46 / 77
46
しおりを挟む馬車ってかぼちゃのイメージがいまだに抜けないから、今度は丸い馬車に乗せてもらった。今度はかぼちゃから?って聞いたら、かぼちゃではありませんよと運転手さん(ぎょしゃさんらしい)に言われた。あと先に馬は馬だし、自分も後ろのフットマンも人間だと言われた。前回と同じ人だ。
「せっかく水色のドレスにしたのにー。あたしが着ると子どもっぽくなっちゃうけど、馬車乗るなら水色なんだよね」
クラシカルなアップヘアにして、ドレスと共布のカチューシャに黒いチョーカー。もはやプリンセス、あたし!馬車はかぼちゃじゃないし靴もガラスは却下されたけど。チョーカーの真ん中にはいくらかわかんない宝石がぶら下がってる。
ちなみに今日のお支度当番はミシェルじゃなくてミシェルパパだった。イケオジだった。おじさんなんて年齢じゃないかもだけど。落ち着いててなんかいい匂いした。耳元で囁かれるとドキドキして恋か!?って思ったけど、コルセットの締め方がミシェルと一緒で一瞬で冷めた。マジ親子。容赦なさすぎ。楽しくごはんたべる目的って言ったら緩めてもらえた。あっ、ミシェルより好き。
「ミズキ様のような方が愚息の妻であればいいのですけれど」
「へぇー誰かいるといいね」
「ミズキ様へ恋人からと申し出があったと思いますが?」
姿見越しに目を合わせながら言うことか?むしろなんで知ってるの!?
「城の中のことで私が知らないことはありません」
こっわ。え?なんで?ちょーこわいんだけど。なんで考えてることわかんの?すっごい微笑まれてるんだけど、それすらこわい。目笑ってないとかまさにこの人のことじゃん。
「なぜかうちの愚息ではなくディヴリーの次男が貴女様の恋人にちゃっかり収まってるんでしょうかね?我が愚息はお気に召しませんでしたか?」
このタイミングでチョーカー合わせてくるとかおそろしすぎるんだけど。あれ?あたし絞め殺される?
絞め殺されなかった。ベロアのチョーカー、リボン止めはゴールド。かわいい。好み。真ん中のは??
「これは私と妻からミズキ様へ贈り物ですよ。まぁ賄賂とでも申しましょうか?愚息のことを頭の片隅にでも置いていただけたらと思いまして」
聞きたいことは先に答えられるし、今日がどんな日かわかってこんなことをしてくるんだから、ミシェルパパとミシェルママはほんといい性格してると思う。お手を失礼と左手を触られて、ネイルのチェックかと思いきや薬指の根本をさわって「5号ですね」とかこわすぎる。ジョエルよりヤバイ奴がここにいた。
「今日もミズキはお姫様だよ」
「ありがとうノア。ノアがいなかったらあたし泣いてた」
「どうしたの!?」
「ミシェルのパパ恐ろしすぎた…」
「あぁ…うん…いい人なんだよ?」
思い当たる節があるようだ。まさかノアも触っただけで指輪のサイズ当てられたとか?って聞いたら、服のサイズを見ただけでピッタリ当てられたとのこと。オーダーメイドで靴までピッタリだったとか恐ろしすぎる。確かに、今日の靴も履き心地がいいかもしれない。なんてすごい才能の持ち主なんだミシェルパパ。え?もしかしたらスリーサイズとかも全部わかられたってこと?あたしもわかられてるじゃん!
「たぶん今度贈られてくるよ」
「うん、なんかそんな気する…」
あの親にしてこの子あり的な?蛙の子は蛙的なやつだ。贈られてくるとしたら多分服じゃなくて下着だと思う。
「ホテルやばっ!でかっ!」
異世界のホテルなんてそんな大したものじゃないだろうって思ったら、あたしが日本で知ってるようなホテルだった。高層ではないけど思ってたホテルだった。
「僕も仕事以外では来たことない…」
「マジ高級ホテルじゃん。やばっ緊張するんだけど。こんなコスプレみたいなドレスでよかったのかな?」
「かわいいからいいんじゃない?」
まぁコスプレだってわかるのは例のヒナ様しかいないだろうし問題ないか!あーあ今日だけでも金髪にしてもらえばよかった。
城より豪華なんじゃないかと思われるホテルの入り口にはジョエルの家名とノアの家名が貼り出されていた。なにこれ、○○様御一行みたいなもん?道順も矢印とか貼ってくれればいいのに、わざわざホテルマン(ホテリエでございますって言われた)出てきて案内してくれた。流石国一番の高級ホテル。フロントには女性がいた。この世界で働いてる女の人初めて見た。すげー。やっぱめっちゃエリートなんだろうな。
「ねぇノア、ホテルの建物の中なのに噴水あんだけど」
「だから。びっくりだよ」
大きい声で話してもアホっぽいから小さな声でノアと話す。念話でもいいけど、もうこれは頭の中に留めておけない。だって噴水!
