偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
79 / 434
【R-15】鈴音編

第77話 最悪の展開 その3

しおりを挟む
 それから、しばらくの時が過ぎた……

 山本さんと鈴音さんの関係は中々改善しなくて、重苦しい日々が続いた。
 その中でも、稀子は山本さんと関係を深く出来た様で、2人で楽しく過ごしている光景も、度々見るように成った。

 俺はそれを見かける度に、鈴音さんの気持ちも考えてと言うが稀子は『普通に喋っているだけ! 比叡君はりんちゃんを凄く心配してるけど、鈴ちゃんの事、実は好きなの!?』と逆に反撃をされてしまった……

 俺は思いきって、山本さんに鈴音さんの事を話したら『…比叡君には、関係無い事だ!』とやはりと言うか一蹴されてしまった……
 本当に時が解決するまで待つしか無いと思っていたが、俺に大ピンチが先に来てしまった!!

 保育士養成学校の入学選考が不合格に成ってしまった。
 こんな重苦しい雰囲気の中で、更に俺の不合格を発表したらどうなるのか!?
 それでも、事実だけは報告しなければ成らないので、その日の夜。みんなの前で発表する。

 ……
 …
 ・

 結果は最悪だった…。こんな結末が有るなんて……
 山本さんは俺を見限り、今日付でアルバイトは終了。晩ご飯の提供も終了。更に今月末までに荷物を纏めて、この町から去れと言われた。
 俺は弁解も出来ずに、最後は追い出される様に山本さんの家から追い出される!!

 俺が呆然と山本さんの玄関を見ていると突然、玄関が開く。
 玄関から出て来たのは稀子だった! 俺を助けに来てくれたのか!!
 いや……稀子の表情が暗い。どうした?
 稀子は俺の側に近づいて、こう言い放つ。

「……今日でお別れだね!」

「ちょっと、稀子ちゃん!」
「今月末までは、2週間位まだ有るよ!!」

「それは、比叡君……ううん、青柳さんがこの町にれる時間でしょ!」

(稀子の奴……君付けから“青柳さん”と他人行儀に成りやがった!)

「私……青柳さんを信用して良いのかなと、ずっと思っていた!」
「学校にも行ってないから時間も沢山有るのに、昼間しか働かないで、夜はお酒飲んで……比叡君が本当に夢を追いかけているのかと、私は疑問に思っていた」

「でも、今日。分かった……。神様はきちんと見ているのだなと!」
「夢を追いかけられない人なんか、私は要らない!!」

「稀子ちゃん。それは……俺と別れようとの意味か?」

 俺がそう言うと、稀子は急に顔をしかめる。

「別れよう…?」
「青柳さんとは恋人関係には成ってないのに、何自惚れているの!!」

(このクソ女……。俺が保育士養成学校の入学選考に落ちた瞬間にこれか!!)

「私が言いたいのは、青柳さんと縁を切る事!」
「もう……電話番号も着信拒否にしたし、Railもアカウントを消した!」
「バイバイ…」

 稀子は言い終えると、家に戻ろうとする。

「ちょっと、稀子。俺を見捨てないでくれよ!」
「俺は稀子のために、前住んでいた町を捨てて、この町に来たんだよ!」

「はぁ?」
「何言ってるの! 青柳さんが勝手に来ただけでしょ!!」
「私から頼んだ覚えは無いよ?」

 稀子は完全に俺を見下しながら『私は悪くない!』の表情で喋っている。
 俺をクビした、中年女性上司と被ってしまう。

「この野郎~~」

 俺は思わず拳を握りしめてしまう。

「何? 私を殴る気?」
「殴っても良いけど、二度とこの町から出られなくなるよ!」

(稀子…。それは死を意味する意味か?)

「せめて……落ちた時の対策をあの時に言ってくれれば、私も助けたのに…」

 先ほどまで山本さんと話し合いをした時、不合格時の『対応策』を聞かれたが、俺はそれを考えては無かった……。結果的にこの結果に成った。

「青柳さんは人生を甘く見ている!」
「そんな人を異性としては見られないし、親友関係でも今後持ちたくない!」
「私も何故……この人が良いと思ってしまったのか、後悔している!!」

「そこまで言うか、稀子……」

「言っても、判らないと思うけどね!」
「判っていれば、もう少し考えていた筈!!」

「これ以上話すと気分が悪く成るから、さようなら!」

 稀子はそう言うと、体の向きを変えて玄関に入っていった。

「俺が何をしたと言うのだよ…」

 ここで山本さんが居なければ、俺は確実に稀子を殴っていた。
 殴って気絶させて、俺のアパートで強姦して、最後は証拠を隠していたかも知れない……
 今の心境は、憎悪が溢れかえっていた。ここまで馬鹿にされたのも初めてだし、殺意を持ったのも初めてだ。
 山本さんの護衛の御陰で、稀子が助かった者だと言っても過言で無いはずだ!

 俺は怒りを抑え切れないままアパートに戻る。
 どうせ退去するのだから、暴れて壁に穴を開けたりもしたかったが、弁償の事考えると出来ない……小心者だ。

 気持ちを落ち着かせるため、シャワーを浴びて気持ちを落ち着かせる。
 気持ちが段々落ち着いてくると、怒りで見えなかった、絶望が少しずつ見えてくる。

(夢も失い、稀子も失った…)
(町から追い出されて、帰る場所も無い……。貯金も二十数万円…)
(引っ越し業者は使えないな)

 現実がはっきり見えてしまったので、シャワーを浴びるのは止めて浴室から出る。
 冷蔵庫の中には宅飲み用で買った発泡酒が有るので、発泡酒で少しでも気分を高揚させる。

(ここの大家に掛け合って、再契約をするか?)
(でも、大家も山本さんの知人の筈だから拒否されるよな…)

(いっそ……市役所に駆け込んで、保護して貰うか?)
(……でも、山本パワーでまず握りつぶされるな!?)

(実家に戻るしか無いが、両親は受け入れてくれるか?)
(あの時……稀子の気持ちを馬鹿みたいに応えるのでは無かった……)

 俺は後悔しながら酒を飲んでいると、玄関のインターホーンが鳴る。
 山本がお礼参りに来たか!!

 玄関のぞき窓を見ると……何とそこに居たのは鈴音さんだった!!
 俺は急いで、玄関のロックを解除して玄関を開けた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...