8 / 434
出会い編
第8話 おもてなし その2
しおりを挟む
「お待たせ~、出来たよ~!」
あれから約10分位で、稀子は鍋を持って来た。テーブルの鍋敷きの上にドンと鍋が置かれる。
稀子は和やかな笑顔で鍋の蓋を開ける。
「じゃ~ん、常夜風鍋で~す」
「常夜風鍋?」
「んっとね。常夜鍋は、キャベツとほうれん草と豚肉が本来の作り方なの。ほうれん草の代わりに白菜、蒲鉾は合うかなと思って入れた。」
「だから、常夜風鍋」
『にぱぁ』としながら稀子は言う。
その笑顔は、何処か遠くで見た懐かしい感じがした。
そして、常夜(風)鍋。俺の中では初めて聞く名前の鍋だ。
俺は料理に疎い。
料理のレパートリーだって、親が作る料理がベースだし、新しい料理にも滅多に挑戦しない。そんな中で稀子が作った鍋には目新しさが有った。
ご飯は炊いていないが、炊いたのを小分けした冷凍ご飯が有るので、それを電子レンジで解凍して、茶碗代わりの丼鉢に盛り付ける。
稀子が食べ方を説明してくれる。
「食べ方はね、小鉢にポン酢を入れて、鍋からの具材をポン酢に付けて食べて!」
稀子に言われた通り、小鉢にポン酢を入れて、鍋から箸で豚肉と白菜、キャベツを取って、ポン酢に付けて食べる。
「……しゃぶしゃぶ見たいだね!」
「そうだね! でも、あっさりで美味しいでしょう!」
「うん、たしかに!」
普段の俺が食べる、油っこい料理と比べれば常夜風鍋はあっさり系でも有る。
豚肉の余分な脂がスープに溶け出し、その脂がキャベツと白菜に移り、しゃぶしゃぶの野菜類より、野菜の甘みを感じて美味しい。体も温まるし、ポン酢の酸味で食欲が沸いてどんどん食べられそうだ。
「常夜鍋ってね『毎日食べても飽きないから』って言うのが由来らしいよ!」
「へ~、そうなんだ」
稀子のうんちくも聞きつつ、会話をしながら晩ご飯を楽しむ。
鍋に一杯に有った……常夜風鍋は、綺麗に具材は無くなりスープだけに成る。
「この残ったおつゆで、うどんとか入れても美味しいよ!」
「じゃあ、明日のお昼はうどん買ってきて入れる?」
「良いね! 美味しそう!!」
お互い、体もお腹も満足して笑顔に成る。
(初めて会って、まだ数時間しか経っていないのに、本当の彼女の様な気がする)
稀子は子どもみたいで可愛いし、体型も好みで有る。でも、この子は彼女では無い。
1晩から数日間……関わる子でも有る。
(このまま進展させたいけど、手順が考えつかない!)
俺と稀子の今後の発展を考えながら、俺は小鉢の汁を飲み干した。
……
稀子は一応、お客さんに成る訳だし先にお風呂に入って貰う。
そして、俺はその間に食器類の洗い物をする。
洗い物と言っても、鍋以外の料理は作っていないので、洗い物はそんなに多くは無い。
洗い物が終わり、稀子もお風呂から上がってきたので、俺も風呂に向かおうと思うと、俺のスマートフォンから着信音が鳴る。
稀子の姿は“もこもこ”のパジャマ姿に変わっていた。パジャマも持ってくるとは、かなりの本気度の高い家出だったのだろう。
スマートフォンの着信表示を見ると知らない電話番号だ。
もしかして、稀子の関係者? と思って俺は電話に出る。
「……もし、もし」
「ども、山本で~す!」
声は低いが流暢に話す人だ。
「えっ、山本さんですか?」
「んっ、君は誰…? 稀子ちゃん居ないの?」
「あっ、稀子ちゃんですか? 少々お待ち下さい…」
通話状態を消音モードにして、リビングに居る稀子に話し掛ける。
「稀子ちゃん。山本さんって言う人から電話…」
「えっ、何で山本さんが、比叡君の電話に掛けてくるの!?」
突然の事でびっくりしている稀子。
「さっき、鈴ちゃんで掛けた番号で、掛けて来たんじゃ無いかな?」
「あっ、そうか。比叡君のスマートフォンで、電話掛けたもんね…」
稀子は俺のスマートフォンを受け取り電話に出る。
「もしもし、稀子です―――」
「あっ、―――」
「はい、ごめんなさい。急な事だったので、―――」
「―――」
「―――」
盗み聞きは悪いと感じたので、そのまま俺はお風呂に入る事にした。
お風呂と言っても、今住んでいるアパートの風呂は給湯設備しかない。湯船に浸かりたければお湯を張らなければ成らない。
その辺の事を稀子に説明するのを忘れていたが、お湯を張った形跡は無い。
今日は湯船に浸かりたい気分だが、稀子がシャワーだけで済ましているので、俺もシャワーだけで済ます事にする。
頭と体を洗い、少し長めのシャワーを浴びてからお風呂を出る。寝間着に着替えてリビングに向かう。
稀子と山本さんの電話は、もう終わっているようで、稀子は上の空でテレビを見ていた。
俺は先ほどの山本さんからの電話が、良くない内容だったと感じて、稀子に探りを入れてみる事にした。
