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第5章 個別ルート 伊藤亜紀編

第395話 不穏な空気

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 ……

『ガラッ!』

 教室に到着した俺は、普通に扉を開けて教室内に入る。

『がや、がや、―――』

『ピシャ!』

『がや、がや、―――』

「……」

「……」

 教室内は何時も通りの賑やかさも感じるが同時に、刺さるような視線も気に成る!?
 俺のクラスにも、熱狂的な亜紀ファンが居たか!!
 昨日までは全く感じ無かったから、多分間違いないだろう。

「……」

 俺は何食わぬ顔で自分の席に向かい、カバンから教科書類を取り出し始める。
 何時もの時間なら、二村と松田及びそのグループは、朝の会話を教室内で楽しんでいるのだが、今朝はそのグループが教室内には居ない?

(考えたくは無いが、彼奴ら亜紀の方に向かっているか)
(だけど、そうしたら亜紀から連絡が来ると思うが……)

 俺は心の中でそう感じるが、亜紀は気丈きじょうな人で有る。
 彼奴らが物理的な攻撃を亜紀にしない限り、亜紀の精神力や忍耐力は、彼奴らを凌駕しているだろう!

(……机は特に、悪戯された形跡は無いな!)
(机の中も腐った食べ物や、動物の死骸などは入っていない…)

 俺の机はマジックで落書きされたり、液体のりを“ぶちまけられた”形跡は無かった。
 もちろん、花瓶や菊の花も置いてない。

 俺は教科書類を机の中にしまい、後は始業チャイムが鳴るまでは、普段通りに過ごす。
 その間。同じように椅子へ座っていた高岡と俺は目線が合うが、高岡は俺の方に来る気配を見せず、静かにスマートフォン画面を見ていた。

 高岡のことだ。
 Web小説でも読んでいるのだろう。

『がや、がや、―――』

「……」

 俺は平静を装っているが、やはり誰からの視線を感じる。
 俺は視線を感じる度に顔を振り向かせて、その相手を見付けようとするが、相手の方が一枚上手で有った。

 ……

『キーン、コーン、カーン、―――♪』

 何者からの視線を感じるが、感じるだけで有り、物を投げてきたり、文句を言ってくる雰囲気は無いまま、始業チャイムが鳴る。

 その数分前に松田達は教室に来たが、二村と一緒では無かった。
 岡谷君は、何時も通りのギリギリで有る。

『ガラッ!』

『ピシャ!』

「はい!」
「では、号令をお願いします」

 俺の担任が教室に入って来て“そのまま”教壇に向かい、体を正面に向けて、クラス委員に向けながら穏やかな表情で声を掛ける。

「起立~~」

 クラス委員が号令を掛けて、今日の一日をが始まる。
 定番である朝の挨拶の後は、担任が出欠を取り始める。

「―――さん」

「はいっ!」

「―――さん」

「はい!」

「……二村さんは午前中。欠席の連絡を貰っています」

「!」

 二村の出欠確認が来た時。
 担任は澄ました表情で、生徒達に向けて言う。

 二村が遅刻するなんて珍しい……ではなく、朝一で亜紀の方に向かったと、俺は考える。

(すんなりと、終わる話し合いでは無いからな…!///)
(絶対に、こじれるに決まっている。亜紀の方も、多分遅刻だろうな…)

 俺は心の中で感じながら、担任が取る出欠を聞いていた。
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