乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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ミズキが城からいなくなって一週間、騒がしかった日々が今までのような厳かな雰囲気に戻ったが、全くもって物足りない。

「それで?社交はすべて断りの連絡が?」
「えぇ、宰相夫人が『邪魔者がいない空間で3人でそれはもう仲睦まじく過ごしていますのよ』とわざわざ登城されて言いふらしていましたから。それも私のことをみながら。侯爵夫人から邪魔者扱いされるとは出世したものですよ」

ミシェルは笑っているが笑えないじゃないか。あの侯爵夫人、宰相夫人に牽制されているんだぞ、よく笑えるな。俺なら下げた頭をあげることすらできないだろう。

「殿下は?」
「…関係ない」
「またまた、強がることありませんよ。たとえ嫌われていても顔を見れるだけで嬉しいんでしょう?」
「うるさいっ」

余裕しかないミシェルは最近ずっとこんなかんじだ。自分だけミズキと体も繋げて幸せの絶頂だからだろう。いくら幼馴染みのような存在だとしても不敬にも程がある。

「大体どうしてあんなにまで嫌われるのか…たかが下着ですよ?いつも下着みたいな格好をしているミズキがここまで意地を張ってるんですから」
「それよりお前達だけどうして許されているのかのほうが知りたいくらいだ」
「さぁ?日頃の行いですかね?」
「お前達に日頃の行いで比べられたくない」

殿下も苦労しているようだ。そもそも会話をちゃんとしているところもみたことがないかもしれない。ミズキは殿下のことは嫌いじゃないと思うんだが、まぁそれを言ったら面白くないから絶対に言わない。


「え?ちょっと待って、ノアが魔力が足りなくなって小さくなっただけだから童貞とかじゃなくない?騙されてるんだけどあたし!」

同じ時、ミズキはこんなことを言って夫達に怒り狂ってるとは知らず。








翌日、昼前から城門で騎士団ではどうしようもできない問題が起きていると殿下にまで話がきたのだ。

「なんだ?騎士団でもどうにでもできない問題とは」
「騒がしくもないですから市民が大量に押し掛けてきたとかでもなさそうですよ」
「ロラン、なにかきいていないか?」
「いえ、特には」

3人で向かえば大好きな彼女の姿があった。

「ミシェェえルっ!」

こちらに、いや、特定の恋人に気付いたミズキが走ってくる。俺も恋人なはずだが、やはり体を繋げた方が強い。
走った勢いそのままにミシェルに飛び込んで首に手を回して、どちらからともなく自然に唇を合わせるんだから驚きだ。城門だからパパラッチもここぞとばかりに撮っている。明日と言わず今日には世間に出回るな。

「ミズキ、閣下がいらっしゃいますよ」

ジョエルの一言でミシェルと離れたミズキはスカートを持って「ごきげんよう閣下」ときちんと挨拶をしたから驚きだ。

「あぁ」

あぁじゃないあぁじゃ!と斜め前にいる主人に全力で言いたいがあまり好ましくない状況だろう。なんてったって横でまたいちゃつきはじめたから。

「ねぇ、今日お泊まりしたい」
「私の部屋にですか?」
「うん」

いちゃつきながら夜の約束まで始まった。どう聞いてもセックスのお誘いだし、ミズキもよく夫達のいる前でできるな。ジョエル様は殿下と話をしているし、ノアールは泣きそうなのか嫉妬しているのかよくわからない表情だ。

「すみません、今夜は殿下の仕事の予定が入っていて。ロランは非番ですからロランの部屋に泊まったらどうですか?」
「ロラン空いてる?」    
「空いてる」
「じゃあ泊めて」

神は存在した。神に祈るなんて馬鹿馬鹿しいと思っていたが、神はいる。神はみていますよとよく言っていた母には今まで悪かったと伝えよう。

駄目だとも言いづらそうな夫2人はなんとも言えない顔をしている。ミズキがみたら怒り出すか優越感を感じるか、もうそれすらよくわからない。だってもう夜のことしか考えられないから

