乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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【ノアールテロ事件】



「だから嫌だと!」
「あなたも夫なのですから行きますよ」

ミズキが眠っている間に国の中枢の人間達の集まる会合に参加しろとジョエルにつれてこられた。正直好きではない。王家の方々は自分には好意的だけれど、殆どの人間はそうではない。ジョエルの父上はミズキとの婚約を期にすこしだけ当たりが柔らかくなったような気がする。元から悪くは思われていなかったが、道具として見られていたような気がしていたから。

「私は後ろに控えておりますので」
「あなたも当事者なのですから私の隣ですよ」

ミズキがみたら大笑いしそうな大きなテーブルに国をまわす諸侯達。空気は最悪、どうせ何か言いたいんだろう。ミズキは夜会には出てるし問題もないはずなんだけど。
陛下が来てやっと話が始まる。ジョエルはいつもこんな面倒な会にでなければならないなんて、高位貴族も大変だ。早く本題に入ればいいのに、媚びへつらいながら建前だけの話をさっきから延々と。早く戻りたいのに。

「異世界の花嫁なる女性は女性なのに古代文字研究の方へ行っているというではありませんか」
「そうだ!女なのにはしたない!」
「卑猥な写真を連日大衆紙なんぞに載せられて恥ずかしくないのか?」

言いたい放題言いやがって。色んな人から抑えろと念話が飛んでくるが、自分の妻が知りもしない人に貶されて我慢しろというのは無理な話だ。隣のジョエルもイライラしてる。
しまいにはジョエルは婚姻不履行にして自分の嫁を妻と据えろだの言い出すし、僕なんて国のために魔物と戦えばいいだの言い始めた。ジョエルの父上の万年筆の先はとうに曲がっている。

「あの女など国のためになるというなら娼館に買ってもらえばいいではないですか。国庫に金も増えますし、まさしく国のために働いていると言えましょう」

リュカ殿下が怒りで立ち上がったと同時に僕の怒りが限界だった。発言した人の後ろの壁を魔力で爆破させてしまった。

「ノアール」

陛下の声が聞こえてすぐに元に戻した。戻したところでその場は静まった。やってしまった。本当にやってしまった。国の中枢の人間達が集まるところで魔力をぶっぱなしてしまった。やばい、服が大きい、相当量を使ったことがわかる。

「ノアールは皆様方のお話のせいで冷静ではいられないので退室させます。どうぞそのままお待ちください」
『クソジジイ達にはあとで言いますから冷静になりなさい、ミズキの所へ戻りますよ』

ジョエルも一緒に夫でよかった。早くミズキに会いたい。




















【未来の嫁を監視する】



息子達はやらかして嫁取りに失敗した。陛下のせいなのに陛下は認めないし笑っている。お前のせいでうちの息子も嫁取りに失敗してるんだよって怒鳴ってやりたかった。ムカつくから次の日からしばらくお茶は薄めと濃いめを交互にだしてやった。ちょうどいいやつは出さなかった。

久々に陛下の護衛の任に就いていた騎士団長があまりにも機嫌がいいので苛立ちをおぼえる。くっっそ。どうせお前の次男が少しだけ異世界の花嫁と進展があったからだろ。魔術で見てるから知っている。
うちの次男は彼女の身支度を担当しているのに進展が見られない。それも魔術で見ている。なんとかキスまではいったがそれ以上は進展しない。夫となることが確定している2人は毎日のようにセックス三昧だというのに。まぁ彼女が複数プレイを好かないということだけは息子に教えてあげることにする。





ビールをメインにしたガーデンパーティーを催したいと宰相補佐に言われたので設営やらメニュー諸々を手伝った。陛下は何もしなくても息子と異世界の花嫁は結ばれると思っているようだが、正直一番脈がないのが殿下だと言ってやりたいくらいだ。

「冷たいのがいいらしいんですよ。ラガーが」
「それはまぁ…手間がかかるものがお好きなんですね」
「ミズキがいた世界では缶に入って冷えに冷えたラガーが一般的だそうですよ。こちらは常温のエールのほうが一般的ですけど」

この宰相補佐がこんなにも伴侶を思いやる人だということが一番の驚きかもしれない。彼女の喜びそうなことをすべてやりたいというのはこの人も人間だったし男だということだ。
結婚式はこの庭で行うから予行練習のようなものだと

「大聖堂ではないんですか?」
「えぇ。最初の結婚式くらいは彼女の希望に沿いたいんですよ。2度目があるのならミズキの思い通りにできない可能性のほうが高いですから」

表情にも声にも出さないようにするが心の中は歓喜に沸いている。大聖堂以外の場所で結婚式が許されない人と2度目があるかもしれないということだ。


会場で直接調理をしない者や給仕達と少し離れたところから彼女のガーデンパーティーを見ている。声?そんなもの魔術で拾えばいい。呼ばれていない殿下が宰相補佐様に無理を言って来たらしい。うちの息子は呼ばれていたけれど。
そんなことを思っていれば異世界の花嫁(未来の我が家の嫁!いや?息子が婿か?)が走っていってしまった。意外だ。あんなにも溺愛している筆頭魔術師を置いて。置いていかれた彼は唖然としている。
誰が追いかけるのかと思いきやまさかのロラン。うちの息子のほうが早ければ行っただろうに、どちらかは殿下についていなければならないから出遅れた。くそっ

