偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第111話 副総長 敏行 その1

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『バキィ~~』

 相手の拳が、俺の頬に炸裂する!!
 俺はその衝撃に耐えられず、体を後ろに向けて倒れ込む!!

「うぁ~~~」

「きゃ~~~!!」

 俺は男にいきなり殴られて、それを見た鈴音さんも悲鳴を上げる!!

「お前が…、お前が……逃げずに素直に捕まっていれば、あの方はこんな事に成らずに済んだ!」
「自ら俺が、今から貴様にお仕置きをしてやる!!」

 男は再度、俺に向けて拳を振りかぶるが……!!
 鈴音さんは、俺を殴ろうとしているその男の腕を掴む!?

「止めて下さい!!」
「比叡さんは、悪く有りません!!」

 鈴音さんは男の腕を掴んで、俺を殴らせない様にするが……

「邪魔だ~~。離せ!!」

「きゃっ!!」

 男は、鈴音さんが掴んでいた右腕を払いのける!
 その衝撃で、鈴音さんは後ろ向きに倒れかける!!

「イタタ……」

 鈴音さんは倒れずに尻餅をついたが、大丈夫だろうか……
 尻餅をついた鈴音さんに、男は声を掛ける。

「ケッ!!」
「どうせ……実刑判決が下ったのを、お前ら笑いに来たのだろう?」
「このゴミカップルが……この女。意外に“えぇ”顔しているでは無いか?」

「なぁ、あんた。そんな柔男捨てて、俺と楽しまんか?」
「俺の方があんな奴より、よっぽど相応しいぞ!」

 男は、尻餅を付いている鈴音さんに近づく。

「それ以上近づくと、もっと大声出しますよ!!」

 鈴音さんは、その男に対して威嚇をする。

「顔の割に威勢が良いな。……総長好みの女だな!」
「……まさかと思うが、総長の女か?」

「えっ!?」
「あっ、あの…、孝明さんのお知り合いの方ですか?」

「ふぁ!?」
「何で、テメー……、総長の名前を知っているのだ!?」

 すると鈴音さんは、無言で起き上がりながらスカートをはたく。
 見た感じ……怪我はしていない様だ。良かった!!
 鈴音さんは、その男を少し睨み付けながら言う。

「…相手に名を聞く前に、自分から名乗るのが普通では有りませんか…?」
「小さな子どもでも、そうしますよ!」

(凄いぞ! 鈴音さん!!)
(DQN相手に、真面まともに対峙して、更に相手を挑発している!!)
(鈴音さん……。普段は天使だけど、怒らせば般若に成る人!??)

「ケッ!」
「気の強い女だ…!!」
「まぁ…、良い。俺の名は敏行だ。元朱海蝲蛄、副総長だ!」

「……やはり、孝明さん知り合いでしたか…」

 鈴音さんが冷静な口調で呟くと、玄関の扉が勢いよく開く!

『バーーン!』

「今、りんちゃんの悲鳴が聞こえたけどなに!?」

 稀子が鈴音さんの悲鳴に気が付いて、玄関から出て来た。

「うぁ!」
「なに、この状況!!」

 稀子の目線から見れば、DQNと鈴音さんが対峙している場面に成るから“びっくり”するだろう!!

「……比叡君も頬が赤いけど、どうしたの?」

 敏行DQNが思いっきり殴って来たから、俺の左頬は腫れ上がっていた。
 歯は折れてないが、殴られた時に口の中は切れてしまった……

「くっ!!」

 状況が不利だと感じた敏行は、走って逃げだそうとするが、鈴音さんが声を掛ける。

「待って下さい!」
「私は、孝明さんと関係が有った者です!!」

 鈴音さんがそう言うと、逃げようとした敏行は立ち止まるが……

「はっ、あんた見たいな小娘が、総長の関係者!?」
「笑っちゃうね~~。んっっ……!!」

「もしかして……総長の隠し子!?」
「それで…、総長は自棄に成っていたのか!!」

 敏行は何やら1人で呟いて、勝手に納得し始めている。

「私は……孝明さんの元恋人です!!」

「うぁ~~~??」

 鈴音さんの言葉を聞いた敏行は、凄く驚いた表情をする。

「こんな子供ガキ見たいな女と総長が付き合っていた!?」
本気まじで……なぁ、冗談だろ!?」
「硬派の総長が……子供ガキを女にしていた!?」

「その言葉は、人を馬鹿にしすぎですが……そうです!」
「孝明さんが事故を起こす当日までは、孝明さんと付き合っていました!」

 敏行は俺達の側に戻って来て、鈴音さんの名前を聞く。

「あんた、名前は……?」

「美作鈴音です!」

 すると敏行は不思議な表情をし始めた……

「お前は何て言う…?」

 敏行は俺の名前も聞いてきた。

「青柳比叡だ…」

「……」

 敏行は、何やら考え事を始める……
 俺と鈴音さん。状況が理解出来てない稀子の3人で、静かに見守っていると……

「鈴音さんだっけ…?」

「はい…!」

「何で……総長と別れたの?」

「孝明さんが、自分勝手過ぎたからです!」
「人の意見も受け入れずに、自分に都合が悪くなると、人を脅すやり方に愛想が尽きたからです!」

「……そうか!」
「俺達は……総長の女問題に、こんな事をしていたんだ?」

 敏行は冷静な口調で言う。

「…鈴音さんの横に居た、その男が今の彼氏か?」

「はい!」
「そうです。比叡さんは私の彼氏です!!」

「!!!」

(えっ…、鈴音さん。堂々と俺を彼氏宣言したぞ!!)
(さっきまで、俺を見捨てようとした行動は何?)

(どっちの言葉が、鈴音さんの本音!?)

 鈴音さんの考えている事が理解出来なかった……
 山本さんを擁護するような発言をすれば、俺を人前で彼氏宣言する。

 鈴音さんの中では、山本さんを思う気持ちは残って居るのだが、表面上では俺の事を彼氏として認識している。
 鈴音さんが心の底から優しい女性なのか、男には皆甘い女性なのかは、俺には解らなかった……
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