事では無いが、外郭団体が更に下の組織に委託をさせる。

 何時も不思議に思うが、この下請け多重構造はどうにか成らないのか?
 こんな事を稀子に言っても仕方無いし、この国が根本的に変わらない限り、無く成らない事は俺でも知っている。

 近くに食事処が出来るのは確かに嬉しいが、聞きたく無い言葉も聞いてしまった。
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