「公にしないって約束してくれるなら」

とんでもないことを言ってなぜかロランの告白が成功している。これも魔術で見ているんだけれど。彼女の前でだけよく転んだりするロランはまたこけて胸を鷲掴みにしていた。わざとじゃないなら一体なんなんだろうか。いつも見ているがあまりにも幸運すぎる。











【王子様は側近に先を越される】



おかしい、おかしすぎる。

「殿下、こちらの書類にも目を通してください。私は別の仕事が入りましたので一度下がります。他の者を置いておきますのでどうぞ仕事をお続けください」
「殿下、今日は宰相補佐殿からの依頼で席を外しますので、別の者を傍においておきます」

本来の職務からは離れるのに、妙に嬉しそうな自分の側近2人は最近おかしい。今までは別の仕事が入るのは断っていたはずなのに。

「ミシェルは?今日の仕事とは?」
「はっ、ミシェル様は本日異世界の花嫁様のヘアメイクと着付けをされるようで」

今日は昼過ぎに出て行ったミシェルのことを侍従に問えば、そのような返答だ。別日にロランの部下へ聞いた時も「異世界の花嫁様の御夫君方が不在とのことで宰相補佐様より依頼が」と言われた。なんで俺にだけなにもないんだ!?

ミシェルがヘアメイクと着付けだといなくなった夕方、帰ってきたミシェルに髪型を整えられながら疑問をぶつける。

「なんでお前だけミズキのところへいくんだ?」
「呼ばれたからですよ。好きな女のためならなんでもしてあげたいじゃないですか」
「お前は俺のっ」
「殿下より自分の恋のほうが大事です。将来がかかっているんですよ?おわかりですか?」

なにも言えなくなってしまった。俺だって好きになった女といたい、避けられているけど。仕事という名目でも会って触れられるこいつが羨ましくて仕方がない。
好きだと伝えても伝わらず、もうどうしたらいいかわからない。
そのあと夜会に彼女の姿があったが、ジョエルと一時も離れず一緒にいて、話しかけるチャンスすらなかった。後ろの男2人も同じだろうが。




「宰相様より、殿下に裁決いただきたい案件だと」

ミシェルが持ってきた書類は別に第3王子でなく、宰相本人の判断でどうにでもなるようなものだった。最近妙に多い気がする。いちいちイヤミったらしいメモも隠して添えてくるのもあの一家らしい。


『ロラン殿はミズキの恋人になられたそうですよ』

過去一の衝撃のメモだった。メモで寄越すような内容でもないし本人からは何も聞いていない。

「ロラン!ロランはどこだ!?」
「ロランでしたら本日は、その…」
「なんだ?」
「いえ…その…」

なんとなく想像がついているから話せと言えば、仕事は公休、新しく出来た恋人の元へ行っていると。これだけ派手に行動すればすぐに自分にもばれるであろうに隠したことが気に食わなかった。そもそも部下には隠しているつもりなのかもしれないが、大半の人間にはバレていると思わないのだろうか?

「くっそ…今からっ」
「殿下、これから会議なのをお忘れですか?それとも学生の頃のように反省文でもお書きになります?」

ミシェルはどんどんミシェルの父に似てくる。こんな笑ってない笑い方は本当に親子だ。メモを見つけて笑っている。

「知らなかったんですか?この前の庭での催し物の日ですよ。私のほうが先に彼女に頼んでいたのにロランに先をこされてしまいましたよ」
「は?」
「まぁでも御夫君達からまだ性行為は禁止されてるようですよ。キスは許されているからたまにしているのを見ますし」
「はぁっ!?」
「この前の夜会もテラスで一瞬二人きりになってしてましたよ。殿下の真後ろのテラスだったのに気付きませんでした?ロランが護衛なのに私に『頼む』の一言で、殿下の元からほんの少し離れて、夫が席を外した彼女とロマンティックなキスですよ」

護衛が一瞬離れたことに気付かない自分も自分だが、職務を放棄して夫に連れられてきていた女とテラスでキスをしているロランはとんでもないやつだ。これこそ恋の病だろう。仕事より優先するのか?なにが近衛騎士だ、普通に失格だろう。

「まぁ私も彼女の身支度をお手伝いさせていただいてますからね。いい思いはさせてもらってますよ」

鼻で笑うあたりバカにされている。お前はダンスすら踊ってもらえないもんなと言っているようにしか思えない。

「お前だって付き合ってすらもらえないくせに」

そのあと用意されたお茶は近年稀に見る不味さだった。






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