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稀子編
第65話 選考結果…… その2
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「保育士養成学校から、今日……選考結果の結果来まして…」
俺がその言葉を言った瞬間……みんなの表情が俯く。
俺が不合格と言わなくても分かるからだ。
「……そうか」
山本さんはそう言って、コップに入っていたビールを一気に飲み干す。
「残念でしたね……比叡さん」
「比叡君。そうだったんだ…」
みんな、掛ける言葉が見付からないのだろう。
山本さんのお母さんは、俺がその言葉を言った時、無表情で見つめていたが声は掛けては来なかった。
「比叡君……。ご飯時だけは楽しく食べよう!」
「結果は残念だったが……晩ご飯後に、その辺の事も話そうか?」
山本さんはそう言う。
「あっ、はい……」
誰だって、しょっぱい雰囲気の中で食事は取りたくは無い。
その後、山本さんは何時も通りの口調に戻って食事は再開される。
稀子や鈴音さんも、俺の発言直後は暗い表情をしていたが、所詮他人事何だろう。俺だけを取り残して、普段の食事風景に戻っていた。
俺も暗い表情をしていたら、ご飯は美味しくは無いので、成るべく美味しく感じる様に良く噛んで、大好きなハンバーグとサラダを食べた。
晩ご飯後……
普段なら少しの談笑をして、後片付けを手伝ってアパートに戻るのだが……
「比叡君。稀子ちゃん」
「リビングで話をしようか?」
みんなが食べ終わったと同時に、山本さんはそう言う。
「えっ…!? 後片付けは?」
「…母さん、鈴音。済まんが、後片付けを頼む!」
「俺は今から、比叡君と今後の事を話し合わなければ成らない!」
山本さんはそう言うと2人は無言で頷く。山本さん、俺、稀子はリビングに移動をする。
3人はソファーに座り、山本さんは話を切り出す。
「比叡君……。不合格に成ってしまったのは残念だが……、君はこれからどうする?」
「……」
俺は山本さんに言われても、直ぐには言葉が出てこない。
稀子も暗い表情をして『ジッ』とソファーに座っている。
稀子はどうやら、中立の立場を取る様だ。
「酷な事を言うが……君が、この町に留まる理由は今日付で無くなった!」
「保育士養成学校も、この町から通える場所はあそこしか無いからな…」
「それで……君の今後の予定を教えてくれないか…?」
保育士養成学校の選考に落ちてしまった所為で、山本さんの態度も変わってしまう!
この話し方は、稀子を前の家に泊めさせる交渉をした時に、言われた口調と同じだからだ!
山本さんは、今回の件で俺を見限るのか!?
「……すいません。直ぐには考えが纏まらないです」
俺は素直に思った事を口にするが……。山本さんの口調は冷たかった。
「そんな訳無いだろう…?」
「君は……絶対に受かると高を括っていたのか?」
「……」
ここで山本さんはため息をつく。
「それだったら……君、世の中舐めすぎだよ」
「君は落ちた時の事を、考えて居なかったのか…?」
「……」
図星で何も言えない……
保育士養成学校説明会で個人面談を行ったが、学校側の印象は良かったし、作文も稀子や鈴音さんに添削して貰っている。絶対に受かると思っていた……
「何だ……本当なのか!?」
「君って奴は……ふぅー」
「何も対応策が出来て無い奴を、これ以上助ける必要は無いな…」
「今すぐ、君の実家に戻りなさいと言いたいが、荷造りが有るから急には無理だろう?」
「アルバイトも今日でお終いだ! 社長には明日、僕から言っておく!!」
「今月末で、この町から去ってくれ。比叡君……」
遂に山本さんは俺を見限った!
俺が今更“おめおめ”と実家に戻っても、両親は俺を受け入れないだろう。
不幸のどん底から這い上がったのに、また奈落の底に突き落とされた。
この世に神が居るなら全力でぶん殴りたい!!
「……返事をしてくれないのか?」
「まぁ……良い」
「後、半月ばかりだが、悔いが無い様に楽しんでくれたまえ!」
山本さんはそう言ってソファーから立ち上がると、今まで黙って聞いていた稀子が声を発する。
「山本さん!」
「それでは、比叡君がかわいそ過ぎるよ!」
「可哀想…?」
「リスクを考えない馬鹿に、可哀想なんか無いよ!」
「!!」
山本さんは言葉を吐き捨てる。
「それに稀子ちゃん…。こんな人間好き成っても、稀子ちゃんが困るだけだぞ!」
「僕の知り合いに甲斐性が良い人が沢山居るし、稀子ちゃんと仲良くなりたい子も居る」
「そんな男見限って、俺の紹介する子と親睦を深めたらどうだい?」
「僕的には、絶対その方が良いと思うよ!」
「あんな奴と仲を深めても、稀子ちゃんが路頭に迷うだけだ!!」
山本さんは、稀子まで引き離そうとしている。
しかし、俺はそれに対して抵抗出来ない。
今この場で、山本さんと稀子を納得させる方法が無いからだ。
「くっ!!」
稀子は反論出来ないと思ったのか、リビングから飛び出してしまった。
稀子は部屋に戻ったのか?
