偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
120 / 434
【R-15】鈴音編

第118話 離散!? その4

しおりを挟む
 俺は先ほどの行為を、本当に実現出来るかを、改めて山本さんのお母さんに聞いて見る。

「おばさん……」
「本当に、実現出来るのでしょうか?」
「鈴音さんの両親。特に父親が、とても許す気配は無いと感じますが……」

 特に考える素振りを見せず、山本さんのお母さんは返答をする。

「美作家は…、今でこそ立場は大きくなったけど、元々は私達と同じ分家なの!」
「鈴音さんの父親が、一代で事業を成功に収めて、本家面をする様には成ったけど本来はそうなの」

「……今の時代には、そぐわない言葉かも知れないけど……鈴音さんの父親は、美作家の婿むこ入りなの」

「本家? 分家!?」

(山本さんと美作(鈴音)さんの関係は、そんな関係だったの!?)
(そう言えば……山本(孝明)さんも親戚の集いとか言っていたし、鈴音さんも言って居たな…。そんなに規模が大きい親戚なんだ!!)

「それに……鈴音さんの父親がやっている事業は、鈴音さんの前で言いたくは無いけど、健全な事業とは言いにくいの!」
「鈴音さん自身も、お父さんの事業は詳しくは知らないでしょ!」

 山本さんのお母さんは、鈴音さんに話を振る。

「えっ、えぇ……」
「輸入業としか聞いておりません…」

「私も詳しくは知らないのだけど、発展途上国で安く作った、雑貨や食品を安く輸入して、それを国内の卸業者に販売して居るらしいけど、色々と問題が起きているのよ」
「例えば……人を低賃金で奴隷の様に扱うとか、輸入した雑貨や食品にも異物混入や不良品が多数有ったり、その影響で卸会社との取引も、最近は減り気味だとか……」

「この時代はライバル企業も多くて、大変だとは感じるけど、人の道を踏み外してまで、経営するのは宜しくないよね…」

 それを聞いた鈴音さんは、意気消沈してしまう……

「……初めて知りました。父がそんな非道い事をしているなんて」

「あっ、鈴音さん!?」
「これは人の伝手つてで聞いたのだから、本気にしちゃダメだよ///」

 すかさずフォローを入れる、山本さんのお母さん。

「……普段は優しい父ですが時々、電話口で怒りをぶつけている場面を見ています」
「お仕事だから、仕方無いかと感じていましたが、父は表と裏の顔を使い分けているのかも知れません……」

「私だって使いたくは無いけど、最後は本家に頼み込んで、鈴音さんの父親を押さえ込むさ!」
「孝明の事故の件で、本家にはかなり嫌われたが事情を話して、なんとか鈴音さんだけは助けるつもりさ!!」
「まぁ、本家と言っても、本家の力なんて殆ど無いが、本家自体も美作家は嫌っているからね!」

 山本さんのお母さんがそう言うと、鈴音さんが質問をする。

「お母様……本家の方々達に、私達の家族はそんなに嫌われていたのですか?」

「別に、涼子すずこ(鈴音の母)さんや、鈴音さんを嫌っている訳では無いさ」
「本家が嫌っているのは、婿で有る父親だけさ!」
「事業で成功をするまでは気さくな人だったのに、成功した途端に豹変しおった!」

「涼子さんも鈴音さん見たいに優しい人だから、何も言わないのだよね…」
「今思えば……肩書きを得るために、涼子さんに近づいたのかも知れないね……」

 俺や稀子の知らない事が“どんどん”、山本さんのお母さんから発せられる!?
 稀子は目を“ぱちくり”させながら聞いているし……山本一家は孝明さんを含めて、どれだけ秘匿主義なのだ!?

「あぁ……ごっ、ごめんなさい///」
「鈴音さんの目の前で、お父さんの悪口を言ってしまって///」

 山本さんのお母さんは興奮していた所為か、本人目の前でかなりの事を言っていた。
 幾ら父親が悪い事をしているからと言って、子どもの目の前で言う事では無い……

「……お母様」
「私は大丈夫です……いえ、却って有難う御座います」
「父の本来の姿を教えてくれて、本当に有難う御座います」

「これで……私は、自由に生きていく事を決めました!」

「鈴音さん……」

 鈴音さんは、徹底的に父親に対抗する意思を持ってしまった。

(俺も両親とは仲が良いとは言いにくいが、鈴音さんの場合は分が悪いぞ!!)
(相手が悪すぎる!!)

 俺がそう考えていると、山本さんのお母さんが俺にいきなり質問をする。

「青柳さん…。何で屋号は山本鞄店なのに、ランドセルしか作らなく成ったか知っているかい?」

「えっ!?」
「もちろん、知らないです!!」

「なら、良い機会だ……」
「昔は革製品を持つのが、一種のステータスだったが、舶来文化が好きな国民は、海外ブランド製品を喜んで買って、それを買えない庶民達は、安価なナイロン製や輸入革製品を買う様に成った」
「この店でも財布やバッグを作って、販売していた時期が有ったのだよ」

「はぁ……」

「夫が代の時に将来性を考え、今までの革製品作りは全て止めて、ランドセル専業に鞍替えした」
「ランドセルの需要は年に1回しか無いが、安定した収入も得られるし、あの時の色は黒・赤の2色しか無いから、コストも安く抑えられて商売は順調だった…」

「今は難しいね……。大手商社やランドセルメーカーが多品種・多色を出してくれるから、私の様な個人店では年々、ランドセルが売れなく成って行った……」

「あの時の孝明は、暴走族バイクに明け暮れているし、夫も交通事故でいきなり亡くなってしまった…」
「本気で店を閉めようと考えた時に、鈴音さんを下宿させる話を、孝明が持ち掛けてきた」

「あの時は、びっくりしたよ…!」
「美作さんの鈴音さんを、下宿させたいなんて言い出したから……」
「見ての通り、夫を亡くしてからは孝明と2人暮らしだし、子どもも孝明以外に恵まれなかった…」
「部屋だけは無駄に余っていたから、私はそれを認める代わりに、1つの条件を付けた」

「何時でも良い。店は必ず継げと……」

「初めの内は文句を言っていたが…、有る日いきなり暴走族を解散させて、本当に店を継ぎ始めてしまった。恋愛の力は凄いね……」

「ごっ、ごめんなさいね。最後の方が余計だったわ///」
「ですから山本鞄店より、鈴音さんの将来を応援します!!」

「元々、孝明が鈴音さんに興味を示さなければ、とうの昔にこの店は閉店していた!」
「あの時、孝明が……鈴音さんの気持ちを汲み取ればと、今でも考えてしまうが、起きてしまった事は諦めるしかない」

「だから必ず、私達と青柳さんを、妹の住んでいる町に行かすさ!!」

 山本さんのお母さんは力強く言った。それは本気の目をしていた。
 本家の強さを俺は知らないが、この感じなら、本当に実現してしまうのでは無いかと俺は感じた……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...