184 / 434
【R-15】鈴音編 第2章
第182話 試験結果発表 その1
しおりを挟む
……
…
・
時は過ぎて……5月の下旬。
ついに保育士試験、学科試験結果の郵便物が真理江さんの家に届いた。
俺がアルバイトから戻り、居間に顔を出した時に真理江さんから言われる。
居間には俺を待ち構えていた様に鈴音さんや稀子も居て、俺は緊張しながら郵便物を開く……
「……」
俺は本当に、言葉が出なかった……
保育士養成学校の時は『合格・不合格』だけで有ったが、今回の場合は採点まで記されている。
当然……不合格では有ったが、全ての項目が不合格で有った。
特に絶望的で有ったのが『保育原理』、『教育原理・社会的養護』、『社会福祉』の3科目で有った。
この3科目に関しては、正答率が3割にも達していなかった……
次回の学科試験で合格を目指すのは、ほぼ絶望に等しい状態で有った。
「やはり……駄目でしたか…」
「心の奥底では覚悟をしていましたが…」
俺が言葉を発しないから、鈴音さんは呟く様に言う。
「保育士養成学校が有る位だから、ほぼ独学では無理だよね…」
「比叡君自身が、その道の正式な経験者では無いし…」
稀子も呟く様に言う。
二人共結果の詳細は知りたい筈だが『見せて!』とは言ってこない。
おれはこのまま『今回は残念だった…』と言って、場を濁そうかと考えた時……
「……青柳さん。私に結果を見せてください」
「私は青柳さんの母親代わりとして、結果を見る必要性が有ります…」
真理江さんは真剣な表情をして、俺に向けて言う。
この家に居られるのは、真理江さんの御陰で有る。
それを俺は断る事が出来なかった……。俺は無言で真理江さんに郵便物を渡す。
「……」
真理江さんは目を細めながら、試験結果内容を見始める。
それに釣られて、自然と鈴音さんや稀子も俺の結果を覗き込む。
「……」
「ふぅ~…」
鈴音さんも真理江さんと同じ様に言葉は出さなかったが、稀子は深いため息をつく。
「青柳さん…」
真理江さんは、本当に真剣な表情で言う。
「はい……」
「今後は……どうするつもりですか?」
「まだ、勉強を続けますか? それとも、進路の修正を行いますか…?」
「……それは、今。この場で言わなければ成らないことですか…?」
俺としても、この場で決めたくは無かったが……
「……そうして貰えると、こちらが有り難いです」
「私や鈴音さん、稀子さん…。私達は青柳さんを色々と支えて来ました」
「青柳さんが勉強を続けるなら、私達は今まで通りのサポートを行わなければ成りません…」
「結構……気疲れするのですよ。温かく見守るのも……」
「……」
「……」
真理江さんが話し終えても、鈴音さんや稀子は何も言ってこない。
俺の出方待ちだろうか。
(この場で決めろと本当に言うなら『諦めるべき』と言うべきだろう…)
(受験生を持つ家は、家の中がピリピリすると言うが、俺もその様な時が有ったのだろうか?)
(下手に勉強を続けても、これ以上は時間の無駄だと感じるし、もうこの道は諦めよう…)
俺は意を決して、みんなの前に顔を向ける。
「……みなさん」
「今まで本当に、ご支援及び応援、有り難う御座いました」
「今回の結果で……俺は、保育士に成る夢を諦めます」
「学科試験でもこの状態になのに、これより条件が更に厳しくなる、実技試験は今の段階では絶対に合格は出来ません…」
「本当にご迷惑をお掛けしました。そして、有り難う御座いました!」
俺はみんなに、お礼と夢を諦めることを言う。
稀子当たりが、俺を慰めて来るかと思ったが無言で有った。
「……そうですか。分かりました」
「青柳さんの……新しい人生を歩んでください」
「私は孝明の様に『家を出て行って』とは言いませんが、青柳さんも早期に自立を目指して頑張ってください」
「待遇は今まで通り変わりませんが……1日でも早く、次の道を見つけてください」
「これは、私からのお願いです…」
(……自立)
(職を見つけたら、真理江さんの家から出て行って欲しいと言うことか)
俺が真理江さんの家に居る理由は無くなった……
山本さんの時では本当に無いが、俺は今の段階で居候から、寄生虫に変わった瞬間でも有った。
俺は真理江さんの家に、食費を除く家賃や光熱費等のお金を入れてないから、真理江さんが俺を飼うメリットは全く無い。
自分の子でも腹が立つ筈なのに、よその子だから本当に養う必要は無い。
「……さて、ご飯作りに行こう」
「晩ご飯の時間が遅くなってしまう…」
稀子は静かに言って、席を立ち台所に向かった。
今日の食事当番は稀子だから上手に逃げた!
鈴音さんは稀子には付いて行かずに、寂しそうな、それとも少し怒った表情で俺を無言で見つめて居た。
真理江さんもその後の言葉は発せずに、静かに新聞を読み始めた。
俺はどうすれば良いのだろうか!?