リビングの引き戸をしばらく見ていた山本さんだが、俺の方に向きを変える。
「……稀子ちゃんも、リビングから出て行ったし、君も出て行ってくれないかな?」
「君みたいな、浮き草人生をしている奴を見ると反吐が出るよ……」
俺をゴミ見たいな目つきで山本さんは見る。
俺は黙って立ち上がり、引き戸を開いてリビングから出る。リビングから出る時に山本さんに言われる。
「食事の提供も今日で終了だ!」
「差額は明日の夕方。君の家に僕が持って行くよ」
食事の提供打ち切りまでして来た。何処まで追い詰めるのだ。このヤ○ザは!
それに対して山本さんのお母さん、鈴音さんは何も発しない。恐怖政治かよ!
誰も見送りが無いまま、俺は玄関から出る。
俺はまた、何もかも失おうとしている。
正直言って対応策が出てこない。
家からアパートまで歩いて5分の距離なのに、その距離がやけに長く感じる。
電柱防犯灯の下に新聞や雑誌類が置かれている。明日は資源ごみの回収日だろうか?
夜出しは、本当は禁止の筈なのに……。俺はそれを横目で見た通過しようとした時、縛られたチラシ類に目が行く。
『通信講座はイ○キャン!』
(通信講座か……んっ)
「!!!」
俺は有る事を思い出す。
保育士の資格取得は、大学や専門学校に必ず行く必要は無い。単位や履修時間が無いからだ。
自動車学校に行って免許を取得するのと、運転試験場で学科・実技の1発試験するのと同じで有る。
自動車学校が有利なのは当然だが、同じ様な事が保育士試験でも出来る。
学校経由の方が、遙かに敷居は低くなるが……
(たしか……通信講座でも、保育士資格取得の勉強は出来るはずだ)
(通信講座なら入学選考など無いはずだ!)
「これなら……俺は、この町に留まれるかも知れない!」
俺は実際に取得出来るかを確認するために、急ぎ足でアパートに戻った。
俺がその言葉を言った瞬間……みんなの表情が俯く。
俺が不合格と言わなくても分かるからだ。
「……そうか」
山本さんはそう言って、コップに入っていたビールを一気に飲み干す。
「残念でしたね……比叡さん」
「比叡君。そうだったんだ…」
みんな、掛ける言葉が見付からないのだろう。
山本さんのお母さんは、俺がその言葉を言った時、無表情で見つめていたが声は掛けては来なかった。
「比叡君……。ご飯時だけは楽しく食べよう!」
「結果は残念だったが……晩ご飯後に、その辺の事も話そうか?」
山本さんはそう言う。
「あっ、はい……」
誰だって、しょっぱい雰囲気の中で食事は取りたくは無い。
その後、山本さんは何時も通りの口調に戻って食事は再開される。
稀子や鈴音さんも、俺の発言直後は暗い表情をしていたが、所詮他人事何だろう。俺だけを取り残して、普段の食事風景に戻っていた。
俺も暗い表情をしていたら、ご飯は美味しくは無いので、成るべく美味しく感じる様に良く噛んで、大好きなハンバーグとサラダを食べた。
晩ご飯後……
普段なら少しの談笑をして、後片付けを手伝ってアパートに戻るのだが……
「比叡君。稀子ちゃん」
「リビングで話をしようか?」
みんなが食べ終わったと同時に、山本さんはそう言う。
「えっ…!? 後片付けは?」
「…母さん、鈴音。済まんが、後片付けを頼む!」
「俺は今から、比叡君と今後の事を話し合わなければ成らない!」
山本さんはそう言うと2人は無言で頷く。山本さん、俺、稀子はリビングに移動をする。
3人はソファーに座り、山本さんは話を切り出す。
「比叡君……。不合格に成ってしまったのは残念だが……、君はこれからどうする?」
「……」
俺は山本さんに言われても、直ぐには言葉が出てこない。
稀子も暗い表情をして『ジッ』とソファーに座っている。
稀子はどうやら、中立の立場を取る様だ。
「酷な事を言うが……君が、この町に留まる理由は今日付で無くなった!」
「保育士養成学校も、この町から通える場所はあそこしか無いからな…」
「それで……君の今後の予定を教えてくれないか…?」
保育士養成学校の選考に落ちてしまった所為で、山本さんの態度も変わってしまう!
