偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
68 / 434
稀子編

第66話 最後の望み その1

しおりを挟む
 家に戻った俺は、早速スマートフォンを使って、保育士の通信講座を検索して調べてみる……

※保育士通信講座に関する文章及び保育士試験内容はフィクションです。
 この文章を絶対に鵜呑みしないで下さい!
 興味を感じた方は、自主的に調べて下さるようお願いします。

「成る程……。通信講座なら、養成学校に通うよりも、遙かに金額は安くは抑えられるのか…」

 俺は保育士講座の紹介内容を見ている。

「筆記試験に合格しないと実技試験が受験出来ない…」
「筆記試験も8教科9科目有って、各正解率が60%以上か…」
「筆記試験はマークシート方式だから、最悪は山勘も使えるけど…」

 筆記試験はテキスト等が有るから出来ない事は無いが、通信講座で保育士の資格取得はかなり厳しい感じだ。

「仮に筆記試験が合格しても、実技の壁が高すぎる……」

 保育士試験の実技試験は3つ有って、その内の2つを任意に選択出来る。
 音楽に関する技術。造形に関する技術。言語に関する技術。
 保育士養成学校なら、上記の課題を練習をする場所が有るので問題が無いが、通信講座だとその場所が無い。

「う~ん」
「通信講座なら今すぐ申し込めば、今から勉強は出来るが、それを山本さん達が許してくれるか?」

 通信講座は、自分の意思で勉強をしなくては成らない。
 学校なら時間に行って、時間に成ったら終わりだけど、通信講座は何時でも勉強出来る代わりに、自分自身の戦いに成る。
 先生も居ないから、分からない事はネットを使えば良いけど、全ての問題が解決できるわけでは無い。

 更に通信講座を受講しているからと言って、身分が『学生』に変わる訳では無く、俺の場合だとアルバイトの扱いに成る。
 保育士試験も年に2回しか無いし、受験料も1万円以上掛かる。
 軽く調べた感じでは、俺が1回の試験で筆記・実技試験に合格する確率は0%だろう……。1発合格等、絶対に出来ない事が分かってしまう……

「稀子が本当に児童福祉系の大学や専門学校に行けば、まだ道は有るが、それでも必ず合格出来る訳で無い…」
「筆記はどうにか成るとしても、実技試験がどうしようも出来ない……」

 俺は音痴だし、手先は不器用だし、表現力も弱い……
 独学で、実技試験の対応は絶対に出来ない。

「このまま……この町を去るしか無いのか…?」

 わずかな希望は見つけ出したが、本当にわずかな希望のため途方に暮れる。
 その時、玄関のインターホーンが鳴るのでびっくりする!

「!!!」
「山本さん……もう、晩ご飯代の返金に来たか?」

 俺は玄関の覗き窓から、誰かを見てみる。
 すると、インターホーンを鳴らしたのは稀子だった。玄関の鍵を開けてドアを開く……

「比叡君が心配で、来ちゃった……」

 稀子は、はにかんだ笑顔で言う。

「入って…」

 俺は稀子を部屋に招き入れる。稀子がこちらに来るまでの間に、俺は押し入れから座布団を取り出して、俺の向かい置く。稀子は部屋に入り、その座布団に座る。

「比叡君の家に来るのは2回目だね」
「こんな雰囲気で、来たくなかったけど…」

「…心配してくれてありがとう」

「いえ、いえ」
「……比叡君。本当に帰るの?」

 稀子の表情が急に変わる。

「帰りたくは無いよ…」
「稀子ちゃんと離れたくは無いよ」

「私も比叡君とは離れたくは無いけど、山本さんが引き離しそう…」

 稀子は悲しそうな表情で言う。

「俺も何とか出来ないか調べてみたら、通信講座の方法を見つけたんだ」

「通信講座?」
「学童保育の道は諦めて、何かを勉強するの?」

「あっ、通信講座でも保育士に成る勉強は出来るんだ」

 俺はそう言って、先ほどまで見ていた、保育士通信講座のサイトを稀子に見せる。
 同時に、さっき見た事を稀子に説明する。

 ……
 …
 ・

「うん!」
「良いじゃん! 比叡君!!」
「これで行こうよ!!」

 稀子は一気に笑顔に成って、話し掛けてくる。

「でも……保育士養成学校と比べれば、かなり非現実的なんだ…」

「そんな事言ったって、やるしか無いよ。比叡君!」
「通信講座でも、資格が取得出来れば同じなんだから!!」

「はい! 比叡君。ここでクイズです!!」
「山本さんのお店は、何屋さんでしょう?」

 稀子は『りんちゃんクイズ』見たいに、またクイズを出してくる。

「何屋さんって、屋号やごうは鞄屋だけど、実際はランドセル屋でしょ…」

「ピンポン、ピンポン♪」
「大正解~~」

「じゃあ、次のクイズ!」
「ランドセルを背負う子は?」

「稀子。馬鹿にしているの! 小学生だよ!!」

 俺は苛立ちながら答える。
 しかし、稀子は擬音を出さない。

「比叡君…。小学生に上がる前の子達は何て言う?」

「幼稚園児か保育園児だろ!」

「……?」
「……!!」

「気づいた比叡君?」

 稀子は満面の笑顔をする。

「稀子ちゃん。そう言う事か!!」

「そうだよ! 比叡君!!」
「山本さんのお店に来るお客さんは、幼稚園児や保育園児の親御さんだよ!」

「山本さんが子ども関連に顔が広いかは分からないけど、きっと比叡君を手助けしてくれる人は居るはずだよ!」

 言われてみれば盲点だった……
 ランドセルを初めて背負う子。ランドセルを買いに来る親子連れ。その子どもの姿を……何で、俺は其処に気づかなかったのだろう?

「この町にランドセルを販売しているお店は、ショッピングモールを除けば山本鞄店しか無いからね!」
「地道な努力をすれば、きっと叶うはずだよ!」

「……一か八かやってみるか!」

 俺がそう決意をした時、俺のスマートフォンに着信音が流れる。
 着信名を見ると鈴音さんからだった。俺は鈴音さんの電話に出る……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...