偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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稀子編

第59話 桜の見頃! その2

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 公園内に入った俺と稀子。
 まずはメインで有る、公園中央に有る桜を見る。

「丁度、見頃だね…」

「本当!」
「今日来て…、良かったね。比叡君!!」

 稀子はそう言いながら、スマートフォンで写真を撮っている。
 また、鈴音さんに自慢する気かな?

 立派な桜の木の割には、園内に人は数人しかいない。
 近所の人達らしき人は来ているが、その公園で食べながらのお花見をするのは俺達位だった。

「比叡君!」
「3時のおやつには少し早いけど、おやつにしようか!!」

 ベンチも誰も座っている人は居ないので、誰かに取られる前に確保したいのだろう。
 俺と稀子は園内のベンチに座る。
 今日は和菓子が中心のため、ペットボトルのお茶で乾杯をする。

「楽しいお花見に乾杯♪」

 稀子の音頭で、俺と稀子のペットボトルを“くっつけて”乾杯する。
 ベンチの真ん中に食べ物を広げる関係で、稀子との距離は自然と出来てしまう。
 稀子は花見定番の桜餅等を食べずに、ホットスナックのフライドチキンをかじり付いていた。

「うん♪」
「外で食べると美味しいね~」

 年頃の子なのに、恥ずかしくないのかな?
 フライドチキンだから、口元は絶対に汚れるのに……
 俺は桜餅のパックを開けて、桜餅を食べる。塩漬け桜の葉のしょっぱさと小豆あんの相性が抜群で有る。

 俺は桜を見ながらゆっくり食べているが、稀子は花より団子の状態だ。
 稀子は花見団子を、桜を見ながら食べている。短時間でフライドチキン、桜餅、花見団子…。おやつの領域を超えている。
 食べ物は十分に買って来たから問題は無いはずだが、もう少しゆっくり食べれば良いのに……

 少し強い風が吹くと、桜の花びらが舞い散る……。俺はどちらかと言うと、散りかけの桜が好きだ。花吹雪に成る手前が一番好きだ!
 これが1週間遅ければ、桜は全て散っていただろう。稀子が誘ってくれたタイミングはぴったりで有る。

「比叡君…」

 稀子はお腹が満足したのか、食べる手を止めて俺に声を掛ける。

「保育士養成学校……合格すると良いね!」

「そうだね!」
「“サクラチル”だけは避けたいね…」

「でも、もしもだよ…。落ちてしまったらどうする?」

「まず、大丈夫だよ!」
「学校説明会で個人面談が有ったのだけど、面談をしてくれた方が『この世界に男性がいますと頼られますよ!』と言ってくれたし、面談自体も良い感じで終わったから、大丈夫だよ!」

「……比叡君が、自信満々なら良いけど…」

 俺はそう言ったが、稀子は少し心配している。
 しかし、保育士養成学校に行くのが一番の近道だし、代替先は無いはずだ。
 不合格に成ってしまうと俺は行き場を失うが、そんな事は起きないはずだ!

「それより、稀子ちゃん!」
「綺麗な桜だから、もっと楽しい話をしよう!」

 俺がそう言うと、稀子は『クスッ』と笑う。

「その辺の所は、山本さんに似ている!」
「比叡君も変な所では、押しが強いからね!」

 稀子はそう言う。
 変な所とはどんな所だ!?

「稀子ちゃん。ゴールデンウィークには何処か遊びに行きたいね!」

「行きたいけど、今年は変な連休でしょ!」
「山本さんからも話は聞いていないし。比叡君がどこか連れてってくれるの?」

 今年のゴールデンウィークは、飛び飛びに成っているので、纏まった休みは5月の3~5日の3日間で有る。これでは普段の3連休と同じで有る。
 俺のアルバイト先も、カレンダー通りの休みが基本だが、4月の後半土曜日と祝日は出勤日と成っている。

「本当はどこか行きたいけど、俺も学費を貯めたいから…」

「そうなるよね…」

 稀子は静かに呟く。
 今年のゴールデンウィークは、家での“のんびり”が中心となりそうだ。

「そう言えば、稀子ちゃんはお店手伝わないの?」

「お店って、山本さんのお店の事?」

「そう!」

「私も手伝おうとはしたんだけど、大丈夫、大丈夫と言われて…」
「山本さんもりんちゃんと関係深まったから、お店に関する事も覚えても意味が無いし、私は本当の居候だからね」

「鈴ちゃんもヘルプさんだったのが、いつの間にか看板娘に成っていて、鈴ちゃんもしょうが合っているから、手伝って居るって言っていたし!」

「その代わり、お料理当番は私が少し多めに成っているし、お風呂の準備とかも私の担当だから、私の中ではバランスは取れていると思うよ!」

「やっぱり……共同生活は大変なんだね…」

 俺がしんみり言うと……

「比叡君のお料理デビューは何時?」

「えっ、俺の料理!?」

「そうだよ!!」
「比叡君もこの生活に慣れてきたんだし、月1回でも良いから作って貰わないと!」

「本当に簡単な料理しか出来ないよ…」

「簡単でも、料理は料理だよ」
「生卵とお醤油出して『卵かけご飯!!』とかでは無いでしょ!」

「そんな事は流石にしないよ……」

「私は食べてみたいんだ♪」
「比叡君のお料理を!!」

「比叡君の家にお邪魔した時は、私が全部作ってしまったからね!」
「楽しみにしているよ!!」

 笑顔で言われてしまうと……どうやら近いうちに山本宅で、料理デビューは決定の様だ……

 引き続き少し雑談をしたが、風が冷たく成って来たため、お花見は切り上げて、山本さんの家に向かう。残った和菓子類は、持ち帰って後で食べる。

 晩ご飯の時間にはまだ早いが、山本さんの家で稀子と過ごして、今日の料理当番は鈴音さんだったが、お手伝いの関係で稀子に変更になったので、稀子の晩ご飯作りを手伝う事にする。
 久しぶりに、稀子と2人きりの時間が過ごせた……
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