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よん
しおりを挟む「ちょっと待ってー、ほんと意味わかんない」
翌朝目がさめたらいつもならない寝癖で髪がうねっていたので調子悪くなった。今日は厄日かも
「たかが髪の毛のうねりぐらいでなんです、聖女様にもなって」
「神様の加護?なのか、こんなコンディション悪いときなんて最近なかったのよ。だからブルーってやつね。厄日厄日」
たかがうねり、されどうねりだ。厄日には違いなかったのだから
「おめでとうございます聖女様」
「おめでとうございます。どうぞお幸せに」
教会へ来れば身に覚えのない謎の祝福。
「聖女様って私以外に増えたの?」
「いいえそんなことは伺っておりません」
「ハリスJr.は?」
「だからー、母の名前にジュニアはやめてくださいと!それもこんな公の場で。あと何も伺ってはおりません。あっジョセフさんが朝から聖騎士と一緒に先に教会へ行きましたけれど」
ジョセフに関することかな?ジョセフが神官になるとか?えー、あの男が?信心深いかんじもないしありえなくない?
「こら、聖女様にそのような口のききかた!いくら兄妹のように接してきたからって」
「お嬢様が妹ぉー!?絶対にいやですよこんなヤリまくり女が妹なんて」
「こらっ!たとえ真実でも言っていいことと悪いことがあるでしょう!」
二人とも不敬でしょっぴけるわ。
謎の祝福をうけながらお祈りに来たら神様、教皇様、そしてなぜかラミエル大神官様揃い踏みだった。
「おはようございます。神様が出てこられるのは珍しいですね」
『あぁ』
「聖女様おはようございます。良い朝ですね」
どこがよと言いそうになったがここは堪える。私も聖女になってから随分と大人になったものだ。ジョセフやハリスに言わせればまだまだだと言われるだろうが
「本日は素晴らしき神託を早朝から授かり、教会だけではなく国をあげての素晴らしき慶事となります!」
え?その神託って聖女を差し置いてなの?
『アリアナ、そなたに関する神託だ。心の中で文句を言うのではなく心して聞くがよい』
バレてる
「聖女様、素晴らしき神託でございました」
だから内容は?
『アリアナ、そこにいるラミエルと結ばれるがよい』
「え…?」
「聖女様、神が聖女様とラミエル大神官が結ばれるべきだと神託をくださったのです」
ラミエル大神官様がお話にならなかったのにこの場にいること、教会をあげての国の慶事、私がおめでとうございますと身に覚えのない祝福を受けたこと。それらすべてがこの神託?のせいなのか!?
「むすばれるとは…」
『婚姻に他ならないだろう』
「こんいん…こんいん…!?こんいんっ!?って婚姻てやつですか!?」
「えぇ。神からの神託が敬愛すべき聖女様との婚姻とは光栄至極に存じます」
あぁだめた。ラミエル大神官様も神様派だったんだ。
『聖女、何を考えているかは全てわかっているぞ』
「こっちもわかってます。神様が全部お見通しなことは」
『いきなりで驚いただろう?じいやとラミエルは下がるといい。聖女と話をするからな』
いやいや私を一人にしないでくれよ。あと教皇様のことをじいやって呼んだ?
『嫌だったか?』
一人になった途端、神様は少し弱々しい声になって言ってきた。
「嫌というか…ラミエル大神官様は高位貴族ですし、私は元未亡人で家族から売られて、世間からは男遊びをしていた未亡人ととんでも聖女ですよ?釣り合うわけないじゃないですか」
『まだ気付いていないのか』
「何にです!?」
『処女のときの相手も先日の相手もラミエルだぞ?
』
とんでもない事実を突き付けられて口は大きく開いたまま何も言えなくなってしまった。え?うそでしょ?処女を捨てた相手もつい一昨日の相手がラミエル大神官様?え?え?え!?
『ラミエルとアリアナはそもそもが結ばれるべきではあったが、様々な障害があった。あやつの家柄とお前の家庭環境だ。本来であれば平和に結ばれるはずがなんの間違いかとんでもない障壁が…』
「いやいやいや、私とラミエル大神官様はなんの関係もないですけれど」
『運命というのは決まっているだろう?』
「知りません。切り開いていくものだと思っておりました」
『さすがアリアナだ』
いやいや、今ここポイントあげてる場面じゃないのよ
『本来であれば結ばれるべきだったお前達の魂が何を間違ったのか全くおかしな所にいってしまったのだ』
いやいや、神様でしょう?
