白湯と漬物

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
2 / 2

その後……

しおりを挟む
 レナードが頭を抱えるのは当然だろう。この商品は今までの一般階級の店には無い。
 目の前の僕らは下級であっても貴族だから下賜品が手には入る可能性はある。しかし普通、貴族は商売はしない。ならば商売をしようとする貴族は?
答えは…普通でいられない貴族?つまり何かしらリスクがある。

 では、もう後一押しだろうか?

「もちろんこれだけでは売れてしまったら終わりなので、父が伝手を辿り次の注目商品も買い付けて来ることになってます。」

それにこの小物類やレースは自分のハンドメイドだと伝える。

「そうなりますと…店は、ご子息が?」

…乗って来たな、と思う。この品質を維持していく店ならば多少のリスクがあろうと逃す商人はいないだろう。

「まぁ…ご覧の通り父は……貴族でしかありません。商人には向かないでしょう。」

 言葉にしないまでも、落ちぶれた貴族なのだと匂わせる。父は商人に向かない こう言った意味も汲み取ってもらえただろうか。このように大きな商会を仕切っている人ならばと思うがどうだろうか。

「なるほど。では男爵様はその素晴らしい鑑定眼で見極められ、ご子息が街に潤いを与えてくださるということですね?」

「潤い という程ではありませんが…。私達も街で楽しく暮らせればと思っています。如何でしょうか」

 少しの逡巡の後にとうとう決めたようだ。

「ようございます!私も名の知れた商人、こんな機会を逃す事は出来ません。ご協力させていただきます!」

 では早速、と馬車が用意される。物件は実際の物を見て決めるらしい。

 ターダは僕に任せると言い、商会の部屋でお茶を飲み待っているそうだ。
 落ちぶれた意味が良くわかる下級貴族ぶりを発揮してくれる。…いや、多分これがターダにとって普通なのだろう。

 馬車といっても、用意されたのは荷馬車の小さい物だった。やっぱりボックスのついた馬車は一般人の間では富豪といわれる家でしか使ってないらしい。レナード自ら手綱を取り操縦し始めた。
 
「貸し店舗であのレベルの商品ですと、3件ほど候補がございますがご希望の地域はございますか?」

「そうですね…噴水広場か公園通り…その辺りでしょうか?奥様方やお嬢様方が入りやすい面に面した所が良いですね。」

 噴水広場というのは4代前の国王が作らせた噴水を囲むように石畳を敷き詰めた場所だ。噴水といっても遠くの山から水を引いており飲む事が出来る。
 まだこの世界には蛇口を捻ると水が出るような事は……一応ない。

 なぜ 一応 なのか?城にはあるからだ。
ハイそうです、僕です。不便だったんだもん。
でも電気もモーターもないから大きなタンクを作って水を溜めて水道管から流すだけ。
 大きなタンクに水を運ぶのは水車を回しても入れられるのだが、殆ど人力だった。
なぜ人力なのか?罰としてその役割があるからだ。
この国に奴隷はいないが囚人はいるから、軽犯罪者の仕事として水運びがある。

 そしてこの噴水も原動力は囚人の働きだった。一般人には知られてないけどね。

 噴水広場の近くの家は井戸から水を汲み上げなくても良いのでそういう意味でも人気のある地域なんだって。









しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

心のリミッター

小春かぜね
現代文学
心に感じた事を書いた短編集です。 日常・恋愛・現代社会など、様々な物が纏められています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

#彼女を探して・・・

杉 孝子
ホラー
 佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。

空に、風に。

有箱
現代文学
斉藤凜音は不思議な少女だ。最近よく放課後遅くまで残っている。 そんな斉藤の口から出る言葉は美しく、そして不思議な物ばかりだ。 それらの意味をつかめないまま、日々を次々と重ねてゆくが――――。 ※2016年の作品です。 カテゴリーにその他が欲しいーー!

神様、俺は妻が心配でならんのです

百門一新
現代文学
「妻を、身体に戻す方法を――」ある日、六十代後半のカナンダカリは、とても不思議な現象に居合わせる。家にはいなかったはずの妻が、朝目が覚めると当たり前のように台所に立っていた。いったい、何が起こっているのか? 妻は平気なのか? 沖縄の南部から、ユタ、占い師、と北部へ。まるでドライブだ。妻の楽しそうな横顔に、ナカンダカリは笑みを返しながらも、きりきりと心配に胸がしめつけられていく――だが彼は、ようやく、一人の不思議な男と会う。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...