この話し方は、稀子を前の家に泊めさせる交渉をした時に、言われた口調と同じだからだ!
山本さんは、今回の件で俺を見限るのか!?
「……すいません。直ぐには考えが纏まらないです」
俺は素直に思った事を口にするが……。山本さんの口調は冷たかった。
「そんな訳無いだろう…?」
「君は……絶対に受かると高を括っていたのか?」
「……」
ここで山本さんはため息をつく。
「それだったら……君、世の中舐めすぎだよ」
「君は落ちた時の事を、考えて居なかったのか…?」
「……」
図星で何も言えない……
保育士養成学校説明会で個人面談を行ったが、学校側の印象は良かったし、作文も稀子や鈴音さんに添削して貰っている。絶対に受かると思っていた……
「何だ……本当なのか!?」
「君って奴は……ふぅー」
「何も対応策が出来て無い奴を、これ以上助ける必要は無いな…」
「今すぐ、君の実家に戻りなさいと言いたいが、荷造りが有るから急には無理だろう?」
「アルバイトも今日でお終いだ! 社長には明日、僕から言っておく!!」
「今月末で、この町から去ってくれ。比叡君……」
遂に山本さんは俺を見限った!
俺が今更“おめおめ”と実家に戻っても、両親は俺を受け入れないだろう。
不幸のどん底から這い上がったのに、また奈落の底に突き落とされた。
この世に神が居るなら全力でぶん殴りたい!!
「……返事をしてくれないのか?」
「まぁ……良い」
「後、半月ばかりだが、悔いが無い様に楽しんでくれたまえ!」
山本さんはそう言ってソファーから立ち上がると、今まで黙って聞いていた稀子が声を発する。
「山本さん!」
「それでは、比叡君がかわいそ過ぎるよ!」
「可哀想…?」
「リスクを考えない馬鹿に、可哀想なんか無いよ!」
「!!」
山本さんは言葉を吐き捨てる。
「それに稀子ちゃん…。こんな人間好き成っても、稀子ちゃんが困るだけだぞ!」
「僕の知り合いに甲斐性が良い人が沢山居るし、稀子ちゃんと仲良くなりたい子も居る」
「そんな男見限って、俺の紹介する子と親睦を深めたらどうだい?」
「僕的には、絶対その方が良いと思うよ!」
「あんな奴と仲を深めても、稀子ちゃんが路頭に迷うだけだ!!」
山本さんは、稀子まで引き離そうとしている。
しかし、俺はそれに対して抵抗出来ない。
今この場で、山本さんと稀子を納得させる方法が無いからだ。
「くっ!!」
稀子は反論出来ないと思ったのか、リビングから飛び出してしまった。
稀子は部屋に戻ったのか?
リビングの引き戸をしばらく見ていた山本さんだが、俺の方に向きを変える。
「……稀子ちゃんも、リビングから出て行ったし、君も出て行ってくれないかな?」
「君みたいな、浮き草人生をしている奴を見ると反吐が出るよ……」
俺をゴミ見たいな目つきで山本さんは見る。
俺は黙って立ち上がり、引き戸を開いてリビングから出る。リビングから出る時に山本さんに言われる。
「食事の提供も今日で終了だ!」
「差額は明日の夕方。君の家に僕が持って行くよ」
食事の提供打ち切りまでして来た。何処まで追い詰めるのだ。このヤ○ザは!
それに対して山本さんのお母さん、鈴音さんは何も発しない。恐怖政治かよ!
誰も見送りが無いまま、俺は玄関から出る。
俺はまた、何もかも失おうとしている。
正直言って対応策が出てこない。
家からアパートまで歩いて5分の距離なのに、その距離がやけに長く感じる。
電柱防犯灯の下に新聞や雑誌類が置かれている。明日は資源ごみの回収日だろうか?
夜出しは、本当は禁止の筈なのに……。俺はそれを横目で見た通過しようとした時、縛られたチラシ類に目が行く。
『通信講座はイ○キャン!』
(通信講座か……んっ)
「!!!」
俺は有る事を思い出す。
保育士の資格取得は、大学や専門学校に必ず行く必要は無い。単位や履修時間が無いからだ。
自動車学校に行って免許を取得するのと、運転試験場で学科・実技の1発試験するのと同じで有る。
自動車学校が有利なのは当然だが、同じ様な事が保育士試験でも出来る。
学校経由の方が、遙かに敷居は低くなるが……
(たしか……通信講座でも、保育士資格取得の勉強は出来るはずだ)
(通信講座なら入学選考など無いはずだ!)
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