「天井もやばいよ、3階分くらいあるよ。お城みたい」
「ミズキみて、シャンデリアの奥というか天井。すっごい絵描いてある」
でもやばすぎてもう普通に喋ってる。もはや修学旅行にきた学生並みになってきた。こんなときでも笑ったり吹き出したりしないこの人はめっちゃちゃんとしたホテルマンさんだわ。
「こちらのレストランもお勧めですよ。是非旦那様方とお越しくださいませ。異世界の花嫁様の御予約でしたら最優先にさせていただきますので。」
あまりにもあたしとノアがなんにでも反応するから、施設案内しながら進んでくれるホテルマンさん。レストランもこれ何個目?3つ?
「ディナーもいいしランチもいいよね。絶対来ます!」
「御宿泊も是非」
「えー、ルームサービスも気になっちゃうよねー。困るー」
ノアときゃっきゃしながら歩いてたら変な絨毯の上に立たされた。
「特別なお客様のみ御案内いたします転移陣です」
絶対邪魔されないように転移できないバリアみたいなの張ってるところで顔合わせらしい。え?こわっ。ノアでもちょっと厄介らしい。
着いた所はホテルが見える別棟だった。最初からこっちに案内してくれればいいのにって思ったけど、多分それはできないのだろう。あの絨毯みたいなやつの転移陣に入らなければいけないらしいから。
そんな厳重な場所はただの宴会場だった。煌びやかな宴会場だ。なんでって?みんなお酒が入って大声で笑って楽しそうだからだ。
「ミズキっ」
小走りであたしたちのところに来たジョエルに抱き締められた。え?これジョエル?
「ようやくだ。あと2週間後には正式に夫婦だ。長かった」
「いや、短いし早い」
顎クイ!顎クイされて親族達の前でキスされた!しかも舌入ってきたし!
ジョエルのパパとノアのパパが大笑いしてる。
「父さん!ジョエル様に何をしたんですか?」
「いや、ただこの坊っちゃんが素直になれればとちょーっとドリンクに細工をしたらコレだよ。お前といるから耐性があるのかと思ったけれど意外と無防備なんだな。あっはっはっは!このままだと異世界の花嫁がこの場で脱がされるぞ」
「駄目っ!ジョエル様っ!」
ノアがドリンクにかけられた魔術なるものを解いたらジョエルはいつも通りの敬語に戻ってしまった。素のジョエルはセックスの中盤くらいからしかでてこないから今のはちょっと嬉しかった。あとでノアに頼んでノアパパに教えてもらってほしい。
今日の主賓はあたしだったのか。もはや二次会みたいなノリになっている。きっとあたしがミシェルパパに苦戦していた時からこの宴会は始まっている。
「お義姉様!」
嬉しそうにやって来たのは年上の義妹、ジョエルの弟さんの奥様だ。
「ごきげんよう」
ジョエルにさんざん躾られた挨拶はきちんとできた。本当にさんざん躾られた。どこに出しても恥ずかしくない程度には出来てくださいと数時間ごきげんようの挨拶だけやらされたものだ…
「お茶会を催して下さいとお願いしてしまい、申し訳ありませんわ。夫達にもお義父様達にも叱られてしまいましたの」
あたしよりよっぽど女の子らしいこの年上の義妹に感心してしまう。あぁ、これぞ女の子。女の子は失礼か、女性。あたしも仕事ならぶりっこできるけど、年上の義妹はナチュラルだ。教育すげぇ。
「先程支配人とお話しましたのよ。このホテルであれば、私が主催してもお義姉様をお招きするのに失礼にはあたらないと。お義姉様もお気に召して頂いたようだとお喜びになっておりましたわ」
支配人なんて会ったことねー。って思ったけど、さっきのホテリエさんがまさか支配人?いや、絶対そうだわ。義妹さんに使ってもらうためだったんだ。やべぇ支配人恐るべき人材。
「え、えぇ。」
言葉遣いも普段なら直さなくていいけど、公の場のときは弁えろと。先生に言われた。あと先生の奥様。先生はあたしのところに奥様と一緒に来る権利を勝ち取ったみたいだ。
普段のしゃべり方では貴族社会ではナメられる、むしろバカに見られると言われてイラっとしたからちょっと直した。全部は無理。ヤバイはなるべく使うなって言われたけど、ヤバイってちょー便利な言葉だって使うなって言われると気づく。なんでもヤバイで済むんだもん。とにかく笑顔で返事だけすればやっていけるから乗り切れと言われている。
「結婚式のご準備でお忙しいでしょう?終わってからご招待してもいいかしら?…お義兄様、どうかしら?」
「結婚式のあとは新婚旅行に行くつもりでしたからね…考えさせてください」
「…わかりましたわ。残念ですけれど」
年上の義妹はジョエルを睨み付けているのだろうが、多分ジョエルはなんとも思っていない。
新婚旅行行くの?初耳!ジョエルとノアって同時に休み取れるの?
11
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。


捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる