偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第90話 朱海蝲蛄 【比叡】 その9

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 比叡と鈴音の状況……

 下山をして、公共交通機関を利用して海辺の方に向かう。
 海辺と言っても工業団地が有る方向だ。夜の工業団地もおもむきが有って良いのだが、今夜は絶対に、出歩かない方が良いに決まっている。

 乗り継ぎの連絡は上手に行かなかったが、夕方の17時半前にはホテルに無事到着をする。
 今日の宿泊先はビジネスホテルだが、最近のビジネスホテルは朝食バイキング等、食事もしっかりしており、サラリーマンだけで無く、一般的なカップルや家族連れも利用が多い。

 しかし今日、俺と鈴音さんが泊まるビジネスホテルは、本当にサラリーマンと言うべきか出張者向けのビジネスホテルだ! 
 付近には、有名企業の工場が建ち並んでいる。

 何故……其処を選んだ理由だが、俺は当然、金銭的な余裕は無い。
 本来なら鈴音さんと温泉旅館に泊まって、露天風呂や旅館自慢の料理に舌鼓を打ちたい所だが、そんなお金は無い。

 本来は全額俺が出すべきだが、鈴音さんがそれを嫌がって、全てが折半に成った。
 旅行当日の支払いは全部俺が出すが後日、鈴音さんが半額払う事に成っている。

『親友同士なんだから、当然です!』

 と言われてしまったら、どうしようも無かった……
 鈴音さん中での俺の関係は、親友以上恋人未満の関係で有った。
 稀子も鈴音さんも慎重派なのか、男をもてあそぶ事を知らないのか、どちらなんだろう?

 騒丘そうおか駅近くのビジネスホテルでも良かったが、駅前で有るから宿泊料金も高いし、夕食は無い所も多いので、晩ご飯は外食するか持ち込まなければ成らない……
 今日泊まるビジネスホテルは、名前こそはビジネスホテルだが……実際は旅館に近い感じだ。

 晩ご飯も希望出来て、何が出て来るかはその日次第だが、日替わり定食(のみ)が有って、晩ご飯と朝食がホテル内で食べられる。
 旅館で無くビジネスホテルだから、もちろんベッドで寝られる。
 それで料金が、駅前のビジネスホテルと同等なので、こちらの方が遙かにお得だ!
 到着して改めて見てみるが…、華やかさも少ないし、建物は少々古く感じるが……

「比叡さん……。ここが今日の宿泊先ですか?」

 俺は先ほど自慢げに言ったが、鈴音さんは少々引いている感じだった。
 俺は『ホテル』としか言ってないから…。そう成るわな……

「鈴音さん。ごめん!」
「予算の関係と一泊2食付だと、良いなと思う所がここ位しか無くて…」

「想像していたのと違いました…」
「私はてっきり、○横ホテルとか、○パホテル等のシリーズだと思っていましたから…」

(しまったな……鈴音さん。完全に引いている!!)
(理解してくれるかなと感じていたが、やはり鈴音さんも女性だったか!!)
(でも…、今から別ホテルの探すのは絶望的だぞ…。ラ○ホテル位しか無いぞ!?)

 これが稀子なら『ぶ~~、ぶ~~』言うに決まって居るだろうが、鈴音さんも厳しかったか……

「一泊2食付のホテルの割に、宿泊料金も高く無さそうなので、不思議とは感じてましたが……。そう言った事なんですね…!」

 鈴音さんは目を瞑りながら、手を顎に添えて言う。
 もしかして……怒ってますか?
 鈴音さんはゆっくり目を開きながら言う。

「比叡さん…」

「はい…」

「それならそうと、言って下されば良かったですのに~~」

 鈴音さんは微笑みながら言う。

「比叡さんが、一泊2食付きのホテルとしか言いませんでしたから、私の中で過度に期待してしまいました!」

「予約や場所も、比叡さんが調べましたし、そう言う事だったのですね♪」

「えっと……怒ってないんですか、鈴音さんは?」

「私は怒っていませんよ!」
「少し期待外れと言われればそうですが、宿泊料金と食事付きなら納得出来ます!」

「それに今は、逃亡生活も加わってますから、益々それらしく成りましたね♪」

「あはは……それは///」

 鈴音さんは、こんな状況下で有るのに旅行を楽しんでいる。
 本当に肝が据わった人だ。俺ならキャンセル料を払って、何処かに高飛びして居る筈だ!
 逃げても逃げ切れないと思うが……

「じゃあ、チェックインしましょうか…」

「そうですね♪」

 ホテルに入って、フロントでチェックインを済ませて部屋の鍵を貰う。
 部屋は3階なので、エレベーターに乗って部屋に向かう……

 室内は普通のビジネスホテルの感じだ。
 部屋の両側にベッドが置いて有って、小さな机とテレビが置いて有る。
 トイレと洗面台も室内に備わっている。
 入浴に関しては室内にシャワー室は無くて、ホテル内の大浴場だけで有った。

 鈴音さんは部屋に入って落ち着く暇無く、室内に有る固定電話の受話器を取る。
 鈴音さんは実家に電話を掛けて、いよいよ助けを求める……
 しかし、鈴音さんは声を出す事無く……受話器を静かに戻す!?

「今……実家の方に掛けましたが、留守番電話に成っています」
「私の両親は、何処かに出掛けている可能性が高いです…」

 鈴音さんはそう言う……

「鈴音さんの両親のスマートフォンに掛けてみたらどう?」

「両親の電話番号は、スマートフォンの電話帳に保存されています」
「出来れば……、スマートフォンの電源は入れたくないです」

「それに私のは、SIMカードと連動が掛けて有りますので、SIMカード無しでは起動は出来てもロックを解除出来ません…」

「う~ん」
「困ったな…」

 山本さんが、どれだけの力を持っているかは不明だが、今ここでSIMカードを挿入して電源を入れて、起動完了したら直ぐに機内モードにしても、その間の数十秒間、電波が発信されてしまう。
 山本さんが本当に通信会社の人を使って、調べていたら場所が分かってしまう!

「比叡さん。今晩だけは、耐えなければ成りませんね…」

 明日に成れば、山本さんのお母さんも帰って来る筈だし、鈴音さんの両親とも連絡が取れる筈だ。
 ホテルから外に出るつもりは無いが、周辺に警戒をしながら、一晩過ごす事に成りそうだった……
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