偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第85話 朱海蝲蛄 【山本】 その4

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「はい…」

「おぅ、僕だ! 孝明だ!!」

「これは総長……お久しぶりです」

 今、電話を掛けている相手は副総長の敏行としゆきだ。
 鈴音が家に来てからは希薄に成ってしまったが、またその様な時が来てしまうとは……

「俺に電話を掛けてくる事は、只の飲み誘いでは無いですね…」

「流石、敏行だな…。あぁ、人捜しだ…」

「…どんな奴です…?」

「この通話が終わったら、手配書(写真)を送る!」

「20代の青年ガキと10代のメスだ!」

 僕が鈴音と関係を持っている事は、朱海蝲蛄の仲間内には知らせて無い。
 僕は硬派だから、子供ガキと変わらない鈴音と関係が有るのを知られてしまうと、朱海蝲蛄総長の面目が丸潰れだからだ。チーム自体はもう無いが、信頼関係だけは残っている。

「変な組み合わせですね。援交絡みですか?」

「馬鹿か! 俺がそんなチャチな仕事やるか!!」
「女は関係無いが、男の奴が僕を小馬鹿にしやがったから、お仕置きを考えていてな…」
「ペアで動いていると情報を得たから、見付けやすい筈だ!」

 朱海蝲蛄チーム内で僕は“鞄職人”と成っているが、“ランドセル”専門の職人と言う事実は誰にも教えてない。こう考えると僕も結構、小心者だな……

「総長。分かりました…」
「ターゲットは、どの辺に居るのですか?」

「場所か…。鉄道を使う筈だから『大石十色おおいしといろ駅』、『富橋とみはし駅』周辺を探せば居るはずだ!」
「居なければ沿線の捜索に成るが、奴らは1泊するらしいから、沿線に宿泊施設が有る地域を調べた方が早いかもな…」

「結構、大がかりですね…」

「すまんが、総動員で探してくれ!」
「後、暴力行為は警察ポリが五月蠅いから道具ナイフで上手に脅せよ!」

「分かってますって、総長!!」
「『総長命令!』だと言って、召集掛けて捜索に当たらせます!」

「あぁ、頼んだぞ…」

『ピッ』

 副総長、敏行に連絡を取り終えて、比叡と鈴音が写っている写真データを敏行のメールに送信する。
 この写真は、彼奴あいつが来た初日に行われた、歓迎会の時に撮った写真で有る。

「俺の力を舐めるでないぞ! 比叡!!」

 遠くからサイレン音が聞こえる。
 比叡と鈴音がタクシーで逃走してから10分位か?

「やっと、警察と救急車が来たか…?」

 面倒くさいと感じつつ、来た警察官に事情を話した……

 ……

 言うまでも無く自転車が悪いし、相手も俺の体格と顔つきを見たから、ごねる事無く相手は全面的に非を認めた。
 こちらは軽い打撲程度だから問題ない。相手の方は擦り傷が中心だったが、それ以外に外傷は無いから大した事は無いだろう。

「ながら運転なんかするな!」御陰でこっちは、余計な時間と比叡と鈴音を逃してしまった。
 俺に万が一の症状が出た時のために、相手の連絡先を交換する。
 後から、むち打ち症状で金をせびっても良いが、そんな事をするのは小物がする者だ。
 僕が警察から解放された時は、比叡と鈴音が逃走しだしてから、20分と少しの時間が経過した時間だった……

 まずは家に戻る。
 僕の母さんは、朝から親戚の家に行っていて今晩は帰って来ない。
 今、家に居るのは稀子だけで有る。
 玄関を開けると、音で気付いたのか稀子がやって来る。

「山本さん! お帰り~~!!」

 馬鹿女は“へらへら”しながらやって来る。

「ただいま…」

「今日は、りんちゃんも居ないし2人きりだね!」

 馬鹿女は嬉しそうに言う。何かを期待して居るのか…?
 望み通りにしてやっても良いが、今はそれ所では無い。

「稀子ちゃん…。僕、急な仕事が入ったから、今から出掛けなければ成らない」
「もしかしたら、今夜は帰って来られないかも知れない……」

「えっ!?」
「そうなの……」

 馬鹿女は驚き、悲しそうな顔をする。
 面倒くさい性格の女だ。何故こんな女が、一時いっときでも良いと思ったのだ!?

「それで……、稀子ちゃん1人では危ないから、今から実家に戻ってくれない?」

「えっ、何で!?」

 一々、反応するな! 
 素直に『はい』と言え!!

「稀子ちゃんは居候の身分だし、本当に何か有った時は、責任が取れないから…」

「私1人でも、お留守番は出来るよ、―――」

 この女、いちいち“ぎゃーぎゃー”と五月蠅い!
 もう良いや! とっと、脅そう!

「五月蠅いぞ!! いちいち反論するな!!」
「言う事、素直に聞け! 馬鹿女が!!」

 おっと遂……本音が出てしまった!
 馬鹿女は突然の事で、目を丸くしている。
 そして、脅すと直ぐに泣き顔に成る。いちいち面倒くさい……

「……今日の山本さん。何か変だよ…!」
「何時もは、優しいのに……」

「これが本来の姿なんだよ! 稀子!!」
「それ以上言うと、お前の望み通り犯してやるぞ!!」
「勿論、前戯は無しだからな!!」

「ひぃぃ~~!!」

 稀子は仰天した顔をして、玄関から逃げ出して階段を駆け上がる音がする。部屋に戻ったはずだ。ここまで脅せば、稀子は実家に帰るはずだ。
 しばらくして、動きが無ければ部屋に行って再度脅すか、馬鹿女望み通り犯すだけだ!!

 僕はキッチンに行って、冷蔵庫から瓶ビールを出してリビングで飲んでいると、稀子が静かにリビングに入ってくる。
 稀子はきちんとバックを持っていた。よし、よし。

「じゃあ、山本さん言う通り、一度家に戻る……」

 別にもう、帰って来なくても良いぞ。

「あぁ、気を付けてな」

「明日には、帰って来ても良いのだよね?」

「……ご自由に」

「……今日の山本さんは本当に変だよ」
「何か有ったの?」

「ぎゃーぎゃー五月蠅いんだよ! 早よ行け!!」

「ん~~~」

 馬鹿女は泣きながらリビングから出て行った。
 鈴音を追い込みすぎた、俺からの私刑だ。玄関が開いて閉まる音がする。
 これで今、この家に居るのは僕だけだ。

「後は……報告を待つだけか…?」
「あぁ、お仕置きの用意をしなくては成らんな…」

 僕はビールを一気に飲み干して工場こうばの方に向かった……
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