偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
64 / 434
稀子編

第62話 稀子にプレゼント その1

しおりを挟む
 平日の朝……

 俺は何時も通りの時間に家に出て、アルバイト先に向かおうとすると、道途中で珍しく稀子と鉢合わせる。

「おはよう! 稀子ちゃん!!」

「あっ、おはよう~~。比叡君!」

 今日も稀子は元気に挨拶してくれる。
 朝食は自分の家で取っているので、稀子とは会えないが、こんな日も有るんだと感じる。

「今日は早いんだね?」

「うん!」
「今日は日直だから、少し早めに行くんだ!」

 日直……。懐かしい響きで有る。
 日直の時……学級日誌書くのや黒板消し。面倒くさかったな……

「じゃあ、比叡君!」
「今日は急いでいるから、また夕方ね♪」

 稀子はそう言って、少し小走りに学園に向かって行ったが……俺は稀子の有る部分が気に成った……

「稀子……腕時計は、付けて無いのか?」

 今の時代はみんなが、スマートフォンを肌身離さず持っているので、腕時計は要らないと感じるが……有れば有ったで便利で有る。
 俺のアルバイト先も、工場内には壁時計が掛かって居るが、腕時計が有れば、MC旋盤の1サイクル時間を逆算しながら、バリ取りが出来るので、安物だが腕時計をしている。

(稀子とは正式に付き合っている訳では無いが、そろそろ3ヶ月位は経つよな…)
(今月はアルバイト代も満額入るし、稀子にプレゼントでも考えてみるか…)

(稀子にプレゼントを贈れば、稀子も俺の気持ちが本気だと分かってくれるかも!)

 自分勝手の考えだが贈らないより、贈った方が良いに決まっている。
 稀子と関係を深めるためにも、稀子にプレゼントを贈る事を決めた。

 ……

 その日の夜……

 山本さんの家で晩ご飯を食べ終えて、アパートに戻った俺は早速、稀子のプレゼント選びを始める。
 アルバイト中に色々考えたが……実用性が有る物と、稀子が今、持って無さそうな物で腕時計にする事にした。

 スマートフォンでWebブラウザを開いて『学園生 腕時計』で検索すると、学園生の身なりに合いそうな腕時計が沢山出て来た……

(経済的な余力は無いから、数万円もする腕時計は厳しいな……)
(あっ、これ何かどうだろう?)
(値段も2万円未満だし……少し大人びたデザインだし!)

 俺はとある、海外有名メーカーの腕時計紹介ページを見る。
 今のお子ちゃまの稀子には、少し似合わない気もするが、稀子も立派な女性に成長するはずだ!?

(でも……文字盤はアナログか?)
(デザインは悪くないけど、実用性には乏しいが…?)
(でも、アナログだから大まかに分かるし、これで良いかな?)

 紹介ページには、Web通販のバナーも張られているので、これで決めようかと思ったが……

(しかし、稀子はこれを貰って本当に喜ぶかな?)
(受け取って貰えても、付けて貰えなければ意味が無いし…)

「!!」

「そうだ!」
「鈴音さんに聞いて見よう!!」
「鈴音さんなら稀子の事は知っているし、更に共に暮らしている」
「稀子の好き嫌いも分かるはずだ!!」

「折角、鈴音さんのRail(SNS)のIDも教えて貰ったし良い機会だ!」
「稀子のプレゼントに関する相談だから、山本さんにバレても、俺が咎められる事は無い!」

「稀子のプレゼント相談を鈴音さんとしただけです。と“キリッ”と言えば、山本さんも『ぐぬぬ…』の筈だ!」

 腕時計紹介ページのスクリーンショットを撮って、俺はRailアプリを起動させて、鈴音さんにコンタクトを取る。
 山本さんと2人の時間で無ければ、直ぐに返事は来るはずだ。

「鈴音さん。こんばんは」
「Railでは、初めてですね!」
「稀子の事で少し相談が…」

 文章を打ち込んで鈴音さんに送信する。
 直ぐには返信は来なかったが、5分位過ぎた所で鈴音さんから返信が来る。

『比叡さん。こんばんは★』
『稀子さんで、何か有りましたか?』

「実は……稀子に腕時計をプレゼントしようと思いまして…」
「鈴音さんに相談に乗って貰えたら?」

『稀子さんに、腕時計をプレゼントですか!?』
『稀子さん。腕時計は以前壊れてから、持っていないから喜びますわ♪』

(成る程……稀子は、腕時計自体はしていたのか?)
(何で買わないのだろう?)
(まぁ、こっちには、却って好都合だから良いや!)

「これを、プレゼントしようかと考えていまして…」

 俺は先ほど見ていた、腕時計紹介ページのスクリーンショットを画像送信に貼り付けて、鈴音さんに送信する。

(鈴音さんは、どう反応するのだろう?)

 直ぐには返信は来なかったが、しばらくすると返信が来る。

『比叡さん……この時計では、稀子さんは喜ばないと思いますよ…』

 まさかのまさか……鈴音さんにダメ出しを食らった!?
 俺も少し微妙かなと思っていたが、鈴音さんがダメ出しするのだから、この腕時計では稀子は喜ばないのだろう……

 稀子のプレゼント探しは振り出しに戻ってしまった!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...