偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第93話 朱海蝲蛄 【山本】 その12

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 山本の状況……

 昼食のカップ焼きそばを食べて、何時でも出撃が出来るように僕はリビングで待機しているが、一向に敏行からの連絡は来ない……

 時刻は15時を過ぎた所……。しびれを切らした僕は、再度敏行に電話を掛ける。

「総長! お疲れ様です!!」

「敏行…。役に成りきるのは良いが…、状況はどうだ?」

「そっ、それは……」

(何も掴めてないのか!)
(こいつは…)

「僕の指示通りに、動いて居るのだろうな…?」

「そっ、それは勿論!」

「沿線の捜索は…、何処まで行った?」

「えっ!?」
「沿線の捜索ですか…?」
「えっと……、西は名美崎《なみさき》、東は……松林《まつばやし》、北は、古城《ふるしろ》ですね」

「お前……大分、広げたんだな…」

「あっ、はい!!」

 褒められたと思って、声が喜んでやがる。馬鹿が……
 少人数で、広範囲を捜索しても意味が無いだろ!
 少しは頭を使え!!

(名美崎から西は、比叡の以前住んでいた町の方角に成るな…?)
彼奴あいつの事だ。前住んでいた町に未練は無いはずだ)
(西の捜索はこれ以上無駄だな…)

「敏行…」

「はっ、はい!」

「西の捜索は名美崎で打ち切って、北と東に集約させろ!」

「えっ、良いんですか?」

「あぁ、構わん…」

「分かりました…」

「何か有ったら、直ぐに連絡を入れろよ!」

「はっ、はい。総長、勿論!」

『ピッ』

 僕は頭を掻きながら……

「僕も探しに行っても良いが、総長が右往左往するのもな…」
「車の用意と、道具の準備でもするか…」

 僕はガレージに行って、ガレージのシャッターを開ける。

『ガララ~~♪』

 ガレージにはハ○エースと、朱海蝲蛄時代に乗っていたバイクが、車の後ろに置いて有る。
 バイクの方は、何時でも乗れるようにメンテナンスはして有る。

「狭い路地に入られても良いように、バイクで迎えに行ってやるか!」
「彼奴らの事だから、僕がハ○エースで動いて居るだろうと、思っている筈だからな!」

「良し! 比叡らの場所が分かったら、敏行にハ○エースを運転させて、僕はバイクで行こう!」
「バイクの自賠責保険は、まだ切れて無かった筈だが……多分大丈夫だろう」

 本当は確認をしたいが、照明設備が漏電の影響で使えない。この前の雨の所為だろう…。更に防犯のために窓も無い。
 ガレージ内左右には棚が置いて有るので、奥まで陽の明かりが入り込みにくい。
 通路も、車のドアを開けて、乗り込むのがギリギリ位の幅で有る。

 ハ○エースを出せば、陽の明かりが入るから確認出来るが、一度出して、直ぐに戻すのが面倒くさいと感じた。此処には懐中電灯も無いし、乗る時に確認すれば良いか!
 実際……。バイクに乗ろうかと考えただけで、本当に決めた訳では無い。
 愛車のハ○エースに、比叡達を確保するのに便利な道具を積み込む。

「彼奴らがどこに居ても、必ず確保しないとな!」
「ス○ンガンとLEDライトも必要だな……」

 ガレージで揃わない道具は、後で用意する。

「これで良しと……」
「家に戻る前に、コンビニに行って、晩飯を買いに行くか!」

 丁度ガレージに居るのだし、俺はハ○エースに乗り込んで晩飯を買いに行く。
 この時に、バイクの自賠責保険を確認すれば良かったのが、頭は比叡のお仕置きの事で、記憶から抜けてしまった……

 ……

 晩飯をコンビニに買いに行って、ス○ンガンやLEDライトの準備と動作確認をして、少し早い晩飯を食べた後、リビングでうたた寝をしていると、スマートフォンから着信音が鳴る。

「んっ……」

 ディスプレイの表示を見ると敏行からだった。

「やっと、見付かったか…?」

 僕は電話に出る。

『ピッ』

「もし、もし」

「総長! 見付かりました!!」

「何! 本当か!!」
「でかした! 何処だ!!」

騒丘そうおか市に有るビジネスホテルです。そのホテルに奴らは泊まって居ます!」

「騒丘か……ずいぶん逃げたな。敏行、本当に良くやった!!」

「総長!」
「有り難う御座います!」

(実際は俺では無いが、黙っていれば俺の手柄だ!!)

「良し! 早速行くぞ!!」
「お前は、僕の家に直ぐ来い!!」

「えっ!? 俺も行くんですか??」

「決まっているだろう! 副総長だろ!!」
「僕はバイクで行く。敏行がハ○エースで来ないと、彼奴らを連れて来られない!」

「そう言う事ですか……。今すぐ向かいます!」

「30分で来いよ!!」

「……分かりました!!」

『ピッ』

「あのやろ~~、敏行は捜索して無かったんだな!」
「本当に探していたら、30分で来られる筈が無い!!」

「まぁ、良いや。見付かったのだから不問にしてやろう!!」
「俺は心が広いからな!! がはは~~」

 ……

 約30分後……。敏行は僕の家に来て、今から比叡と鈴音を捕まえに行く。

「総長! これが場所です!!」

 僕は敏行から、手書きの地図を受け取る。
 バイクなら、ホテル到着まで2時間も掛からない……

「僕はバイクで先に行くから、敏行はハ○エースで来てくれ!」
「ほら……鍵だ!」

 敏行に鍵を投げ渡す。
 敏行はハ○エースに乗り込んで、ガレージからハ○エース出す。
 時刻は、22時を少し過ぎた所……丁度、寝込みを襲えて都合が良い!

 月夜の明かりの中、僕はバイクをガレージから出す。

『キュル、キュル……、グォン~~、グォォォン~~~、―――』

 僕のバイクが元気良く唸り声を上げる。獲物を欲しがっている音だ!
 ヘルメットを被り、バイクに跨がる。

「比叡君……。君にはお礼を…、本当に死ぬ程したいからね~~」

「じゃあ、先に行ってるぞ!!」
「敏行!!」

「総長! 直ぐに後を追います!!」

 バイクのアクセルを握り締め、比叡の絶望する顔を思い浮かべながら、比叡の居るホテルへ全速力で向かう!!

「待ってろよ~~比叡!!」
「宴の始まりだ~~~!」
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