あれから約10分位で、稀子は鍋を持って来た。テーブルの鍋敷きの上にドンと鍋が置かれる。
稀子は和やかな笑顔で鍋の蓋を開ける。
「じゃ~ん、常夜風鍋で~す」
「常夜風鍋?」
「んっとね。常夜鍋は、キャベツとほうれん草と豚肉が本来の作り方なの。ほうれん草の代わりに白菜、蒲鉾は合うかなと思って入れた。」
「だから、常夜風鍋」
『にぱぁ』としながら稀子は言う。
その笑顔は、何処か遠くで見た懐かしい感じがした。
そして、常夜(風)鍋。俺の中では初めて聞く名前の鍋だ。
俺は料理に疎い。
料理のレパートリーだって、親が作る料理がベースだし、新しい料理にも滅多に挑戦しない。そんな中で稀子が作った鍋には目新しさが有った。
ご飯は炊いていないが、炊いたのを小分けした冷凍ご飯が有るので、それを電子レンジで解凍して、茶碗代わりの丼鉢に盛り付ける。
稀子が食べ方を説明してくれる。
「食べ方はね、小鉢にポン酢を入れて、鍋からの具材をポン酢に付けて食べて!」
稀子に言われた通り、小鉢にポン酢を入れて、鍋から箸で豚肉と白菜、キャベツを取って、ポン酢に付けて食べる。
「……しゃぶしゃぶ見たいだね!」
「そうだね! でも、あっさりで美味しいでしょう!」
「うん、たしかに!」
普段の俺が食べる、油っこい料理と比べれば常夜風鍋はあっさり系でも有る。
豚肉の余分な脂がスープに溶け出し、その脂がキャベツと白菜に移り、しゃぶしゃぶの野菜類より、野菜の甘みを感じて美味しい。体も温まるし、ポン酢の酸味で食欲が沸いてどんどん食べられそうだ。
「常夜鍋ってね『毎日食べても飽きないから』って言うのが由来らしいよ!」
「へ~、そうなんだ」
稀子のうんちくも聞きつつ、会話をしながら晩ご飯を楽しむ。
鍋に一杯に有った……常夜風鍋は、綺麗に具材は無くなりスープだけに成る。
「この残ったおつゆで、うどんとか入れても美味しいよ!」
「じゃあ、明日のお昼はうどん買ってきて入れる?」
「良いね! 美味しそう!!」
お互い、体もお腹も満足して笑顔に成る。
(初めて会って、まだ数時間しか経っていないのに、本当の彼女の様な気がする)
稀子は子どもみたいで可愛いし、体型も好みで有る。でも、この子は彼女では無い。
1晩から数日間……関わる子でも有る。
(このまま進展させたいけど、手順が考えつかない!)
俺と稀子の今後の発展を考えながら、俺は小鉢の汁を飲み干した。
……
稀子は一応、お客さんに成る訳だし先にお風呂に入って貰う。
そして、俺はその間に食器類の洗い物をする。
洗い物と言っても、鍋以外の料理は作っていないので、洗い物はそんなに多くは無い。
洗い物が終わり、稀子もお風呂から上がってきたので、俺も風呂に向かおうと思うと、俺のスマートフォンから着信音が鳴る。
稀子の姿は“もこもこ”のパジャマ姿に変わっていた。パジャマも持ってくるとは、かなりの本気度の高い家出だったのだろう。
スマートフォンの着信表示を見ると知らない電話番号だ。
もしかして、稀子の関係者? と思って俺は電話に出る。
「……もし、もし」
「ども、山本で~す!」
声は低いが流暢に話す人だ。
「えっ、山本さんですか?」
「んっ、君は誰…? 稀子ちゃん居ないの?」
「あっ、稀子ちゃんですか? 少々お待ち下さい…」
通話状態を消音モードにして、リビングに居る稀子に話し掛ける。
「稀子ちゃん。山本さんって言う人から電話…」
「えっ、何で山本さんが、比叡君の電話に掛けてくるの!?」
突然の事でびっくりしている稀子。
「さっき、鈴ちゃんで掛けた番号で、掛けて来たんじゃ無いかな?」
「あっ、そうか。比叡君のスマートフォンで、電話掛けたもんね…」
稀子は俺のスマートフォンを受け取り電話に出る。
「もしもし、稀子です―――」
「あっ、―――」
「はい、ごめんなさい。急な事だったので、―――」
「―――」
「―――」
盗み聞きは悪いと感じたので、そのまま俺はお風呂に入る事にした。
お風呂と言っても、今住んでいるアパートの風呂は給湯設備しかない。湯船に浸かりたければお湯を張らなければ成らない。
その辺の事を稀子に説明するのを忘れていたが、お湯を張った形跡は無い。
今日は湯船に浸かりたい気分だが、稀子がシャワーだけで済ましているので、俺もシャワーだけで済ます事にする。
頭と体を洗い、少し長めのシャワーを浴びてからお風呂を出る。寝間着に着替えてリビングに向かう。
稀子と山本さんの電話は、もう終わっているようで、稀子は上の空でテレビを見ていた。
俺は先ほどの山本さんからの電話が、良くない内容だったと感じて、稀子に探りを入れてみる事にした。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる