偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第91話 朱海蝲蛄 【比叡】 その10

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 俺は部屋の窓から見える景色を眺めている。
 窓際には、椅子とテーブルが置いてある。その椅子に座って景色を眺めていると……

「比叡さん。どうぞ!」

 鈴音さんがお茶を入れてくれてテーブルに置く。
 鈴音さんも、自分のお茶を手元に置いて椅子に座る。
 窓から見える空は夕方空だった……。目の前に見える道路は工場が付近に有る所為か、トラック等の車両も比較的通り抜ける。交通量の多そうな道路だ。

「鈴音さん!」
「これで太陽が見られれば、最高なのにね!」

「そうですね♪」

 俺と鈴音さんはお互い、お茶を飲んで一息つく。
 お互いが微笑み合って、良いムードだ!

「本当はもっと楽しい予定だったのにね。鈴音さん!」

 俺がそう軽く言うと、急に鈴音さんは表情を暗くする。

「私はもっと早く……山本さんと縁を切るべきでした…」
「そうすれば、今日みたいな事態は起きなかったはず…」

「起きてしまった事は仕方無いよ」
「今を楽しみましょう。鈴音さん!」

「はい…。そうします!」
「少し、セキュリティに不安面が有りますが、今晩は大丈夫でしょう…」

 このホテルは名ばかりのホテルで有る。
 フロントに人は常に居なくて、外部からの人は入りたい放題で有った。
 フロントのカウンターにベルが有って、ベルで人を呼び出す。
 部屋の鍵もオートロックでは無く、普通の鍵で有ったから、ピッキングをされたら、チェーンロックを掛けていても突破される危険性が有る。

「比叡さん! お風呂は万が一に備えて、1人ずつ今から入りましょう!」
「これから深夜に成れば、深夜に成る程危険性は増しますし、単独での行動は危険が増します!!」

 部屋の鍵は1つしか無いし、入浴も一緒に当然入れない。
 今、山本さん達の捜索が何処まで手が伸びているかは不明だが、早い内に入浴だけは済ませた方が良いかも知れない。

「そうだ、鈴音さん!」
「フロントに鍵を預けて、一緒に行きましょうよ!」
「そうしたら、2人で行動出来るし、どっちかが先にお風呂から上がっても、フロントで鍵を受け取れる!」

「あっ、そう言う方法も有りましたね!」

 鈴音さんは、少し驚いた表情をする。

「今の時間帯ならまだ、大丈夫だと思いますし、今の内に、一緒にお風呂に行きましょう!」

 晩ご飯の時間までは、まだ十分に有る。
 俺と鈴音さんは一緒に部屋を出て、フロントで部屋の鍵を預けて、お互いが入浴に向かった……

 ……

 やはりと言うか、俺の方がお風呂は早かったらしく、フロントで鍵を貰って部屋に戻る。
 ホテル内は、Wi-Fiが完備されているので、SIMカードを抜いた状態でスマートフォンを起動させて、Wi-Fiに繋ぐ。流石にこのホテルに山本さん関係者はいないだろう……

 今回の事が、事件化に成っている訳は無いはずだが、地元のニュースサイトを見て調べてみる……

(別に何も起きてないな…)
(当たり前と言えば、当たり前だが…)

 Wi-Fiに繋いでいるから、Rail等のアプリも普通に使えるが……

(稀子のRailのIDは削除されてしまったから、稀子とは連絡が取れないし、俺の番号から掛けても着信拒否の状態だろう…?)

(そうだ! ホテルからの電話で、稀子の番号に掛ければ稀子は出るはずだが…、そう成ると山本さんに筒抜けに成るか)

(山本さんと稀子が本当に仲が良いのなら、稀子と連絡を取る事は自殺行為だ!)

『コンコン♪』

 頭の中でそう思っていると、ドアをノックする音がする。
 俺は間違い無く鈴音さんだと思うが、ドアの覗き窓で確認する。

(間違いない! 鈴音さんだ!!)

 俺は、チェーンロックとロックの解除をしてドアを開ける。

「ふぅ~、良いお湯でした♪」

 鈴音さんはそう言いながら部屋に入る。
 鈴音さんは、自分が寝るベッドに腰を下ろす。

「後…、数十分で食事かな?」

 俺は部屋の壁時計を見ると、18時40分で有った。
 晩ご飯の予約は、19時で予約した。

「比叡さん…。お食事はどんなのが出るのですか…?」

 鈴音さんも食べるのが好きなので、メニューを聞いてくる。

「此処の晩ご飯は、日替わり定食のみなんですよ!」
「やっぱり、連泊する出張者向けの作りですね…」

「日替わり定食ですか?」
「それはそれで、楽しみですね♪」

 鈴音さんや稀子も、好き嫌いは無さそうな感じで有った。
 日替わり定食だし、値段も相応なので過度な期待はしない方が良い。
 晩ご飯の時間も近づいてきたので、レストランと言うべきか食堂に向かう。

 ……

「うぁ~、結構ボリューム有りますね♪」

 鈴音さんは声を上げる。
 今日の日替わり定食はメインが一口カツ、玉子サラダ、マグロの刺身、筑前煮。そして、ご飯と味噌汁、漬物で有った。
 男性宿泊客が多い所なのだろう。栄養のバランスも有る程度考えられているし、量もそこそこ多い。

 今日は週末の土曜日だから、サラリーマン姿は殆ど見えないが、逆に1人旅をしている方や、意外に高齢の夫婦もいて、中々不思議な状況で有った。

「じゃあ、いただきますの前に……ビールを頼んでも良いですか?」
「鈴音さん…」

 本当は敵襲に備えて(!?)酒を飲まない方が良いのだが、一口カツやマグロの刺身を見ると飲みたく成ってしまう……。鈴音さんの反応は……?

「比叡さんも疲れたでしょう!」
「この時間だけは、リラックスしましょう♪」

 優しい笑顔で言ってくれる鈴音さん。
 俺は生ビール。鈴音さんはウーロン茶を注文する。
 程なくすると、生ビールとウーロン茶が運ばれて来る。

「じゃあ、乾杯~」

「乾杯~~♪」

 お互いのジョッキを鳴らして晩ご飯が始まる……
 今日1日の中で、一番心が落ち着く時間に違いないだろうと感じながら、俺はビールに口づけた。
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