偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第226話 夢が実現する時…… その3

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「おぉ! 真理江さん!!」
「まだ、居たか!!」

「もう、あの子達は出たかと思っていたよ!!」

 妹夫婦の男性が、真理江さんに運転席から話し掛ける。
 助手席には真理江さんの妹も同乗している。

「えぇ!」
「でも……そろそろ出発の時間です。寂しいですど…」

「真理江さん、兄ちゃんや嬢ちゃん達!」
「最後に言っちゃあ何だが、駅まで送って行くよ!」
「兄ちゃん達の、此処からのバス代も馬鹿に成らないからな!!」

 男性は陽気な声で、真理江さんや俺達に向けて言う。
 妹夫婦が、真理江さんに気を利かしたのだろう。
 妹夫婦が車で、俺達を駅まで送ってくれれば、それだけ別れの時間が伸びるからだ。

「青柳さん…」
「妹夫婦が駅まで送ってくれるそうですか、どうしますか…?」

 真理江さんは俺に意見を求めてくるが、断れる訳が無い!

「はい。では、ご厚意に甘えて……」

 ……

 バスでの移動から、真理江さん妹夫婦の車で駅まで送って貰い……更に妹夫婦と真理江さんは、駅の入場券を買ってホームまで見送りに来てくれる!
 その時間までの間……鈴音さんは本当に、別れを惜しむ様に真理江さんに話し掛けていた。
 後、約10分前後で電車が来る…。俺達が九尾に居られる時間でも有った。

「兄ちゃん!」

 妹夫婦の男性に、急に声を掛けられる。何だろう……

「はい…?」

 すると……男性は、祝儀の袋を俺に手渡してきた!?

「俺は要らんと言ったのだが、母ちゃんが渡せと言うからな!」
「これから親戚関係に成るのだし『道筋だけは付けろ』と言うからさ!!」

(相変わらず、余計な一言が多いな…)

 これを断る訳にも行かないから、素直に祝儀を受け取る。

「すいません…。有り難く頂きます」

「……まさか兄ちゃんが、美作の鈴音ちゃんと、農業をやるとは夢にも思ってなかったよ!」
嬢ちゃんめるこのお膝元で、営農するらしいから問題は無いだろうか、しっかりやれよ!!」

 男性はそう言いながら、俺の肩を『ポン』と叩く。

「はい!」
「有り難う御座います」

「でっ……籍は何時入れるのだ。兄ちゃん!!」

「籍ですか…。籍については……落ち着いてからですね」
「本当の夫婦生活を始めてからの方が、お互い良いかと……」

「でも、兄ちゃん。暢気に考えて居るが助成金の問題も有るだろ!」
「役所はその辺が五月蠅いから、夫婦で貰う(申請)なら落ち着いて何て居られ無いぞ!!」
「向こうで直ぐに就農なんだろ!? 兄ちゃん、単体なら良いが……」

「それも、そうですね……。大体の申請書類は完成・申請していますけど、最終確認を取ってみます」

「そうした方が良いぞ! 役所は四角四面だからな!!」

「後……式を挙げる時は、俺達も呼べよ。向こうで挙げようが、真理江さんや俺達は絶対出るから!!」」
「縁故だろうが、親戚には変わらないからな、がははは!!」

 今度は、強く肩を叩きながら男性は言う。痛いのですけど……
 悪い人では無いが、やはりこの人は苦手だ……

(入籍や結婚式…。普通は結婚式を挙げてから入籍だと思うが、俺と鈴音さんの場合は逆に成りそうだな)
(住民票を異動させてから、籍の事も鈴音さんと話し合おう…)

(そうすると……いよいよ、俺の両親に連絡を入れないと行けないな)
(入籍や結婚式は人生の一大イベントだ……これを機会に親に全て報告するか…)

(だが、絶対に文句を言われるだけでは済まないな…)
(いきなり就農・結婚と報告したら、普通の両親なら絶句するだろう!)

 妹夫婦男性の言葉で、俺は両親の事を改めて考える。
 男性は、それ以上の言葉を掛ける事無く、俺の元から離れて行った。

 ……

 遂に、この町との別れの時が来た。
 電車がホームに入ってくる。
 俺が代表と成って、最後の言葉を述べる。

「真理江さん。妹夫婦さん」
「今まで、本当にお世話に成りました!!」
「鈴音さんと力を合わせて、稀子の町で頑張っていきます!!」

「青柳さん!」
「鈴音さんと幸せに成ってください!!」
「稀子さんも、お仕事頑張ってください!!」

「兄ちゃん、鈴音ちゃん!!」
「頑張れよ!!」

「嬢ちゃんも、元気でな!!」

 俺の言葉の後、真理江さん、妹夫婦男性が声を掛ける。

「みなさんには、本当にお世話に成りました…」
「本当に感謝しきれません……」

 鈴音さんは涙を滲ませながら言う。

「おばさん、妹夫婦のおじさん!」
「ありがとう~~」

 ……稀子は、何時も通りで有った。
 言葉が終えたタイミングで、停車した電車の扉が開く。
 俺と稀子は普通に乗り込むが、鈴音さんはゆっくりと乗り込んだ。

『ピィ~~~♪』

「みなさん~~、お元気で~~~」

 真理江さんの言葉と発車の合図が同時に響く。

「お母様! また、会いましょう~~~」

 鈴音さんは泣きながら言う。
 本当の親子の……別れの様だった。

 無情にも電車の扉は閉まり、電車がゆっくりと動き出す……
 長い九尾での生活も、本当の終わりを迎えた……
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