252 / 434
【R-15】鈴音編 第2章
第250話 就農から結婚式までの行方 その5
しおりを挟む
「んっ。私?」
「まぁ、まぁ、かな!」
稀子は普通に答える。
「稀子は販売がメインなんだろ?」
「やっぱり、変なお客さんとか来るんだろ?」
「変なお客さん…?」
「あ~~、いない事は無いけど、丁寧に説明すれば問題ないよ」
「この地域は人気観光地でも無いし、常識が有るお客さんが多いよ!」
「ふ~ん。なら良いけど!」
「でも、それだと、売り上げも無いでしょ…」
「……まぁ、そうなんだよね!」
「週末は、ツーリングや家族連れで賑わうけど、平日は地元民以外来ないからね」
「売店は、野菜や漬物以外に工芸品も売っているけど、工芸品は平日全く売れないからね!」
「……それでは、普通の八百屋さんだな」
「そう、そう! 地域の八百屋さん!!」
「……まぁ、市の施設だから、売り上げはどうのこうとは言われないけど、やっぱり活気が有る店が良いよね!」
「稀子らしい考えだ!」
「俺も稀子の所にナス、キュウリを置かせて貰っているが、平日は余り売れないからな…」
収穫したナスやキュウリは、稀子が勤めている地区交流センターや、少し距離が有るが道の駅。俺達が愛用しているスーパーの地元品コーナーに置かせて貰っている。
本来、新参者がスーパーに入り込みにくいのだが、鈴音さんや稀子の親友がそのスーパーに勤めている伝手で、置かせて貰える様に成った。
やっぱり、地元の結束力は強い。
売り上げ順で言うと、スーパー>道の駅>稀子の順で有る。
これは週末でも変わらない。
平日だけで言うと、稀子の所は本来なら赤字で有る。
赤字に成らないのは売れなくても、徒歩で回収出来る圏内なので、燃料代等の経費が掛からないからで有る。
「平日でも、お客さんが来る方法が有れば良いのにね!」
俺が稀子にそう言うと……稀子は顔をにやつかせて寄って来る。
「……比叡君にだけ、こっそり教えて上げるね!」
「まぁ、来月の広報には掲載される事だけど!!」
稀子の口振りから、地区交流センターに何かの変化が起きるらしい?
「新しい店でも開くのか?」
「交流センター事務所左側がずっと…、空き部屋だもんな」
地区交流センターは正面から見て、左側は空き部屋と言うか、以前何かの店が有った場所。真ん中が事務所兼地区交流センター。右側が売店(直売所)で有る。
表から入口がそれぞれ有るが、地区交流センターと売店は繋がっている。
「おっ! 比叡君。目の付け所が良いね!!」
「…良いも悪いも、たんびたんびに野菜を置きに行けば嫌でも気に成るよ」
「食べ物でも売り始めるのか?」
「この辺りは食事処が無いし、有れば便利だとは思うが……」
すると、稀子は満面の笑みで言う!
「勘が冴えるね、比叡君!!」
「彼処はね、以前喫茶店が有ったのだけど……言うまでも無いよね///」
「……週末営業だけなら良いけど、平日に客は来ないだろうな…」
「良く、そんな場所に喫茶店をオープンしたよ。過去の観光ブームの影響かな?」
「この道路が主要道路ならまだしも、分断道路だからな……」
「けど、そんな場所で食べ物屋を開いても、厳しいのは変わらないだろ?」
「うん!」
「比叡君の言う通り!!」
「だから、10月中旬オープン予定のお店は、お昼の時間帯だけ営業する地産地消のお食事屋さんだよ! 名前は決まっているけど……それは広報で!!///」
「地元蕎麦粉のみのお蕎麦とか、この地域で採れた野菜、卵を積極的に使った、お食事屋さんオープンさせるの♪」
「後、もちろん、喫茶店の様なドリンクも提供する予定!」
「昼限定のレストランと言うか食事処か…」
(稀子の口から出る言葉だから民間では無く、外郭団体が絡んでいる訳か…?)
営利を追求したら、こんな辺鄙な場所で飲食店なんか開かない。
分断道路を繋げる話も聞かないし、新たな観光地が出来る話も無い。
(稀子の言う通り、ランチ限定に成ると、更に利益を出しにくくなる)
(名目上は……地域貢献だろうが、こんな場所でも店を開く旨みが有るのだろうな…。何かの交付金目当てだろうか?)
「……けど、稀子の所は飲食の部門なんて無いだろ?」
「まさか……稀子が、飲食部門に人事異動とか!?」
俺は驚きの言葉を含ませて言うが、稀子は特に気にせず返事をする。
「んっ…。私はそのままだよ。今の所は!」
「お食事屋さんの運営は、何処かに委託するんでは無いかな?」
「今の人数でお食事屋さんなんて、当然無理だし……」
(出た! 委託!!)
この国は本当に、上から下が好きで有る。
稀子が勤めている地区交流センターだって、本来だったら外郭団体を噛ます必要性は無い。
そうしたら、稀子は純粋な公務員に成る。給与面や待遇面もかなり良くなる筈だ。
でも、人件費や“ごにょごにょ”の事情が有って、市の直轄運営では無く、外郭団体が委託運営する。
その地区交流センターに、食事処を開く事は悪い事では無いが、外郭団体が更に下の組織に委託をさせる。
何時も不思議に思うが、この下請け多重構造はどうにか成らないのか?