…
・
時は過ぎて……5月の下旬。
ついに保育士試験、学科試験結果の郵便物が真理江さんの家に届いた。
俺がアルバイトから戻り、居間に顔を出した時に真理江さんから言われる。
居間には俺を待ち構えていた様に鈴音さんや稀子も居て、俺は緊張しながら郵便物を開く……
「……」
俺は本当に、言葉が出なかった……
保育士養成学校の時は『合格・不合格』だけで有ったが、今回の場合は採点まで記されている。
当然……不合格では有ったが、全ての項目が不合格で有った。
特に絶望的で有ったのが『保育原理』、『教育原理・社会的養護』、『社会福祉』の3科目で有った。
この3科目に関しては、正答率が3割にも達していなかった……
次回の学科試験で合格を目指すのは、ほぼ絶望に等しい状態で有った。
「やはり……駄目でしたか…」
「心の奥底では覚悟をしていましたが…」
俺が言葉を発しないから、鈴音さんは呟く様に言う。
「保育士養成学校が有る位だから、ほぼ独学では無理だよね…」
「比叡君自身が、その道の正式な経験者では無いし…」
稀子も呟く様に言う。
二人共結果の詳細は知りたい筈だが『見せて!』とは言ってこない。
おれはこのまま『今回は残念だった…』と言って、場を濁そうかと考えた時……
「……青柳さん。私に結果を見せてください」
「私は青柳さんの母親代わりとして、結果を見る必要性が有ります…」
真理江さんは真剣な表情をして、俺に向けて言う。
この家に居られるのは、真理江さんの御陰で有る。
それを俺は断る事が出来なかった……。俺は無言で真理江さんに郵便物を渡す。
「……」
真理江さんは目を細めながら、試験結果内容を見始める。
それに釣られて、自然と鈴音さんや稀子も俺の結果を覗き込む。
「……」
「ふぅ~…」
鈴音さんも真理江さんと同じ様に言葉は出さなかったが、稀子は深いため息をつく。
「青柳さん…」
真理江さんは、本当に真剣な表情で言う。
「はい……」
「今後は……どうするつもりですか?」
「まだ、勉強を続けますか? それとも、進路の修正を行いますか…?」
「……それは、今。この場で言わなければ成らないことですか…?」
俺としても、この場で決めたくは無かったが……
「……そうして貰えると、こちらが有り難いです」
「私や鈴音さん、稀子さん…。私達は青柳さんを色々と支えて来ました」
「青柳さんが勉強を続けるなら、私達は今まで通りのサポートを行わなければ成りません…」
「結構……気疲れするのですよ。温かく見守るのも……」
「……」
「……」
真理江さんが話し終えても、鈴音さんや稀子は何も言ってこない。
俺の出方待ちだろうか。
(この場で決めろと本当に言うなら『諦めるべき』と言うべきだろう…)
(受験生を持つ家は、家の中がピリピリすると言うが、俺もその様な時が有ったのだろうか?)
(下手に勉強を続けても、これ以上は時間の無駄だと感じるし、もうこの道は諦めよう…)
俺は意を決して、みんなの前に顔を向ける。
「……みなさん」
「今まで本当に、ご支援及び応援、有り難う御座いました」
「今回の結果で……俺は、保育士に成る夢を諦めます」
「学科試験でもこの状態になのに、これより条件が更に厳しくなる、実技試験は今の段階では絶対に合格は出来ません…」
「本当にご迷惑をお掛けしました。そして、有り難う御座いました!」
俺はみんなに、お礼と夢を諦めることを言う。
稀子当たりが、俺を慰めて来るかと思ったが無言で有った。
「……そうですか。分かりました」
「青柳さんの……新しい人生を歩んでください」
「私は孝明の様に『家を出て行って』とは言いませんが、青柳さんも早期に自立を目指して頑張ってください」
「待遇は今まで通り変わりませんが……1日でも早く、次の道を見つけてください」
「これは、私からのお願いです…」
(……自立)
(職を見つけたら、真理江さんの家から出て行って欲しいと言うことか)
俺が真理江さんの家に居る理由は無くなった……
山本さんの時では本当に無いが、俺は今の段階で居候から、寄生虫に変わった瞬間でも有った。
俺は真理江さんの家に、食費を除く家賃や光熱費等のお金を入れてないから、真理江さんが俺を飼うメリットは全く無い。
自分の子でも腹が立つ筈なのに、よその子だから本当に養う必要は無い。
「……さて、ご飯作りに行こう」
「晩ご飯の時間が遅くなってしまう…」
稀子は静かに言って、席を立ち台所に向かった。
今日の食事当番は稀子だから上手に逃げた!
鈴音さんは稀子には付いて行かずに、寂しそうな、それとも少し怒った表情で俺を無言で見つめて居た。
真理江さんもその後の言葉は発せずに、静かに新聞を読み始めた。
俺はどうすれば良いのだろうか!?
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる