偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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稀子編

第51話 労働の後の食事と言いたいが…… その2

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「それを知っていれば、みんなで旅行とかの計画も立てやすくなるし、知って置いて損は無いかなと思って」

 俺は稀子に、その様に理由を言うが……

「みんなで旅行…?」
「旅行は山本さんが、季節事に組んでくれるよ!」
「比叡君が旅行の予定を組んでも、私達の学園が休みの時なら、今の時期を除けば山本さん達は問題無いよ!!」

 稀子はそう言うが、俺が言いたいのはそう言った事では無い。
 鈴音さんが話しに入ってくる。

「まぁ、まぁ、稀子さん…」
「比叡さん純粋に、お店の時間とかを知りたいと思いますよ」

「そうですよね。比叡さん!」

「はい。鈴音さんの言う通りです」

「それならそうと、言えば良いのに…」
「比叡君が遠回し言うから、何でと思った…」

 確かに稀子の言う通りだった。

「比叡さん。じゃあ、お店の事お伝えしますね」

「お店の営業時間は、午前10時から午後6時です!」
「定休日は月曜日ですけど、月曜日が祝日の場合はその翌日」
「繁忙期で無い時期は、臨時休業も有ります。臨時休業に関しては、山本さんに聞いて下さい」

「販売の方は、山本さんのお母様とパートさんが対応して、私も時々手伝います」
「製造に関しては孝明さんが中心で行っていまして、お母様も製造を手伝う時が有ります」

「…こんな感じで良いですか?」
「比叡さん」

「あっ、はい……。ありがとうございます」
「ランドセルの製造に関しては、山本さん1人で行っているのですか?」

「えぇ、そうですよ!」
「でも、私も学園を卒園したら、その道に入るつもりですから、1人では無くなりますね!」

 鈴音さんは嬉しそうに言う。
 鈴音さんは本当に山本(孝明)さんが好きだと感じ取った。
 俺も回りくどい事は言わずに率直に『お店の営業時間と定休日を教えて下さい』と言うべきだった。

 ……

 聞きたい事を聞けた俺は、2人の晩ご飯作りの手伝いを申し出たが、鈴音さんに優しく断わられてしまう。
 理由を聞くと『今日は稀子さんが居ますから!』と当たり障りの無い理由だが、真相は不明だ。
 この時間にアパートに戻っても意味が無いし、昨夜の山本さんの事も有るからリビングで待たせて貰う。今日の晩ご飯のメインは、だ。

 時刻は19時少し前。山本さんのお母さんがリビングに入ってくる。
 山本さんのお母さんが入って来たと同時に、俺は挨拶をする。

「こんばんは」

「はい。青柳さん、こんばんは!」

 俺と挨拶を交わした後、山本さんのお母さんは自ら、鈴音さんと稀子の手伝いに入って行く。
 当たり前だが、自分の家の台所だから勝手が分かる。稀子や鈴音さんも特に何も言わない。

(こう見ると……、俺はやっぱりお客さんなのかな?)

 そう思いながら、稀子が付けてくれたテレビを見ていると、山本さんが入ってくる。

「山本さん、こんばんは!」

「おっ…今日は、早いじゃないか!」

「えぇ……。準備を手伝おうとして、少し早く来たのですが、人手は余っている様で…」

 俺がそう言うと、山本さんはダイニングの方に顔を向ける。

「……今日は、鈴音だから仕方無いか…」

 山本さんは何かを呟くと、俺の方に声を掛けて来る。

「準備は作るだけでは無いからな。後片付けだって有る!」
「比叡君がその辺を考えて、動いてくれれば良い」
「洗い物が多い日や、少ない日も当然出て来るからな!」

「何でも、毎日の積み重ねが大切だぞ!!」

 山本さんは俺の肩を『ポン』叩いて、鈴音さんに声を掛けに行った……

(やっぱり……手伝いは出来なかったけど、来た事自体は正解だったな…)
(これが昨日と同じ様に来ていたら、リビングから出る時にビール瓶で殴られていたかも知れない)

 今の時代に…、そんな事は起きないと言いたいが、相手が山本さんだ。
 あの人は自分の筋を通す人だ。今の社会ルールに、あの人は縛られてはいないだろう。
 稀子が“とことこ”とリビングにやって来て俺の隣に座る。

「比叡君。もうすぐ出来るよ♪」
「比叡君も知っていると思うけど、肉じゃがとナスの肉味噌がけと味噌汁だよ!」

「肉じゃが……家庭的な料理だね!」

「んっ…、比叡君はそう言った料理が好きなの?」

 稀子は伺う様な目で聞いてくる。

「好きと言うか食べ慣れた味だからね。安心すると言うか…」

「成る程! 比叡君は食べ慣れた味が好きな訳か!」
「じゃあ、今日肉じゃがを作ったのはりんちゃんだけど、今度は私が作るね!」

 稀子はそう言うが……別に、鈴音さんを意識して言った訳では無いのに。

「2人共、イチャついている所悪いけど、ご飯出来たぞ!」

 山本さんがダイニングから声を掛けて来る。

「ご飯だって!」
「行こう! 比叡君!!」

「だね。みんな待っているからね!」

 俺と稀子はソファーから立ち上がって、ダイニングに向かった。
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