こんな事を稀子に言っても仕方無いし、この国が根本的に変わらない限り、無く成らない事は俺でも知っている。
近くに食事処が出来るのは確かに嬉しいが、聞きたく無い言葉も聞いてしまった。
「まぁ、まぁ、かな!」
稀子は普通に答える。
「稀子は販売がメインなんだろ?」
「やっぱり、変なお客さんとか来るんだろ?」
「変なお客さん…?」
「あ~~、いない事は無いけど、丁寧に説明すれば問題ないよ」
「この地域は人気観光地でも無いし、常識が有るお客さんが多いよ!」
「ふ~ん。なら良いけど!」
「でも、それだと、売り上げも無いでしょ…」
「……まぁ、そうなんだよね!」
「週末は、ツーリングや家族連れで賑わうけど、平日は地元民以外来ないからね」
「売店は、野菜や漬物以外に工芸品も売っているけど、工芸品は平日全く売れないからね!」
「……それでは、普通の八百屋さんだな」
「そう、そう! 地域の八百屋さん!!」
「……まぁ、市の施設だから、売り上げはどうのこうとは言われないけど、やっぱり活気が有る店が良いよね!」
「稀子らしい考えだ!」
「俺も稀子の所にナス、キュウリを置かせて貰っているが、平日は余り売れないからな…」
収穫したナスやキュウリは、稀子が勤めている地区交流センターや、少し距離が有るが道の駅。俺達が愛用しているスーパーの地元品コーナーに置かせて貰っている。
本来、新参者がスーパーに入り込みにくいのだが、鈴音さんや稀子の親友がそのスーパーに勤めている伝手で、置かせて貰える様に成った。
やっぱり、地元の結束力は強い。
売り上げ順で言うと、スーパー>道の駅>稀子の順で有る。
これは週末でも変わらない。
平日だけで言うと、稀子の所は本来なら赤字で有る。
赤字に成らないのは売れなくても、徒歩で回収出来る圏内なので、燃料代等の経費が掛からないからで有る。
「平日でも、お客さんが来る方法が有れば良いのにね!」
俺が稀子にそう言うと……稀子は顔をにやつかせて寄って来る。
「……比叡君にだけ、こっそり教えて上げるね!」
「まぁ、来月の広報には掲載される事だけど!!」
稀子の口振りから、地区交流センターに何かの変化が起きるらしい?
「新しい店でも開くのか?」
「交流センター事務所左側がずっと…、空き部屋だもんな」
地区交流センターは正面から見て、左側は空き部屋と言うか、以前何かの店が有った場所。真ん中が事務所兼地区交流センター。右側が売店(直売所)で有る。
表から入口がそれぞれ有るが、地区交流センターと売店は繋がっている。
「おっ! 比叡君。目の付け所が良いね!!」
「…良いも悪いも、たんびたんびに野菜を置きに行けば嫌でも気に成るよ」
「食べ物でも売り始めるのか?」
「この辺りは食事処が無いし、有れば便利だとは思うが……」
すると、稀子は満面の笑みで言う!
「勘が冴えるね、比叡君!!」
「彼処はね、以前喫茶店が有ったのだけど……言うまでも無いよね///」
「……週末営業だけなら良いけど、平日に客は来ないだろうな…」
「良く、そんな場所に喫茶店をオープンしたよ。過去の観光ブームの影響かな?」
「この道路が主要道路ならまだしも、分断道路だからな……」
「けど、そんな場所で食べ物屋を開いても、厳しいのは変わらないだろ?」
「うん!」
「比叡君の言う通り!!」
「だから、10月中旬オープン予定のお店は、お昼の時間帯だけ営業する地産地消のお食事屋さんだよ! 名前は決まっているけど……それは広報で!!///」
「地元蕎麦粉のみのお蕎麦とか、この地域で採れた野菜、卵を積極的に使った、お食事屋さんオープンさせるの♪」
「後、もちろん、喫茶店の様なドリンクも提供する予定!」
「昼限定のレストランと言うか食事処か…」
(稀子の口から出る言葉だから民間では無く、外郭団体が絡んでいる訳か…?)
営利を追求したら、こんな辺鄙な場所で飲食店なんか開かない。
分断道路を繋げる話も聞かないし、新たな観光地が出来る話も無い。
(稀子の言う通り、ランチ限定に成ると、更に利益を出しにくくなる)
(名目上は……地域貢献だろうが、こんな場所でも店を開く旨みが有るのだろうな…。何かの交付金目当てだろうか?)
「……けど、稀子の所は飲食の部門なんて無いだろ?」
「まさか……稀子が、飲食部門に人事異動とか!?」
俺は驚きの言葉を含ませて言うが、稀子は特に気にせず返事をする。
「んっ…。私はそのままだよ。今の所は!」
「お食事屋さんの運営は、何処かに委託するんでは無いかな?」
「今の人数でお食事屋さんなんて、当然無理だし……」
(出た! 委託!!)
この国は本当に、上から下が好きで有る。
稀子が勤めている地区交流センターだって、本来だったら外郭団体を噛ます必要性は無い。
そうしたら、稀子は純粋な公務員に成る。給与面や待遇面もかなり良くなる筈だ。
でも、人件費や“ごにょごにょ”の事情が有って、市の直轄運営では無く、外郭団体が委託運営する。
その地区交流センターに、食事処を開く事は悪い事では無いが、外郭団体が更に下の組織に委託をさせる。
何時も不思議に思うが、この下請け多重構造はどうにか成らないのか?
こんな事を稀子に言っても仕方無いし、この国が根本的に変わらない限り、無く成らない事は俺でも知っている。
近くに食事処が出来るのは確かに嬉しいが、聞きたく無い言葉も聞いてしまった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる