偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】鈴音編

第80話 気付かれてないはずだが…… その1

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 鈴音の心境……

 私が、比叡さんを受け入れた理由。
 それは……孝明さんが余りにも横暴すぎて、稀子さんも孝明さんが本当に好きなのが嫌と言う程、今回判ってしまったから……

 今の私はまだ、孝明さんとは恋人関係を解消していない。
 比叡さんは私との関係を本当に深めたい様だし、私も孤立するのが嫌だった……
 比叡さんは気を遣ってくれるし、孝明さんと比較すれば頼りが無いけど……、困っている人を見捨てた孝明さんには、愛想が本当に尽きそうだった……

 これだと私は、不倫をしている事に成る。
 良くは無いと私でも感じるけど、何故か比叡さんを助けたい気持ちが強い。
 困っている人を見捨てられないから?

 でも……私は、本当に孝明さんが好きだろうか?
 きっと、比叡さんの気持ちを受け入れたのは、孝明さんや稀子さんに対する、私からの仕返しかも知れない……

 ……

 翌日……

 俺は本当にアルバイト(長居鉄工所)先が辞めさせられたかを確認するために、何時も通りの時間に長居鉄工所に向かう。
 この時間帯は誰も居ないはずの事務所だが、今日は社長が事務所に居た。

「社長……おはようございます」

 社長が普通に挨拶を返してくれば、山本さんがまだ、連絡をしていない事に成るが……

「あぁ……おはよう」
「……山本から聞いたよ」

(あっ、やっぱり連絡は行っていたか?)
(仕事が早いな……)

「青柳君……。保育士養成学校の選考に落ちて、地元に帰るそうだな…」
「落ちてしまったのは残念だが……両親が、急に帰って来いと言われたそうだな!」

「えっ!?」

(山本さんは社長に嘘を付いて、俺を辞めさせたのか!)
(保育士養成学校の不合格は事実だが、それ以外は嘘だ!!)

「……なんだ! 違うのか!?」

「いえ…」

「まぁ、話しにくい事情だとは思うが、出来れば青柳君の口から、言って欲しかったな…」
「青柳君も社会人なんだし…」

「すいません……社長」

 俺はここで事実を言っても良かったが、それを言うと社長は直ぐに、山本さんに連絡を取るだろう……
 そうなると自体は余計にややこしく成るし、どちらにせよ、俺はここで働き続ける事は出来ないだろう。

「それで、何時帰るのだ?」
「直ぐでは無いのだろ?」

「……今月末です」

「そうか……」
「せめて、今週末までは働いて欲しかったが、山本から『無理はさせないでくれ!』と言われてしまったからな。そうで無ければ働いて貰いたかったが……」

「自分的には大丈夫ですか…」

 出来ればお金を稼ぎたい。今後無事にアルバイト先が見付かるかは不明だからだ。

「なら、お願いしようと言いたいが……山本にバレると五月蠅いからな」

 社長はそう言ってため息をつく。

「青柳君の作業着は、元々中古だったから返して貰わなくても良いが、安全靴だけは君専用の物だから、悪いけど買い取って貰うよ」
「本当は支給だが、君は期間が短すぎる」

「あっ、はい…。それでお願いします」

「代金は今月分のアルバイトから天引きするから。頼むよ」

「分かりました…」

「それで……給料明細は郵送しようか?」

「えっ!?」

「えっ。じゃないだろう!」
「来月の給料日にうちに取りにくれば別だが、態々明細だけ取りに来るのも大変だろう」

「たしかに……」

「君の実家の住所を教えてくれれば、其処に送るから!」

(実家に送って貰っても困るな…。それに俺は、まだこの近くに住むつもりだし)

「社長。大丈夫です。来月取りに来ます!」

「良いのか?」

「はい。大丈夫です!」

「分かった…」

 少し不思議な顔していた社長だが納得してくれた。
 身辺整理と言っても、安全靴を持って帰る位で有る。他の私物は無い。
 社長とお世話に成った専務。安井さん今までのお礼を言って、長居鉄工所を後にする。

(流石……山本さんだな)
(社長も山本さんには言えないか…)

 俺はアパートに戻り、次のアルバイト先を探し始める。
 今の所、山本さんの御陰で格安の家賃だが、今度住む場所はそうでは無いだろう……

 今後の事を考えるとアルバイトでは無く、有る程度の期間は、派遣社員等でしっかり稼いだ方が良いかも知れない。
 しかし、まだ新しく住む所も決まっていなし、引っ越しの準備もしなければ成らない。

 そのため、新しい場所が決まるまでは超短期アルバイトで、生活費を稼ぐしか道は無かった……
 スマートフォンで求人情報を閲覧していると……

(ここに応募してみるか?)

『交通量調査』のアルバイトが目に付いたのでそれに応募する。
 時給も“そこそこ”良いが、1日中立ち仕事と成るため大変そうだが、給料は日払いだし、期間も数日間の超短期だから、今の俺には打って付けだった。

(アルバイトの方は、超短期バイトを中心にやっていこう!)

 その後出来た時間は、直ぐに引っ越しが出来るように荷造りを進めていく……

 ……
 …
 ・

 毎夜と言う訳では無いが、鈴音さんは俺の家に来てくれた。
 大抵が、晩ご飯を持って来るだけだが、それでも好きな人に会えるから嬉しかった。
 鈴音さんも嬉しそうに話してくれるので、本当の恋人関係の状態でも有った。

 俺が山本さんに追い出されてからの、鈴音さんの気持ちは、完全に俺に振り向いた様で有って、毎晩の様に電話をするように成った。
 本当は鈴音さんと遊びに行きたいけど、稀子や山本さんの目が有るため厳しい……

 そして…、聞きたくは無かったが、稀子と山本さんの関係はかなり深まったらしく、鈴音さんが山本さんの眼中に、完全に消えているらしい。
 しかし、向かうから別れ話は切り出されて無いので、表面上だけは恋人関係で有った。

 今晩も電話口で鈴音さんの話を聞きながら、鈴音さんを恋人したい気持ちが、日に日に強くなっていった……
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