偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編 第2章

第134話 両手に花!? その5

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 昼食後は少しの休憩をした後、再び水族館に戻る。
 館内は一回りしたので、見損ねた他のショーを見たり、もう一度見たい魚達を見たり、ショーの開演時間の待ち時間を使って、お土産コーナーに向かい、其処でお土産類を見る。

「水族館に来た記念に、私はぬいぐるみでも買おう♪」

 稀子はそう言いながら、お土産コーナーで売っている、ぬいぐるみを選んで見ている。
 鈴音さんも、色々見ている感じはするが、見ているだけで有った……
 俺はそれが気に成ったので、声を掛ける。

「鈴音さんは、お土産買わないのですか?」

「私は…、特にないですね」

 鈴音さんは表情を変えずに言う。

「そうですか…?」

(鈴音さん…。趣味や特別な興味が有るとは、聞いた事無いな?)
(敢えて言うなら、旅行ぐらいか?)

(逃亡旅行時は、お土産類を買う状況では無かったし、それどころでは無かった!)

「比叡さんも…、何か買わないのですか?」

 俺もお土産コーナーを、同じ様に見て回って居るだけなので、鈴音さんも聞いてきた。

「俺も、鈴音さんと同じです!」
「ぬいぐるみは要らないし、マグカップ類も家に有る」

「どうしても、買わなければ成らないのは、真理江さんと言うより、家へのお菓子位ですね」

「比叡さん!」
「なら、それを一緒に選びましょう♪」

 お互い、手持ち無沙汰だったので、真理江さんへのお土産にする、お菓子を二人で選ぶ。
 定番の饅頭。クッキー、スポンジケーキ類、クランチチョコ等。珍しい様な、珍しくない様な、箱に入ったお菓子が沢山並んでいた。

「比叡さんはどれが、良いと思います?」

「う~ん、無難なのはケーキか、クランチチョコかな?」
「真理江さんが好きそうなのが、一番良いけど…」

「…お母様が好きそうのでしたら、此処では場違いでは有りますが、お饅頭ですよね…」

 クッキーやクランチチョコ系の箱菓子は、水族館向けの可愛いイラストで包装された箱菓子だが、饅頭や和菓子系に成ると一般的な包装で有った。

「真理江さんが饅頭好きなら、それで良いのでは?」

「でも……私達は、水族館に来ていますよね?」
「自然景観の場所なら、まだ話が分かりますが……」

「……」

 俺と鈴音さんが、真理江さんへのお土産に困っていると、ぬいぐるみを買い終えた稀子が俺達の側に来て、声を掛けて来る。

「比叡君とりんちゃん!」
「なに、悩んでいるの?」

「あっ…稀子。真理江さんへのお土産をどうしようかと…?」

「真理江さん…? あぁ、家へのお土産だね!!」
「おばさんは、饅頭系が好きだからこれで良いよ!!」

 稀子は、恐らく自分が気に入った、ある饅頭の大箱を迷わず一つ取る。

「比叡君! これで良いんじゃ無い?」
「値段も手頃だし、量も多そうだし、みんなで食べられるしね♪」

「……」

「……」

 この稀子の決断の早さは、素直に凄いと俺は感心した。
 俺と鈴音さんだったら…、後10分位は、“あれやこれや”と言うからだ。

(俺も……稀子の勢いで、此処まで来たんだよな)

 最初住んでいた町を捨てて、波津音市はずねしに来る切っ掛けも稀子の御陰だし、今の町に引っ越して四人で住む事になったのも、稀子の提案だ。
 稀子の“ゆけゆけ”ドンドンパワーには良く圧倒されるが、この辺が鈴音さんには無い魅力でも有った。

(俺もまだ心の何処かで、稀子には未練が有るのかもな…)

「ねぇ!」
「二人共、黙っちゃって、これじゃあ不満…?」

「うっ、うん」
「それで良いでは無いのかな、稀子?」

「はっ、はい」
「稀子さんの言う通りですわ///」

「??」
「じゃあ、はい! 比叡君!!」

 稀子は不思議な表情をしながら、俺に先ほどの菓子箱を渡してくる。
 飲食費は各自精算だから、家へのお菓子は俺の担当に成るからだ。

「じゃあ、お会計してくるよ!」

 ……

 家へのお土産(箱菓子)を買った後は、ペンギンショーを見てから水族館から出る。
 スマートフォンで時刻を確認すると、14時半を過ぎた時間だった。
 まだ……少し、家に帰るには早い時間では有った……
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