222 / 434
【R-15】鈴音編 第2章
第220話 稀子の提案 その1
しおりを挟む
……
季節も秋の時期に入り、実りの季節を迎える。
水田の稲穂も黄金色に成っており、これから収穫時に入るので、俺の仕事先も日曜日以外の休みは無く成るし、その日曜日も最悪、出勤に成る恐れも有る。
美味しい物が沢山食べられる時期でも有るが、農家さんやそれに携わる人達も、忙しい時期を向かえる。
有る土曜日の週末。
土曜日でも出勤で有る俺は帰宅後、クタクタに成った体を夕食時にビールで癒やして、明日は日曜日で休日だが……疲れも溜まっていたので、後片付けを手伝った後、早々と自室に戻ろうとした時……
「比叡君…。少し、お話良いかな?」
稀子が声を掛けてきた。今日の食事当番は稀子で有った。
俺が農業法人で働き出してからは食事当番が免除されたが、後片付け等は手伝う。
改まって言うのだから、俺に何かの相談事か?
「良いけど…。何……?」
俺は稀子の話を聞こうとするが……
「此処では、お話しにくいから比叡君の部屋で良い?」
「話しにくい事?」
「鈴音さんと喧嘩でもしたか?」
「えっ!?」
「……うん、まぁそう」
鈴音さんは真理江さんと居間に戻っている。
今晩は少し肌寒いの夜なので、居間の戸は閉まっている。
この状態なら、俺の部屋に稀子と向かっても気付かれないだろう。
(鈴音さん絡みなら断る訳にもいかんし、稀子とこうやって話をするのも久し振りだな)
鈴音さんとの関係は微妙だが、恋人関係は解消していない。
そんな時に、稀子と仲良く話をしている場面を鈴音さんに見られたら、鈴音さんは俺に別れを告げるだろう……
俺はこんな状態だが、鈴音さんの事は大好きだ!
世の中、星の数ほど女性がいると良く言うが、鈴音さんと別れてしまったら今後、鈴音さんの様な人と関係が出来る事は無いだろう……
そのため、俺は稀子との関係を極力発展させない様にしていた。
「……しょうが無いな」
「なら、俺の部屋に行くか…」
「うん…。ごめんね……」
稀子は申し訳なさそうに言う。
(けど、鈴音さんと喧嘩をしている雰囲気なんて、感じなかったがな?)
俺はそう考えながら、稀子を俺の部屋に入れる。
押し入れからクッションを準備して、そこに稀子が座る。
「それで、喧嘩の原因は何だ?」
「晩ご飯にそんな感じは、しなかったのだが…」
稀子が座った直後に、俺は話し掛ける。
「えっ!? 喧嘩!」
少し驚いた表情をする稀子。
「鈴音さんと喧嘩をしたのだろ…?」
「あ~~、あれは“うそ”」
「嘘!?」
(何を考えて居るのだ稀子は!)
(最近、電話で良く話している子に振られたから、俺の所に舞い戻って来たのか!!)
「あれは……比叡君と話す口実」
「鈴ちゃんには聞かれたく無いから、そう言っただけ……」
「……」
(本当に稀子は……何考えて居るのだ)
(鈴音さんと仲が悪くても、恋人関係なのは嫌と言うほど理解しているだろ、稀子)
「じゃあ……比叡君」
「本題を言うよ!」
「鈴音さん絡みでは無い話を……俺が聞いても意味は無いぞ」
「俺と関係を持ちたいとか言いだしたら、流石に怒るからな……」
「そっ、そんな事は言わないよ。比叡君!!」
「そんな事をしたら、鈴ちゃんに絶交されるよ!!」
「えっと、以前の話の事だけど…、比叡君は就農を今でも望んで居るのだよね」
稀子が俺と話したい事は以前話をした、稀子の地区での就農に関する話だった。
(あの話は流れた思っていたが、稀子の中では続いていたのか)
「なんだ…。そっちの話か」
「それに関しては、俺が一人前に成るまでの間は、俺の中で封印して有るんだ」
稀子は其処で話を止めるかと思ったが、話を続ける。
「でね、比叡君…。実はその事を両親に相談してみたんだ。比叡君の気持ちや鈴ちゃんの事を……」
「稀子の両親に俺達の事を相談したのか…」
「態々、俺にそんな事を言うのだから、収穫が有った訳?」
「うん…」
「比叡君にとっては嬉しいニュースに成るけど、鈴ちゃんには辛いニュースに成るかな?」
「まさかだが……俺に農地を貸してくれる、奇特な人が居たのか!?」
稀子が俺と鈴音さんに内緒で、稀子の両親に相談していた事はよろしくは無いが、俺にとっては待望の事で有った……
季節も秋の時期に入り、実りの季節を迎える。
水田の稲穂も黄金色に成っており、これから収穫時に入るので、俺の仕事先も日曜日以外の休みは無く成るし、その日曜日も最悪、出勤に成る恐れも有る。
美味しい物が沢山食べられる時期でも有るが、農家さんやそれに携わる人達も、忙しい時期を向かえる。
有る土曜日の週末。
土曜日でも出勤で有る俺は帰宅後、クタクタに成った体を夕食時にビールで癒やして、明日は日曜日で休日だが……疲れも溜まっていたので、後片付けを手伝った後、早々と自室に戻ろうとした時……
「比叡君…。少し、お話良いかな?」
稀子が声を掛けてきた。今日の食事当番は稀子で有った。
俺が農業法人で働き出してからは食事当番が免除されたが、後片付け等は手伝う。
改まって言うのだから、俺に何かの相談事か?
