偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
35 / 434
出会い編

第35話 稀子達と始める生活 その1

しおりを挟む
 俺が稀子達の町に着いたのは、14時を過ぎた位の時間だった。
 稀子達の住んでいる町の名前は『波津音市はずねし』と言う町に住んでいる。

 俺が何も無い駅に到着した時には誰も迎えには来てくれて無くて、仕方が無いので山本さんに電話をしたら『駅から、富橋とみはし駅行きのバスに乗って、中町のバス停で降りて! その後、電話してくれれば、迎えに行くから』の事だった。

 あの何も無い町の駅名は、大石十色おおいしといろ駅と言うみたいだ。
 あの時来た時は駅名なんて覚える気が無かったし、良くもまぁ『大石十色』行きなんて言う電車に乗ったもんだ。
 駅の名前の印象も残りそうだが、それよりも何も無かった駅の方がインパクトが強かったため、俺の頭の中では、何も無い駅で登録されてしまった。

 富橋駅行きのバスが来たので、バスに乗り込んで稀子達の町に向かう。
 バスは海沿いの道を走って行き、しばらくすると市街地に入って行く。これが波津音市の市街地なのか?
 市街地がバスの中を走って行くと『♪~次は中町です!』と機械音声が車内に流れる。
 俺は『次止まります』のボタンを押して、中町のバス停で降りる。駅から大体15分位の距離だった。
 バス停の名前からの感じがして、ここが町の中心部だと思うが地方都市の空気感が漂っていた。

 俺は心の中で『少し、下調べをすれば良かったかな…』と思ったが、もう突き進むしか無い。
 山本さんに電話を入れると、直ぐに迎えに来てくれるらしい。
 バス停目の前の道路は一応国道らしく、比較的交通量の多い道路だ。
 しばらくすると、徒歩で山本さんが現れる。

「ごめんね~。比叡君!」
「稀子ちゃん。学園の用事で抜けられなかったみたいで!」

「いえ、大丈夫です。山本さん」

「そっかぁ~。じゃあ、君の新しい家の案内と僕の家に案内するよ」
「僕の家には君の知っている通り、僕の母親と鈴音と稀子ちゃんが住んでいるから!」

「はい!」
「お願いします!!」

 俺は山本さんに付いていく。世間話を気軽にしやすい人でも無いから、ほぼ無言で付いて行く。
 国道から脇道に入り、5分位歩いて行くと古間ふるめかしい町が現れてくる。そうすると山本さんは立ち止まり、いきなり語り出す。

「本当は昔はここが、メインストリートだったけど時代の流れでね……、新しい道が整備されて、近くに大きなショッピングモールが出来てからは、すっかりさびれてしまったよ……」

 俺は山本さんの言葉を聞きながら周囲を見る。
 人は住んでいるようだが、歩いている人は居なくて、人の活気は全然見られない。
 道幅もそんなに広くは無くて、大型自動車トラックだとすれ違いは困難だろう…。お店屋さんと言うべきか、新聞屋さんと、後は和菓子屋さんが有る位だった。

「こんな町でも、僕はこの町が大好きでね。君も気に入ってくれると良いけどな…」
「なぁ、比叡君!!」

「……頑張ります」

「住めば良い町だぞ! 風情も有るし」

 山本さんは、そう言い終わると再び歩き出した。
 歩き出して、1~2分位で再び立ち止まる。 

「彼処に見えるのが……君の新しい家だ!」

 山本さんが指さす方向を見ると、また古間めかしい2階建て木造アパートが出て来た!?

「あれ、ですか……?」

「そうだけど、不満か…?」

 急に山本さんの口調が低くなる。

「いえ…、おもむきの有る住宅です…」

「まぁ、見た感じは悪いがな!」
「綺麗な住宅ももちろん紹介は出来たが、稀子ちゃんの行き往きいきゆきを考えたら成るべく僕の家から近い方が良いし、それに君も家賃を抑えたいだろう?」

「まぁ、その通りです…」

「今後、仮に稀子ちゃんと同棲とかの展開に成ったら、改めて良い物件を紹介するよ」
「しばらくは、ここで勉学に励みたまえ!」

「頑張ります…」

 俺はそう頷くしかなかった。
 俺の部屋は1階だが、一応角部屋だった。山本さんが鍵を開けて、俺も一緒に入る。
 部屋は1Kと言うべきなのか、6畳間の部屋が有って、玄関側に台所が有り、玄関側に面して風呂とトイレが有る。 部屋の横の境目は、壁では無く押し入れに成っている。

 それでも、多少はリフォームをしてくれたのか、壁紙は真っ白な壁紙が貼られており、畳も新品の匂いが部屋中に香っていた。
 見た目はボロ屋だが、内装は意外にしっかりしていそうなので、俺は山本さんに感謝するしか無かった……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...