偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
9 / 434
出会い編

第9話 山本さん

しおりを挟む
 話しの切っ掛けを作るため、俺は冷蔵庫からウーロン茶のペットボトルを取り出して、紙コップに2人分のウーロン茶を注いで持っていく。
 稀子は俺が話し掛けるまで気付かなかった……

「はい、稀子ちゃん。ウーロン茶!!」

「あっ……ありがと」

 俺はウーロン茶を一口飲んで、稀子が座って居るソファーの横に座る。
 稀子の顔を見るが、先ほどまでの元気は何処かに行ってしまったようだ。
 2人掛のソファーなので、稀子とは非常に距離が近い。

「先ほどの電話の内容って、聞いても良いかな?」

 今は聞くタイミングでは無いとは思うが、この場で聞いて置くべきだと俺は感じた。
 稀子は、“しょんぼり”した表情で話し出す。

「……明日帰って来いだって」
「山本さんが車で、駅まで迎えに来てくれるって……」

「そうだろうね…」

 山本さんの電話に、最初から稀子が出れば話は別だが、男の俺が出てしまった。
 りんちゃんも稀子の友達を、女性同士と思った部分が有ったのだろう……? 
 しかし、俺が最初に電話に出てしまったから、親友と言い切っても、相手は絶対に信用はしない。

「本当はね……今から迎えに行くと山本さんは言ったけど、それは流石に断った…」
「もう…、今日は遅いから明日にしてと…」

 俺自身もそれは避けられて良かったと思う。
 山本さんの声の感じからして、がっしりした体型の人だと感じる。俺は喧嘩のたぐいは全く駄目だ。

「せめて、今晩は許してと言ったの!」
「私の大事な友達と言い切ったからね。そうしたら、何とか許しを貰えたの…」

「……」

 これは、どう捉えれば良いのだろう? 
 俺は今、稀子の恋人候補なのだろうか? 
 それとも咄嗟とっさの嘘だろうか?

「だからね、お願い!!」
「比叡君も明日、山本さんに会ってくれないかな?」」

「え~!!」
「どっ、どうして…」

「山本さん、謝りたいんだって。今回の件で、私が迷惑を掛けた事を!」

「俺は、全然迷惑じゃ無いよ///」
「こんな可愛い子と一緒に居られて―――」
「あっ……!」

「えっ!」
「あっ…そうなんだ!」

 しょんぼりの表情から、急に真顔に成る稀子。

「比叡君……やっぱり男なんだ」

「あっ、いや……そうじゃなくて!!」

『しまった!』うっかり墓穴を掘ってしまった。
 この流れとは言えども、考えてから喋るべきだった。
 今の状態では完全に体目当てに成っている。

「……」

 稀子はそこから黙ってしまう。

(あ~~、俺のバカ!!)
(二度と無い機会をこんな簡単に失ってしまうなんて、旧日本海軍のミッドウェー海戦並の愚かさだ!)
(家に連れ込んだ時点で『勝った!』とおごっていた部分が有ったのだ!)
(少しのさちを得たと感じたら、直ぐに叩き落とされるかよ!)
(俺のミスとは言えども、理不尽すぎる!!)

 俺が心の中で後悔をしていると稀子は話し出す。

「……わたしね。比叡君のこと、良いと思っているよ。少しね、山本さんに似ているの…」

「えっ!」
「それはどうも…」

(何が『それはどうも』何だよ。しっかりしろよ!)
(もっと、ロマンチックな言葉を発しろよ!!)

 肝心な時にきちんと対応が出来ない。これが、俺の人生失敗の大半だ。
 たった一言の言葉、動作、行動が出来ないから糞人生に成ってしまった。
 パート先をクビに成ったのも、それが出来なかったからだ。
 理不尽な事を言われても、素直に言う事を聞いていれば、クビにされる事は無かったはずだ!!

「ねぇ…、比叡君。私を抱いてみる?」
「既成事実さえ作れば、私も山本さんを忘れられるかも……」

「えっ…?!」

「……///」

 稀子は『来るなら来て』の表情をしている。
 少し手を伸ばせば、直ぐに稀子の体を触れる。

(俺が男に成るチャンス?)
(でも、これで良いのか?)
(行きずりの行為は正しいのか!?)

「……」

 俺は頭の中で、適切な行動を導き出していた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

処理中です...