『神にだってどうにもしようもないことだってある』
絶句である。
『アリアナが少々奔放だったことには目を瞑ろう』
いやいや上からー
『ラミエルは素晴らしき人間だ。信仰心にあついし、下からも慕われる。なによりアリアナ、あの見栄えのする容姿大変に好みであろう?』
「…よくおわかりで」
『考えてることから何から手に取るようにわかるからな』
神様…下からも慕われるってあの崇高なるラミエル大神官様の僕達でしょ?慕われるを越えている気がしなくもないけれど。
『なに、あやつは昔からかしずかれることには慣れているだろうしあの僕達も大きく括れば私の僕でもあるからな』
「まぁそうでしょうけど…って!この前の相手はラミエル大神官様!?それ!それですよ!え?なんでラミエル大神官様が!?あんなヤリパに?」
わかった。神託?を使ったのだ。処女の私は約2年前、その時も神託だったのだろう。どうせラミエル大神官様に○○へ行けとこ神託めかしてたのだろう。
「神様ってそんなに干渉してもいいんですか?」
『私のための世界だろう?何が悪い?』
根本から考えが違った。
「でも!ラミエル大神官様にはもっといいお相手がいらっしゃるかと」
『アリアナよりか?こんな聖力を持った女は数百年と会っていないな』
「いえいえ、聖力よりも大事なものが」
『精力か?』
「今のお言葉、本気で仰っているのなら私は今すぐにでも聖女なる身分を棄てて他国にでも行きます」
『すまない。しかし他国へ行ったところで聖女であることにかわりはない』
はいはいはいわかりましたよ。私なんかがどう足掻こうと神様はこんな下界の国土とか国境とかは関係ないってことですよね
『その通りだ』
あーっもう!
「でも嫌です。気持ちも通いあわない結婚なんてこりごりなんです。神様ならわかってくれますよね?曾祖父くらいのおじいさんと政略結婚させられた私がいくら神託とはいえ政略結婚なんてもうこりごりだってこと」
『政略結婚でなければいいのか?』
「気持ちが通じあった人がいいに決まってるじゃないですか」
*****
「だーかーらー、私は結婚なんてしませんって」
日々の教会勤務でもあの神託のせいか祝福の言葉を掛けられるたびに否定して回る日々だ。
聖女にはなったがやはり神の僕とみられる。神の言うことは絶対、ましてや神託と名をうてば尚更。
「ラミエル大神官様のなにがお気に召さないのですか?」
崇高なるラミエル大神官様の僕達にそう言われたが答えられることはもうない。
「神とはいえ他人に決められた結婚なんてもう懲り懲りなんです」
そう答えれば政略結婚からのおじいさん腹上死の私には誰もなにも言わない。僕達はなんともいえない顔をしてくるが、返す言葉がないのなら私の勝ちだ。
高位貴族や王族が出てきても泣きながらもう政略結婚は嫌ですと伝えれば皆黙る。そうだろうそうだろう、まだ10代、皆が信仰する神に意見できる私の発言を無下にはできないのだから、勝手に進めたりする人間がいないのは助かる。
「聖女様、手紙を預かっております」
ある日ジョセフから手渡された手紙は件の方から、内容は二人で話がしたいということ。神はきっと全てを見ておられますがそれでもよろしければと返事をしたら翌日即機会が設けられた。
「お久しぶりです聖女様」
僕の一人が給仕係をしてくれているが、ラミエル大神官様へ向けるキラキラした目とはちがい、私を見る瞳には若干涙が浮かんでいるような気がしなくもない。
「同じ神殿にいるのですから然程気にもなりません」
こう突き放してしまうのは後腐れない関係を望んでいる私から出てしまうのは仕方のないことだと思ってほしい。
「聖女様は御自身に向けられた感情に鈍すぎます」
求婚されると思ってきた茶席でまさか説教が始まるとは思いもしなかった。
「貴女に好意を寄せる人間は私だけではありません、なのに簡単に受け入れてしまう、若さ故の好奇心はあるとは思いますが、すぐに体を繋げてしまうのはそもそも神の教えに反します」
神の教えってあの神様からだよね?えー、聞いたことない
『常識だからな』
ラミエル大神官様が目の前にいるけれど頭に直接語りかけてくる神様。いっそ聞かせてあげたいくらい。
「…申し訳ありませんでした」
「謝ってほしいわけではないのです」
じゃあどうしろと?
「私を…私、だけを…受け入れていただくことはできないでしょうか…神託には背くことにはなりますが、結婚という形には拘りません。でも、聖女様、アリアナ様の一番お側にいさせてほしいのです」
給仕の僕が給仕に使うトレーを落として「はぁっ、うぅっ」と顔を赤くして涙を流しながらこの場を走り去っていった。いや、逃げたいのは私なんですけど。
「お嫌、ですか…?」
『嫌ではないと言うのだアリアナっ!』
うるせー、神様うるせー。
『抱き締めろラミエル!アリアナが揺れ動いている今が絶好の機会だ!』
ラミエル大神官様を応援するのなら私には聞こえないようにしてほしかった。されることはわかるし、それが神様の指示なのもわかってしまうから。
強く抱き締められたところで申し訳ないが萎える。
「神様の指示でやられてもなにも感じません」
「『…』」
「離してください」
萎え。もうめちゃくちゃ萎えた。あとなんで外でお茶?って思ってたけど回りが崇高なる(略)僕達が取り囲んでる。なんにも隠れられてない僕達が周りを取り囲んでるから萎えた。
「離したくない」
「いやいや、神様の指示でってわかってますから。ほんと、離してください」
生まれ変わったら聖女じゃなくて神になりたい。聖女ならなれそうじゃない?こうやって下界の人間を弄びながら毎日を過ごしたい。
「神の御心だけではない、本当に私がアリアナを求めていると…どうして信じてもらえないんだ」
神様と僕達のせいです
『神のせいだと言うのかアリアナ、では違うと証明して見せようじゃないか』
そう神様が言えばいきなり意識が遠退いた。え、やめてこわい。
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