偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第107話 意外な展開 その6

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「大丈夫ですわ…。私は怒っていません!」
「稀子さんの御陰で、私にとって本当に大切な人と、出会える事が出来ました!」

 鈴音さんは天使の様な笑顔で、稀子に話し掛ける。
 鈴音さんの中では、稀子を完全に許しているのだろう……

「りっ、りんちゃん///」

「……孝明さんに不幸が起きてしまった事は、どうする事も出来ません!」
「今、一番大事なのは、事故に遭われた方が無事に回復して、日常生活に戻れる事と、孝明さんは事故を起こした責任をしっかりと償う事です!!」

「でっ、でも……ひぐっ!」
「私が……私が…、鈴ちゃんの気持ちを伝えなかったから、―――」

「それ以上は言わないで下さい。稀子さん……」
「私の中でも、孝明さんに対して不満は有ったのです!」
「本当に好きな人でしたら、比叡さんや稀子さんの忠告を押しのけて、孝明さんの元に向かっているでしょう!」

 鈴音さんは椅子に座っている稀子を、上手に包み込みながら声を掛けている。
 泣いている子を抱きしめるやり方は効果が有ると思うが、男性指導員が女子児童に同じ事をすると、非常に立場が危うく成ってしまう……

「鈴ちゃんは、私の事許してくれるの?」

「許すも許さないも有りません……」
「稀子さんは本当に孝明さんが好きで、私は比叡さんが、本当に好きに成っただけです!」

 すると、先ほどまで涙でグシャグシャだった稀子が、急に慌て始める!!

「えっ? えっ……?」
「鈴ちゃん!! それはどういう意味!!!」

「そう言う事ですよ♪」
「私達、カップル交換しましょう~~♪」

 満面な笑顔で言う鈴音さん!?

「いっ、いや、鈴ちゃん!!」
「私はそれでも良いけど、山本さんが絶対に許さないよ!!!」

「それを……許さないから、孝明さんに不幸が起きてしまったのです……」

「孝明さんも満更、稀子さんの事、気に入っていたでしょ!」
「私と居るより、楽しそうな笑顔でしたし……」

「あっ……、そっ、それは……」

 稀子は、どの様に返事をしたら良いか分からない感じだ。
 ここで鈴音先生が急に“やきもち”を焼き始める!?
 比叡先生が、この場を上手に収め無くては!!

「えっと、まぁ。そんな状況だよ。稀子ちゃん…」
「俺も稀子ちゃんの事は好きだったけど、鈴音さんをもっと好きに成ってしまった…」
「でも、出来れば……稀子ちゃんとは親友として、仲直りはしたいかな?」

「!!」

 稀子はそれに驚きながらも、恥ずかしながら言う。

「比叡君! 本当にごめんなさい///」
「縁を切ってしまったのに、それでも縁を求めてくれるのは嬉しいよ///」

「こんな私でも良いなら、喜んで比叡君とお友達に再度成るよ!!」

 稀子は涙顔で嬉しそうに言う……
 これで、俺と稀子の関係は修復出来た…。鈴音さんも稀子との関係を修復出来たようだし、本来ならこれで、エンディングのスタッフロールが流れ出すはずだ!!

『♪~~~』

 俺は頭でそう想像しながら、ミルクティーを飲む。

(うん! 良い終わり方だ!!)
(これが、アドベンチャーゲームなら、月間売り上げ1位は確実だな!!)

(……さて、想像ごっこは終わりにして)

 状況が落ち着いた稀子の姿を確認してから、鈴音さんも席に戻る。
 しかし、本当の問題はこれからだ……。鈴音さんが話し出す。

「さて……話を仕切り直しまして、稀子さんはお母様から、孝明さんの事故を知った様ですが…、何処まで聞いていますか?」

「後…、孝明さんの車が有りませんが、お母様は相手先のお見舞いに行っているのですか?」
「けど、お母様は車の免許は持っていないですよね?」

 鈴音さんがそう言うと、稀子は天井を見上げて、稀子が聞いた内容を思い出している感じだ。

「えっとね…、鈴ちゃん……。うん。そうだよ!」
「山本さんのお母さんから事故の話は聞いて、山本さんのお友達と一緒に、今お見舞いに行っている」

「そうですか……」
「お母様だけで無く、孝明さんの親友もご一緒ですか?」

「うん…」
「電話で、そう言っていた!」

「……有り難う御座います」

 鈴音さんは残念そうに稀子にお礼を言う。
 稀子にも、そんなに情報が行ってないからだ。
 山本さんのお母さん、山本(孝明)さんの親友と、一緒で動いて居ると言う事は、顔なじみの関係だな……

「稀子さん…。孝明さんの事故を起こした場所とかは知っています?」

「あれ、鈴ちゃん?」
「新聞のWebサイト見てないの!?」

「えっ、稀子さん!!」
「記事に成っているのですのか!?」

「うん!」
「私(稀子)の家は新聞を取っているから、Web版の新聞を調べていたら新着に有った!」

「そうなんですか!!」

 驚きながら声を上げる鈴音さん!
 どの時間帯に事故を起こしたかは不明だったが、Webサイトのニュース記事は見落としていた。

「それで、稀子さん!!」
「何処で、何時に事故を起こしたのですか???」

「ちょ、ちょっと、鈴ちゃん!!」
「少し落ち着いて……、今、記事を見せるから!!」

 稀子はポケットから、スマートフォンを取り出して操作をし始める。
 稀子は俺と鈴音さんに見える様に、山本さんの起こした事故の記事を見せてくる。

「!!!」

「……」

 口元を手で押さえながら記事を読む鈴音さんと、俺はその記事を無言で読む。
 事故起こした時刻は、昨夜の23:30頃。
 場所は、騒丘そうおか市近辺に有る、黒藤くろふじ市。
 山本さんは確実に、俺達の居場所を知っていて、つ捕まえに来ていた……

 事故の内容は、山本さんが赤信号の交差点にバイクで侵入して、青信号で横断中だった歩行者をねた。
 歩行者の方は意識不明の重体…。山本さんも軽い怪我をしたと書いて有る。
 山本さんは、自動車運転過失致死罪の疑いで現行犯逮捕されたが、俺にはこの罪状がどれだけ重いのかピンとは来なかった……

「……お母様が戻って来るまでは、待つしか有りませんね…」

「そうだね…。鈴ちゃん」

「……」

 折角、3人が仲直り出来たのに、またお通夜状態に戻ってしまった。
 山本鞄店の前にはマスコミも居る気配は無いし、近所には知れ渡っている筈だが、様子を見に来る人も居なかった。

 俺達3人は静かに、山本さんのお母さんの帰りを待つだけだった……
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