偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第182話 試験結果発表 その1

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 ……
 …
 ・

 時は過ぎて……5月の下旬。
 ついに保育士試験、学科試験結果の郵便物が真理江さんの家に届いた。
 俺がアルバイトから戻り、居間に顔を出した時に真理江さんから言われる。
 居間には俺を待ち構えていた様に鈴音さんや稀子も居て、俺は緊張しながら郵便物を開く……

「……」

 俺は本当に、言葉が出なかった……
 保育士養成学校の時は『合格・不合格』だけで有ったが、今回の場合は採点まで記されている。

 当然……不合格では有ったが、全ての項目が不合格で有った。
 特に絶望的で有ったのが『保育原理』、『教育原理・社会的養護』、『社会福祉』の3科目で有った。
 この3科目に関しては、正答率が3割にも達していなかった……
 次回の学科試験で合格を目指すのは、ほぼ絶望に等しい状態で有った。

「やはり……駄目でしたか…」
「心の奥底では覚悟をしていましたが…」

 俺が言葉を発しないから、鈴音さんは呟く様に言う。

「保育士養成学校が有る位だから、ほぼ独学では無理だよね…」
「比叡君自身が、その道の正式な経験者では無いし…」

 稀子も呟く様に言う。
 二人共結果の詳細は知りたい筈だが『見せて!』とは言ってこない。
 おれはこのまま『今回は残念だった…』と言って、場を濁そうかと考えた時……

「……青柳さん。私に結果を見せてください」
「私は青柳さんの母親代わりとして、結果を見る必要性が有ります…」

 真理江さんは真剣な表情をして、俺に向けて言う。
 この家に居られるのは、真理江さんの御陰で有る。
 それを俺は断る事が出来なかった……。俺は無言で真理江さんに郵便物を渡す。

「……」

 真理江さんは目を細めながら、試験結果内容を見始める。
 それに釣られて、自然と鈴音さんや稀子も俺の結果を覗き込む。

「……」

「ふぅ~…」

 鈴音さんも真理江さんと同じ様に言葉は出さなかったが、稀子は深いため息をつく。

「青柳さん…」

 真理江さんは、本当に真剣な表情で言う。

「はい……」

「今後は……どうするつもりですか?」
「まだ、勉強を続けますか? それとも、進路の修正を行いますか…?」

「……それは、今。この場で言わなければ成らないことですか…?」

 俺としても、この場で決めたくは無かったが……

「……そうして貰えると、こちらが有り難いです」
「私や鈴音さん、稀子さん…。私達は青柳さんを色々と支えて来ました」

「青柳さんが勉強を続けるなら、私達は今まで通りのサポートを行わなければ成りません…」
「結構……気疲れするのですよ。温かく見守るのも……」

「……」

「……」

 真理江さんが話し終えても、鈴音さんや稀子は何も言ってこない。
 俺の出方待ちだろうか。

(この場で決めろと本当に言うなら『諦めるべき』と言うべきだろう…)
(受験生を持つ家は、家の中がピリピリすると言うが、俺もその様な時が有ったのだろうか?)
(下手に勉強を続けても、これ以上は時間の無駄だと感じるし、もうこの道は諦めよう…)

 俺は意を決して、みんなの前に顔を向ける。

「……みなさん」
「今まで本当に、ご支援及び応援、有り難う御座いました」
「今回の結果で……俺は、保育士に成る夢を諦めます」

「学科試験でもこの状態になのに、これより条件が更に厳しくなる、実技試験は今の段階では絶対に合格は出来ません…」
「本当にご迷惑をお掛けしました。そして、有り難う御座いました!」

 俺はみんなに、お礼と夢を諦めることを言う。
 稀子当たりが、俺を慰めて来るかと思ったが無言で有った。

「……そうですか。分かりました」
「青柳さんの……新しい人生を歩んでください」

「私は孝明の様に『家を出て行って』とは言いませんが、青柳さんも早期に自立を目指して頑張ってください」
「待遇は今まで通り変わりませんが……1日でも早く、次の道を見つけてください」
「これは、私からのお願いです…」

(……自立)
(職を見つけたら、真理江さんの家から出て行って欲しいと言うことか)

 俺が真理江さんの家に居る理由は無くなった……
 山本さんの時では本当に無いが、俺は今の段階で居候から、寄生虫に変わった瞬間でも有った。

 俺は真理江さんの家に、食費を除く家賃や光熱費等のお金を入れてないから、真理江さんが俺を飼うメリットは全く無い。
 自分の子でも腹が立つ筈なのに、よその子だから本当に養う必要は無い。

「……さて、ご飯作りに行こう」
「晩ご飯の時間が遅くなってしまう…」

 稀子は静かに言って、席を立ち台所に向かった。
 今日の食事当番は稀子だから上手に逃げた!
 鈴音さんは稀子には付いて行かずに、寂しそうな、それとも少し怒った表情で俺を無言で見つめて居た。

 真理江さんもその後の言葉は発せずに、静かに新聞を読み始めた。
 俺はどうすれば良いのだろうか!?
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