「良いけど…。何……?」
俺は稀子の話を聞こうとするが……
「此処では、お話しにくいから比叡君の部屋で良い?」
「話しにくい事?」
「鈴音さんと喧嘩でもしたか?」
「えっ!?」
「……うん、まぁそう」
鈴音さんは真理江さんと居間に戻っている。
今晩は少し肌寒いの夜なので、居間の戸は閉まっている。
この状態なら、俺の部屋に稀子と向かっても気付かれないだろう。
(鈴音さん絡みなら断る訳にもいかんし、稀子とこうやって話をするのも久し振りだな)
鈴音さんとの関係は微妙だが、恋人関係は解消していない。
そんな時に、稀子と仲良く話をしている場面を鈴音さんに見られたら、鈴音さんは俺に別れを告げるだろう……
俺はこんな状態だが、鈴音さんの事は大好きだ!
世の中、星の数ほど女性がいると良く言うが、鈴音さんと別れてしまったら今後、鈴音さんの様な人と関係が出来る事は無いだろう……
そのため、俺は稀子との関係を極力発展させない様にしていた。
「……しょうが無いな」
「なら、俺の部屋に行くか…」
「うん…。ごめんね……」
稀子は申し訳なさそうに言う。
(けど、鈴音さんと喧嘩をしている雰囲気なんて、感じなかったがな?)
俺はそう考えながら、稀子を俺の部屋に入れる。
押し入れからクッションを準備して、そこに稀子が座る。
「それで、喧嘩の原因は何だ?」
「晩ご飯にそんな感じは、しなかったのだが…」
稀子が座った直後に、俺は話し掛ける。
「えっ!? 喧嘩!」
少し驚いた表情をする稀子。
「鈴音さんと喧嘩をしたのだろ…?」
「あ~~、あれは“うそ”」
「嘘!?」
(何を考えて居るのだ稀子は!)
(最近、電話で良く話している子に振られたから、俺の所に舞い戻って来たのか!!)
「あれは……比叡君と話す口実」
「鈴ちゃんには聞かれたく無いから、そう言っただけ……」
「……」
(本当に稀子は……何考えて居るのだ)
(鈴音さんと仲が悪くても、恋人関係なのは嫌と言うほど理解しているだろ、稀子)
「じゃあ……比叡君」
「本題を言うよ!」
「鈴音さん絡みでは無い話を……俺が聞いても意味は無いぞ」
「俺と関係を持ちたいとか言いだしたら、流石に怒るからな……」
「そっ、そんな事は言わないよ。比叡君!!」
「そんな事をしたら、鈴ちゃんに絶交されるよ!!」
「えっと、以前の話の事だけど…、比叡君は就農を今でも望んで居るのだよね」
稀子が俺と話したい事は以前話をした、稀子の地区での就農に関する話だった。
(あの話は流れた思っていたが、稀子の中では続いていたのか)
「なんだ…。そっちの話か」
「それに関しては、俺が一人前に成るまでの間は、俺の中で封印して有るんだ」
稀子は其処で話を止めるかと思ったが、話を続ける。
「でね、比叡君…。実はその事を両親に相談してみたんだ。比叡君の気持ちや鈴ちゃんの事を……」
「稀子の両親に俺達の事を相談したのか…」
「態々、俺にそんな事を言うのだから、収穫が有った訳?」
「うん…」
「比叡君にとっては嬉しいニュースに成るけど、鈴ちゃんには辛いニュースに成るかな?」
「まさかだが……俺に農地を貸してくれる、奇特な人が居たのか!?」
稀子が俺と鈴音さんに内緒で、稀子の両親に相談していた事はよろしくは無いが、俺にとっては待望の事で有った……
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる