乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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結婚式なのに夫とだけ踊ればいいというものでもないらしい。

「異世界の花嫁様、どうか一曲だけ」
「ミズキの相手はすでに決まっているのでお引き取り願おう」
「しかしっ」
「そもそも招待客に貴殿はいたか?大方貴殿の父や祖父が招待されて一緒に来たのだろうが、本来なら摘まみ出してもいいのだぞ?」

そそくさと去っていった青年?は彼一人ではなかった。

「もうさー、何人目?」
「さぁ?忘れてしまいましたよ」
「警備めっちゃザルじゃない?」
「貴族しかいませんからね、断りづらいのもあるんだと思いますよ」

貴族のくせに結婚式に勝手に来るとかやばいでしょ。ワイングラス鳴らしとけってかんじ。あたしの知ってる貴族なんてそんなもんだもん。
まぁさっきっから来るのは古代文字のおじいちゃん達の親類や招待した人達の兄弟達らしい。もう爵位も息子に譲って悠々自適な生活をしているはずのおじいちゃん達や自分の兄弟がまさか異世界の花嫁の結婚式に正式に招待されているなんて思いもしなかったのだろう、自分も異世界の花嫁の夫の一人に選ばれたいという思いで無理矢理ついてきたのに、ジョエルに素気無く対応されて終わりだ。あたしは一応申し込まれてるからいるけど、なにもしない。ダンスの相手はほぼ決まっているらしいから。ノアとジョエルと踊ったあとはノアとジョエルのパパと踊った。あとは公爵当主の2人とジョエルの弟、あとは陛下と王太子、第3王子までが決まっていた。多くない?それなのにマナーの先生やルネさんと踊ってちょっとジョエルにイヤな顔をされた。でも、「ジョエルはミズキが疲れないようにって決めてくれてたから」なんてノアに言われたらニヤニヤしてしまう。

「ジョエル」
「なにか?」
「好き」
「っ…!」

曲間でグラスを傾けながらそう言えば、なかなか見ることができない狼狽えたジョエルが見れた。
今日のためにジョエルが頑張ってくれていたのも知っている。好きをちゃんと言葉にして伝えるのも妻の役目だろう。

「今日はある意味初夜ですから…ノアには申し訳ありませんが、仕事を入れさせてもらいます。結婚の初夜は私に」

また職権乱用してる。でもこの世界にきての初めてはノアだったし結婚した日くらいジョエルでいいのかも。

「ミズキ様」

一応人前なのでミシェルは様をつけてあたしを呼ぶ。

「殿下からダンスの順番を変えてほしいと。申し訳ありません、ラストダンスは陛下ではなく殿下とお願いいたします」

ミシェルの顔も口調も王子様の執事仕様だから結構ガチ目なお願いらしい。横のジョエルを見上げれば少し怪訝そうな顔はしていたけれど「いいんじゃないですか?」と了承したみたいだった。それにしてもダンスが多い。王太子とかおどらなくていいんじゃない?削れない?ってジョエルに言ったけど無理らしい。
その殿下は大きな商談の話を公爵だか侯爵としているらしい。今踊ってる公爵様に聞いた。公爵は今は国に3家、2つは陛下の弟お二人が当主でもう1つは殿下のエスコフィエ公爵。しんせきこーからしい。リュカもいい男なんだけどね、姫の御眼鏡に敵ったのはジョエルとノアールだけだったねと笑顔で言われた。なんかこの人みたことあるなーって思いながら踊っていたら次の公爵も似てた。遺伝子すげー。言ってくることもそっくり。遺伝子やべぇ

披露宴っていうかダンスパーティーじゃんってくらい踊らされて正直ヘトヘトだった。せっかくの酒ももう半分くらい抜けてる。ノアにはいつも飲み過ぎてるからたまにはいいんじゃない?って言われたけど、お酒はあたしのガソリンみたいなものだから必須なのだ。「終わったら二人で空けましょうね」ってお気に入りのシャンパンのボトルを見せてくれたジョエルのおかげでもうちょっとだけ頑張れる。そう、あとは最後、王子様とのダンスだけなのだ。あっ殿下って呼ばなくちゃ

「ミズキ」

御披露目のときは断ったこの手をとる。なんだろう、あんなにイヤだと思っていたのに取られた手には違和感も嫌悪感もない、不思議な感覚だ。
ホールのど真ん中、ラストダンスだから踊るのはあたしと王子様だけ、あたしにはノアとジョエルがいるのに王子様と目が合って離すことができない。曲がかかってゆっくりステップを踏めば誰と踊ったときよりしっくりくるかんじになんとも言えなくなる。前回はダンスがどうこうよりもひたすら貶されてた記憶しかなかったからイヤな思い出でしかなかったのに。吸い込まれそうな青い目も目線をそらすことができない。キラキラした金髪に青い目、もうマンガじゃんってこれゲームなんだわ忘れてたって思いながら心地よいダンスを続ける。マジ不謹慎だけどこの時間が続けばいいのにって思う自分と、夫2人に申し訳ないから早く終わってほしいと思う自分がせめぎあってる。マジ厄介。マジなんなの?

「ミズキ…」

そのとんでもなく好みの顔で名前を呼ばないでほしい。もう絶対何かはわかってるけど認めたくない気持ちが出かかっててどうしたらいいかわかんない
曲が終わって礼したら走ってノアとジョエルの所へ戻った。早く抱き締めて欲しくてノアに抱きついてキスしてもらった。これが最後だって聞いてたからリップの塗り直しもないはず。ノアの腕の中にいたからノアとジョエルがどんな顔で王子様をみていたかも、王子様があたし達をどんな顔で見ていたかもわからなかった。











「えーーっ!?魔術師団の警備の不備が多いから見直し!?初夜なのに!正式に夫婦になってからはじめての!」

ジョエルの言い分としては、今日の警備は主に魔術師団がやったのに、招待客以外も通しすぎているから理由を探ると同時に対策を練ろと。ノアは初夜だから嫌。確かに近衛騎士の人達は王様をはじめとした親戚一同の警備で大変だったから魔術師団が代わりに警備を担っていたのはわかる。でもそれを新郎のノアに押し付けるのはどうかと思う、自分が独り占めしたいからって

「ノアがもう少し詰めて話をしていればよかったんですよ。ミズキに求婚してくるような貴族がいたのはわかりきっていたことでしょう?」
「それは…」
「私は挙式前までに全てをやりきりましたよ。明後日からの結婚休暇のために。ノアはその間なにをしていました?交代でミズキについていたとはいえ、ロランやミシェルがいたでしょう?」
「……」
「ノアはただミズキとセックス三昧でしたよね?まぁ途中色々ありましたけど、私よりもよほどミズキと過ごしたはずだと」
「…」
「では行ってらっしゃい」
「…行ってきます。早朝には帰れると思いますから」
「えぇ。起きていたらノアも混ぜますから」

いやいや、着替えしてる横で聞き捨てならないようなこと言われたんだけど。ありえなくない?二人とも3Pしたがりすぎじゃない?あたし絶対イヤなんだけど

「ほら、ミズキお風呂はいるんでしょう?」
「…はいる。でも3Pやだ」

どうせノアの仕事はどうせ寝てる時間にならなければ終わらないから安心しろと言われてゆっくり浸かった。化粧も濃かったし念入りに落としてジョエルと色々話ながら。結婚したけど知らないことはまだまだたくさん。のぼせる寸前までお風呂でお喋りして、いつものスケスケのやつ着せられて転移じゃなくて手繋いで寝室まで行った。珍しい

「処女じゃないことは知っていますけど、式をした今日くらいは初夜だと思ってしましょうか」

この国、世界でのはじめてがノアなことは若干引っ掛かってるっぽい。しかもいつものノアじゃなくて小さいノアだったから。現代なら捕まってるよなーとか今になって思う。
初体験とかどうだったとかもうなんとなくしか思い出せないから、ノアやジョエルとが初体験くらいでいいんじゃないだろうか?5年以上前のことだし。




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