偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
220 / 434
【R-15】鈴音編 第2章

第218話 どれが彼女の本音!? その3

しおりを挟む
「ひっ、比叡さんも…、少し落ち着いてください//////」

 俺が稀子に強く当り過ぎているのが、流石に鈴音さんの目に余ったのか制止してくる。

「稀子さんは、比叡さんの事を思って進言したのです」
「少し言い過ぎですよ……」

 鈴音さんは、少し顔をしかめながら言う。

(何が言いすぎだ!)
(元を言えば、平穏な生活をしたいと言い出した鈴音さんだろうが!!)

 俺の中で沸々と…、怒りが湧き始めていた。
 何で、こんなに人生苦労させられるのだ!
 俺だって、鈴音さんと平穏に暮らしたいに決まっている。

「比叡君…。ごめん」
「比叡君が其処まで、就農に拘っているとは思わなかった…」

「……さっきの話は、聞かなかった事にして」
「両親に相談しても出来る事は、農業法人への紹介か運が良くて、農事組合法人の担い手紹介に成るから……」

 稀子は半べそ状態で言う。
 俺だって、此処まで言うつもりは無かった。
 けど……これで、俺の就農への道は絶たれたも同然で有った。

「そろそろ、後片付けをしましょう…」

 鈴音さんは俺の問いの返事をせずに椅子から立ち上がり、食事後の後片付けを行い始める!?

「だね…」
「明日も休日だけど、これ以上話しても問題の解決は出来ないし……」

 稀子も諦め口調で言い、後片付けを始める。
 今の稀子は、俺と鈴音さんの関係なんか気に留めて無いのだろう。
 クソ……これでは、俺が完全に悪者では無いか!!

「……」

 俺も無言で後片付けを始める……
 この日の後片付け中は本当に会話が無く、無言で終わってしまう……

 晩ご飯の後片付け後は、順番にお風呂に入っていて、各自が部屋に戻ったが鈴音さんや稀子は生気を無くした状態で有った。
 鈴音さんは俺と農業をする不安…。稀子は俺の予想外の反論で意気消沈してしまった。

 比叡の自室……

 俺は今、布団で寝転んでいるが、素直に寝られる状態では無かった。

(手の打ちようが無いな……)

 俺も何時かは就農をと考えて居たが…、鈴音さんが彼処まで煮え切らない人だとは思わなかった。
 稀子の提案も本当にぬか喜びだし、俺が今出来る事は農業法人で先ず、1人前に成るしか方法は思い付かなかった……

(真理江さん妹夫婦を頼る手も有るが、あの男に頭を下げたくは無いし、農業サラリーマンでも頑張れば、人並の生活は出来るだろう……。現に今の会社でも、家庭を持って居る先輩達が沢山居る)
(山本さんの再攻撃が無ければ、俺はこの町で骨をうずめる選択肢も出て来る)

(鈴音さんが大学を卒業するまで、まだ2年近くも有るし……それまでに俺を捨てないよな!?)
(嫌な事を押し付けたくは無いし、鈴音さんだって平穏な生活と言いながら、心の奥底では煌びやかな生活を望んで居る気がする)

(稀子には少し言い過ぎたから……明日の朝、直ぐに謝ろう)
(稀子は俺の事を思って言ってくれたのだ)
(当面は、現状維持の生活を強いられるな……)

 色々と考えて居る内に……俺は眠りに就いていた。

 翌日……

 俺は朝食前、稀子に昨夜の事を謝ったが『気にしてないから良いよ…』と、弱々しく言うだけで有った。
 鈴音さんの方は普段通りに接してくれるが、心の奥底からの笑顔や表情は見られなかった……
 唯一、穏やかな表情をしているのは真理江さんだけで有った。

 山本さんを南取島に島流しにする事の素案を、本家が受け入れるからだ。
 昨夜、俺達に了承を貰った後、真理江さんは本家に電話連絡を入れて、話を大幅に進展させた。
 今直ぐの事態では無いし、無駄に遊ばせて有る保養地を活用出来るなら、本家も悪くないと考えたのだろう。
 どれだけの見返りが、真理江さんに要求されるかは未知数だが……

 山本孝明、南取島島流しが決行されれば、本当の安泰が俺達にやって来る。
 俺や鈴音さんが復讐をされる心配は無くなるし、真理江さんや稀子も安心出来る。

 俺が一番恐れているのは、南取島でも山本さんの暴動・暴走だが……その辺の最悪の対策も講じる様だし、俺もそれ以外の妙案は浮かばない。
 本音を言えば、今は自分自身の事で精一杯だった……

 俺が農業法人で1人前に成るまでの間は、就農に関する話は封印して、鈴音さんの心変わりを期待するしか、俺には方法が無かった。
 稀子は……数日もすれば、元気を勝手に取り戻すだろう!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

処理中です...