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第5章 個別ルート 伊藤亜紀編

第507話 午後からの海水浴 その2

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「武蔵君…!」
「さっきの進路続きでは無いけど、武蔵君は大学卒業後の進路は、意識し始めている…?」

「大学卒業後の進路?」
「俺には、亜紀のように就きたい職業がまだ無いから、全然決めていないよ…」

 亜紀は澄ました表情で俺に尋ねてきて、俺は困った表情で亜紀に返す。
 亜紀は将来を意識しているから”名大”への進学を目指し、確実に将来の仕事へ就ける道筋を作っている。 

「うん。やっぱりそう成るよね…!」
「武蔵君の場合は、まだ明確な目標を決めていないからね」

 亜紀は澄ました表情で呟き、それ以上は掘り下げてこない。
 そして、二人の会話は其処で終わる……

『ザザ~~ン』

「……」

「……」

『わ~~』

『きゃ~~』

『あはは!!』

『ザザ~~ン』

 俺と亜紀は二人無言で、海を眺めている。
 世間話をしても意味が無いし、亜紀の趣味は無いはずだから、俺からの会話を作りようが無い。

 独りよがりの会話をしても、亜紀は虹心のように相槌は打たない。
 ……こう考えると、虹心は結構良い妹なんだな!

 亜紀も、あの後から話し掛けて来ない。
 俺が将来を決めていないことで、亜紀は落胆したのだろうか?

(兄貴と小織さんは30分ぐらいで戻って来ると言っていたが、この無言タイムは結構キツい!///)

 俺が言うのも変だが、俺と亜紀は理想のカップルなんだろうか?
 志望大学は全然違うし、亜紀は将来の仕事も決めているのに、俺はこれから……

(考えたくは無いが、俺と亜紀は義理の延長線なんだろうな!///)
(共通の親友で有った二村を失い、二村の狂った行動が俺と亜紀の結束力を高めることと成り、更に篤志(黒崎)が俺への一方的攻撃で、亜紀は俺を意識するしか無く成った)

(……亜紀の就きたい仕事を、俺はまだ聞けていなかったな…)
(両親に反対される恐れが有るし、恥ずかしいから言いたくないと亜紀は言っていたが、どんな仕事に亜紀は就きたいのだろうか?)

 と、俺は心の中で思う。
 俺は黄金週間ゴールデンウィーク時。スワンボート上で亜紀と初キスをしたが、その後の身体関係は全く進んでいない。

 これは、亜紀が清楚で無いと進学に関わる問題も有るが、亜紀自身が性に強く興味を持っていないのも有る。
 まぁ、これは今に始まったことでは無いが。

 亜紀の就きたい仕事に関しては、亜紀が自分の口から言うのを待とうと俺は思う。
 “名大なだい”を目指しているぐらい何だから、きっとお堅い仕事なんだろう?

「ふぁ~~」

 亜紀が口元を押さえながら、欠伸あくびをする。
 亜紀はどうやら眠たいようだ。

 昼食を食べ終わった後の午後は、誰もが眠くなる時間帯だ。
 亜紀は欠伸の後。少し眠そうな表情で俺に話し始める。

「武蔵君…!」
「私…少し眠りたいから、休むね…!」
「…お休み」

 亜紀は俺に言葉を終えると、亜紀は首を下げる。
 ちなみに亜紀は、学生定番の体操座りをしている。
 俺ももちろん、体操座りで有る。

 亜紀は体操座りの状態で、軽い眠りに就き始める。
 亜紀は俺を信頼しているから、安心して眠りに就くのだろう。
 自分が強姦レイプされるかも知れない状態で、眠りに就く人は居ないからな!

「……zzz」

 亜紀は本当に眠りに入ったらしく、しばらくすると亜紀の寝息が聞こえてくる。
 俺は亜紀の護衛も兼ねて、亜紀の側に一歩近付く。

「……///」

(学園一の美少女が俺の真横で、体操座りで有るが眠っている///)
(俺と亜紀は恋人同士で有るから、体に触れても問題は起きないと思うが、体に触れた時点で亜紀が目を覚ましたら、亜紀は絶対俺を軽蔑するだろうな!///)

「……zzz」

 俺は亜紀のことが大好きで有るが、亜紀も俺のことを大好きなんだろうか?
 だが、俺のことを信用・信頼しているから、亜紀は俺の横で眠っている。

 俺と亜紀の関係は大分長く成って来たが、まだまだ俺は真の亜紀を知り切れていなかった。
 俺は亜紀の寝顔を見ながら、何となく将来就きたい仕事を意識し始める。

 俺の就きたい仕事は、一体何なんだろうか?
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