偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
21 / 434
出会い編

第21話 2日目のおもてなし

しおりを挟む
 その日の夕食も稀子が作ってくれる。
 昨夜の常夜風鍋の残りスープに、和風顆粒出汁の素と醤油で味を調えてから、うどんを入れてうどんが温まってきたら、溶き玉子を入れてかき玉風にして、刻みネギをかけたうどんと、食費も山本さんから潤沢じゅんたくに頂いたので、奮発して刺身の盛り合わせ、白菜の漬け物で有る。
 うどんだけでは少し物足りないで白米(ご飯)も有る。

 2人で『いただきます』して、晩ご飯が始まる。
 稀子は未成年だし、俺も酒は一応飲めるが、稀子が居る手前飲まないでおく。
 俺は早速、刺身の盛り合わせに入っている、マグロの切り身を箸で掴んで、わさび醤油で食べる。

「うん。やっぱり、刺身は美味しいね!」
「冬でも、暖かい部屋で食べる刺身は最高だ!」

「そうなの?」
「じゃあ、私も食べよ~」

 稀子はブリの切り身を箸で掴んで、わさびは付けずに醤油だけで食べる。舌の方もまだ、お子様かも知れない……

「うん!」
「このブリ脂が乗っているね~~」
「これはご飯と合いそうだね♪」

 稀子はそう言いながら、刺身とご飯で食べている。
 人によっては、刺身と白米では食が進まないと言う人も居るが、本当にそんな人が居るのだろうか?
 俺も刺身とご飯で普通に食べられる。

 刺身の次は、昨夜の鍋のスープで作ったうどんで有る。溶き玉子が入っているので、玉子の黄色のアクセントが良い!
 スープを一口飲んでから、うどんをすする。

「このうどん……。適度に豚からの脂が出ていて、野菜の甘みも加わって美味しいね!」

「でしょう♪」
「翌日だから、お鍋のしめでは無いけど、うどんは美味しいよね!」

 晩ご飯の時間も、稀子と楽しい食事で時間が過ぎてゆく。

 ……

 夕食の後は2人で後片付けをして、お風呂は当然1人ずつ入って、1Rの部屋なのでリビングで2人夜の時間を過ごす。
 この時間ではテレビを鑑賞しながら夜を過ごしているが、2人の今後の予定の話もしていた。

「稀子ちゃん…」
「明日と明後日はフルに時間が有るし、どう過ごそっか?」

「そうだね~~」
「知らない町に来た事だし、比叡君に観光案内でも頼もうかな?」
「何が有る~~?」

 稀子はそう言ってくるが、この町には見所が本当に全く無い……
 地元の大きな神社が1つ有る位だが、近隣にそれを上回る神社が多数有るため、地元の神社はマイナー扱いされている。
 それ以外は本当に何も無く一応、市民公園が有るが、スポーツイベントをメインとした公園のため、観光向けの施設では無い。
 ショッピングモール等も近くには無く、本当に普段の生活をするだけの町で有る。

「ごめん……この町は、観光案内する場所が無いんだ…」

「うそ~~。幾ら何でも1個ぐらいは有るでしょ~~」

「一応有るけど、神社しか無い…」

「うぁ!」
「神社か~~」
「初詣は、私の町の神社で済ませたばかりだしな~~」

「この町は楽しむより、生活をする町だからね…」

「詰まんない町ね……。海も山も近くに無さそうだし」

 稀子はそう言う。
 稀子の町は、山は有ると聞いているが、海も近くに有るのだろうか?

「比叡君!」
「神社以外に、本当に観光する場所無いの!?」

「バスを使えば、駅から河川公園に向かう路線バスは一応出ているけど…」

「河川公園?」
「それは、どんな公園」

「一応、展望タワーが有って、広場と子ども向けの遊具も有って、後は、季節の花が花壇に咲いているかな?」
「この時期はたしか、何も咲いていないはずだけど?」

「暖かい時期なら良いけど、冬の時期だと1日遊ぶのは無理そうだね…」

 稀子は残念そうに言う。

「俺が車を持っていれば、車で出掛ける事は出来るけど……」

「比叡君。レンタカーを借りたら?」
「山本さんから、お金は沢山貰えたもんね!」

「そうしたいのは山々だけど、ペーパードライバーだから…」
「もし、自動車事故を起こした日には、俺は社会的と山本さん達に抹殺されるよ」

「あ~~」
「山本さん……。本当に怒らすと怖い人らしいからね。私もまだ見た事無いけど…」

 その後、色々、俺の町周辺に有る観光施設を稀子と相談してみたが、やはり冬の時期だから屋外の施設は厳しい。
 行動範囲を広げれば良いのだが、俺と稀子の関係は親友関係と言うよりかは、山本さん達から俺に一時保護を任されている立場だ。
 事故が起きた時のリスクとかを考えると、ついつい守りに入ってしまう自分がいた。

 その夜は結局、稀子と観光をする場所は決まらず、夜も更けて来たため就寝する事に成った。
 今日もベッドに2人で寝る。もちろん、そのまま素直に寝る。

 昨夜の稀子はやはりと言うか、山本さんを早く忘れたかったのだろう……。行きずりの機会が有ったが、今の稀子は山本さんと鈴音さんと関係が修復出来たので、体を重ねられる雰囲気が全く出てこなかった。

 今日1日は凄く疲れたはずなのに、俺は中々寝付けず稀子の様子を伺うが、稀子は静かに寝息を立てていた。
 俺の今の感情は、稀子を彼女にしたい気持ちは今でも変わらないが、それを本当に実行したいとは思わない。

 それは自分が無職で有るし、次の道も決まっていない……。そんな状態で稀子を彼女にしても、直ぐに破局を迎えるのは目に見えているからだ!
 自分の将来と稀子の事を考えながら、眠りに就けない夜を過ごした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

処理中です...