偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第120話 新天地

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 ……
 …
 ・

 電車を乗り継いで、数時間……
 遂に俺達は、真理江まりえ(山本母)さんの、妹が住んでいる町に到着をした。
 お昼前に波津音市はずねしを出発したのだが、妹さんが住んでいる九尾きゅうお市に到着したのは、ほぼ夕方で有った。

 九尾駅周辺は比較的発展している様だが、俺達が住む場所は九尾市の郊外だそうだ。
 駅には真理江さんの妹が車で迎えに来てくれて、俺達はそれに同乗して新しい住処に向かう……

 駅から車で、20分位の所で新しい住処に到着する。中古のようだが2階建ての一軒家だった。
 其処は、湾内が見渡せる静かな住宅街で有った……
 真理江さん妹にお礼を言って新しい住処に入るが、引っ越しの荷物はまだ来ていない。
 引っ越しの距離が長いので、荷物を積んだトラックは今日到着しない。予定では、明日の午前中で有った。
 今晩は、真理江さんの妹宅で泊まらせて貰う。ここから徒歩で直ぐに、妹さんの家が有る。

 鈴音さん達、学園の通園に関してはバスで通園する。
 家から少し歩くと国道に出て、その道はバスが通っている。バス停も家から5分位の場所に有る。其処からバスに乗って、鈴音さんと稀子は学園に通う。
 姉妹校だけ有って、制服はほぼ同じらしいので、俺にとっては目新しさが感じ無い……少し残念だと思うの俺ぐらいか??

 ……

 俺は稀子に……1つ聞きたい事が有った。
 稀子は山本(孝明)さんが好きな筈なのに、俺と鈴音さんに付いて来て、電話番号やメールアドレス等も躊躇わずに簡単に変えてしまった。
 山本さんの携帯電話も解約されたので、稀子が裏切り行為をする事も出来ない。

 俺はその理由をずっと聞きたかったが、聞く機会が無くて聞けなかった。
 真理江さんと鈴音さんは、真理江さん妹宅に出掛けていった。それに付いて行く鈴音さんも律儀な人だ。今、この家に居るのは俺と稀子だけで有る。

 稀子は『家の探索~~♪』と小学生見たいな事を言って、家の探索をしているが、稀子に例の事を聞くのはチャンスだと俺は思った。
 俺は稀子を探しながら2階に上がる。すると稀子はベランダに出ていて、ベランダから見える湾内の景色を眺めていた……

「あっ、比叡君!!」

「見て、見て!!」
「海が見えるよ~~。凄いね~~♪」

 稀子は相変わらずの、子どもの様な話し方で俺を誘う。
 俺もベランダに出て、稀子と湾内の景色を見る。
 湾内は方角の関係で、太陽が海側に昇ったり沈んだりもしないが、夕日に照らされて海面は輝いていた。稀子は楽しい笑顔で湾内を見ている……

「比叡君!」
「前の山本さんの家より、見晴らしが良いね♪」
「この家からは、はっきりと海が見えるよ♪」

 初めて出会った時の様な笑顔で稀子は言う。
 その笑顔で……俺の胸が思わず鼓動を打つ! 
 稀子の事は、一度嫌いなったはずなのに……

 稀子は俺と関係を深めず俺を捨て、山本さんに勝手に近づき、そして今は親友の関係に戻っている……
 本来なら裏切り者で私刑にしたい所だが、この子の姿を見ていると、そんな気持ちも何処かに飛んでいく……

「稀子ちゃん……」

「んっ……比叡君。どうした?」

「稀子ちゃんは、これで良かったの?」
「俺と鈴音さん達に付いて来て……」

「うん!」

 稀子は即答して、話し出す。

「私もね……これでも色々考えたのだよ!」
「私はりんちゃんが“やっぱり”好きだと感じたし、比叡君も裏切って申し訳ないと思っている…」

「山本さんは今でも気には成るけど……山本さんは私を受け入れないと思う!」
「山本さんはそれだけ、鈴ちゃんを大事にしていた!」
「私が山本さんの側に居ようとしても、鈴ちゃんと比叡君をおびき出すために、私を使うに決まっている!」

「だから、波津音市はずねしに留まるより、みんなで“こっち”に来た方が安全かなと思った!」

「それが、稀子ちゃんの意思?」

「そうだよ、比叡君!」
「でも、安心して。流石に鈴ちゃんから、比叡君を取ろうとはしないから♪」
「鈴ちゃんも、山本さんと付き合っている時より笑顔が溢れているし、比叡君なんか何時もデレデレだもんね。私の時とは大違い~!?」

 稀子は語尾を急に上げる! 

「鈴ちゃんと比叡君を守るために付いて来た!」
「私は、鈴ちゃんと山本さんどちらを取ると言われたら、今度は絶対に鈴ちゃんを取る!」
「鈴ちゃんは本当の、私の友達だよ~~♪」

 稀子は、今まで見せた事無い笑顔で俺に言う。

(稀子の奴……やっと、鈴音さんを本当の親友だと感じたようだ)

『比叡さん~~。稀子さん~~』
『何処に居ますか~~~?』

 階下から鈴音さんの声が聞こえる。
 真理江さんと鈴音さんが戻って来たようだ。

「稀子ちゃん!」
「鈴音さんが呼んでいるよ!!」

「じゃあ、戻ろうか比叡君!」

 俺と稀子は、鈴音さんの居る1階に戻る。
 稀子は、俺と鈴音さんのために付いて来たと言ったが、今度こそは信用しても良いだろうか?
 稀子が山本さんとの関係を再び望めば、その過程で絶対、俺と鈴音さんの居場所や連絡先が知られてしまう!

 稀子は意志が弱いから、山本さんに『ガツン!』と言われたら直ぐに萎縮してしまう。
 殴る振りをしただけで、稀子はペラペラ喋るはずだ。
 稀子が俺達の側に居た方が、却って安心なのかも知れない……

 ……

 今日から始まった新生活。
 真理江さん。鈴音さん。稀子。そして、俺を含めて4人の共同生活が始まる。
 この騒動の御陰で、保育士資格取得の勉強は停滞しているが、近いうちに再開させたい。

 俺と鈴音さんは恋人関係だから、稀子が“ちょっかい”を掛けて来るだろうか?
 いっそ、ハーレムルートも考えるか!!
 今の稀子はフリーだし、俺と鈴音さんが仲良く成れば稀子の事だ。好奇心旺盛だから覗き見するに決まっている。それを見た口実に稀子も一緒に―――

(あぁ……そうなれば、俺も一気に勝ち組の仲間入りだな!!)
(美少女2人に、あんな事やこんな事をして///)
(鈴音さん、稀子の青い果実を一度に両方食べて見たい!?)

「ゴホン…//////」

 新しい町で始まった、新しい生活……
 今度こそ、穏やかな時が流れて……俺と鈴音さんは関係を深めて、この町に根付く事に成るだろう……
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