「ミズキ」
「ロランは夜まで仕事みたいだからその間また言い訳をききますー、しかも浮気でもないですー、ロランも彼氏なの知ってるでしょ?もー、そんな顔しないで。あたしが今王子様に」

ジョエルに名前を呼ばれただけでずらずらと言い訳がましいミズキがミシェルから離れて殿下に寄り添った。

「ねぇ殿下、夫達と少しだけもめてるの、今夜一緒に過ごしてくださらない?」

腕に胸を押し付けじゃない、もはや腕を谷間で挟んでいる。それで上目使いに甘い声で誘惑するものだからこの場の全員どうしたらいいかわからない。もはや隠れてもいないパパラッチすら大人しい。ヒールを履いても背伸びをしても殿下の口元や頬に届かなくても今にも口付けをしてしまいそうなその雰囲気に圧倒されている。

「こんなかんじ」

パッと離れて大笑いしているが周りは笑えない。それはもう運命とでも言おうか、一瞬の出来事だったのに周りは静まり返ったあと花々が咲き誇り、緑は青々と、天から光がキラキラと降り注いでいる気すらする。これが世界の理を越えた運命というものだろう。すごい、すごすぎる。なのになぜこの二人は素直になれないのだ?勿体ない。
あまりの出来事にパパラッチも驚いてはいるがこれは記事にされたら困る、すぐに人を使って記事を止めなければなるまい、まぁ俺以外もそう思っているだろうが、各所から止められるほうが念押しのようになるだろうから家を使って止めさせよう。

「じゃあ部屋にかえるね。ノアとジョエルはお仕事へどーぞ」

幸いにも頬を赤く染めなかった殿下を置き去りにしたまま、お騒がせ夫婦は城の自室へと向かっていった。ちなみに殿下の耳は真っ赤だ。

「なんだったんだ…」

ふと自分の口から出た。本当に意味がわからなかった。本当に騒ぐだけ騒いで、運命を見せつけて、部屋へ帰る、本当になんだったんだ?

「どうせまたミズキを上手いこと騙したつもりがバレたとかでしょう?いつものことじゃありませんか」
「しかし、殿下まで呼ばれるとなると」
「その殿下は使い物になりませんよ。ミズキのおっぱいは柔らかかったでしょう?あれ天然ですよ。乳首も巨乳なのに感度がよくって。今日はあの格好だとミズキのブラジャーでしょうね、腰はコルセットなしですから脱いでもあのままの細さですよ」

そうだ、こいつはもうミズキと寝ているからかナチュラルにマウントをとってくる。かくいう俺も随分と触ってはいる、あの呪いのせいで。魔女が言うには真実の愛でとだが、どう考えてもミズキとだ。やっと、やっと、やっとあの忌まわしい呪いから今夜解放されるのだ。

「ロラン、ロランっ!」

呪いのこと、今夜のことに思いを馳せていたらミシェルに呼ばれた。

「殿下のこと、触れるなよ。ミズキとは無理矢理」
「わかっている」

それは運命だからと無理矢理くっつけるような真似はするなということだ。ミズキが殿下に抱いた嫌悪感、殿下が素直になれない性格なのも重々承知の上で話し合って決めた。もちろんミズキの夫となった二人とも話し合っている。いずれは結ばれるであろう二人を無理矢理ではなく自然のままなんとかしてもらおうと。方々があの二人のために動いてはいるが、肝心の本人達が

「行くぞ」
「「はい」」

気持ちが落ち着いたのか殿下はシャキッとしていた。トイレに行ってヌいてきたらいいのにとかいいそうになったが、言ったら謹慎処分になりそうだ。
そんなことより今夜が楽しみすぎて足取りが軽くなっている。途中何度か人にぶつかり、スキップをしかけてお叱りを受けた。






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