乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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「ミズキは働きたかったのですか?」
「うーん、だってあたしここでは何者でもないでしょ?まだここに来てから24時間も経ってないし。まずは手に職かなーって」
「私とノアールがついていますよ」
「専業主婦?でも料理とか掃除とかないんでしょ?さっさと子どもうんで子育てしろ系?」
「そうではないですね。料理や掃除などは執事や侍従、シェフや下働きの者がやってくれますし私とノアールができます。子どもは…そうですね。すぐには考えてはいないです。もう少し貴女を愛したいので」

すごく真面目に話してる気がするけど、いきなり愛したいとかぶっこまれたから照れてしまう

「そういった反応もとても可愛いですよ。しかしミズキ、お給金というこもはお金が欲しいのですか?」
「先立つものがなければ何にもならないからね」
「私とノアールの稼ぎでも十分だと思いますが…

「でも主婦希望というよりはせめてパートかアルバイトはしたいかな。だって家事もすることないなら何してるの?」
「貴族の女性は複数の夫がいますから夫の相手やお茶会、あとはショッピングなどですかね?」

なんにもしない専業主婦ですらないならなんだ?とは名だけのお姫様みたいなものか。あたしには向いてない。

「ジョエルがそんなにイヤなら働くのは我慢するけど、せめてお手伝いくらいはさせてほしいな。お給金目当てとかじゃなくて、なにもしないのが耐えられる気がしないんだよね」
「ミズキはまだ何も考えなくていいですよ。まずはこの世界に慣れるところからですから」

そう言われればそうかも。まずは慣れるところからだ。このロングスカートも慣れなきゃならない。コスプレだと思おうにも毎日だともはやコスプレではなくなる

「二人で話せたか?」
「えぇ。まぁ少しですがね。私には国の過去よりもミズキのいた世界のほうがよっぽど興味深いですよ」
「それは知らない世界だからだろ?文明もなにもかも違うんだ。それよりこれ、ミズキ殿はわかるか?」

出された紙に書かれたのはよくわからない日記?

『今日はとても天気がよかった。釣りに出かけた。釣った魚を捌いていたところ、細い虫のようなものが出てきた。あまりにも気持ちが悪い物体であった。』

「アニサキスの話?」
「アニサキス?」
「魚にいるんだよね。糸みたいな虫?胃を噛む?食い破る?冷凍したりめっちゃ熱せば死んじゃうらしいけど、生とかだといるの。めっちゃ気持ち悪い」
「魚にいる糸みたいな虫…」

ジョエルの意識が飛んでいきそう。虫が嫌いなのか寄生虫的なものがダメなのか。そもそもそんな寄生虫とかの概念がこの世界にはあるのかな?水虫とか?

「ミズキ殿はその虫のことまで知っているのか!釣りのところまではなんとか解読できていたのだが、それより先は正直定かではなかった。本当にわかるのだな」
「なぜか読めるんだよねー。不思議」
「恐らく研究などしなくても簡単に読めてしまうんだろうな。流石は異世界の花嫁と言うべきか…」

そこであたしは気付いてしまった。なんでも読めるならこのおじいちゃん達の仕事はどうなってしまうんだろうかと。え?仕事奪っちゃう?ヤバイじゃん。再雇用とか?でもおじいちゃんだよ?

「ジョエル…マジでやばい事実に気付いた」
「どうしたんです?」
「あたしがいたらおじいちゃん達仕事なくなっちゃう…」
「あぁ、別にいいんですよ。この人達は趣味でやってるようなものですから。ミズキは答え合わせみたいなものになりますね。ここの人達はそれだけで大喜びですよ」
「そうだそうだ。すべてミズキ殿が読んでしまえば仕事はなくなるが、これだけで食べてるヤツは少ないよ。みんな領地収入やなんやらで色々稼いでいるからほぼ娯楽だ」
「娯楽なら給金は下げても大丈夫ですかね?」
「いや宰相補佐官殿、それは勘弁願いたい」
「妻と子には内緒の小遣いですよね。内緒とはいいつつ皆さんの奥方達は」
「皆まで言うな…」

趣味を小遣い稼ぎにしているから問題ないってことか。奥方とは奥さんか。どこも世界も結婚したら女性が強いのね。

「今日はミズキをここに連れてきたかっただけです。機会をみてまた来ますよ。そちらからミズキに何かあれば、私かノアールにでも知らせてください」
「筆頭魔術師殿には発掘を手伝ってもらえるからな。そちらの夫婦には研究所一同世話になるよ」
「では」
「ミズキ殿、お茶だけでもいいからいつでもこちらに来ていいからな」
「わーい!ありがとう」

おじいちゃん達の研究所を出てジョエルとまた廊下を歩く。さっきはエスコート?だったけれど今回は腕を絡めて手も恋人繋ぎだ。

「ねぇ、さっきと人違うくない?」
「暇なんでしょうね。羨ましい限りですよ」

前後にいた近衛と執事?侍従が変わっている。暇だからかわったの?暇なら変わらなくない?相変わらずジョエルはついてくる人達に容赦ない。
ある部屋の前を通ったらなんか嗅ぎ覚えのある匂いがした

「ジョエル、ここは?」
「シガールームですよ。葉巻の愛好家は多いですからね」

昨日禁煙しようと決めたのにちょっと揺らぐ。残り何本だったっけ?半分もなかったはず

「ミズキ、吸いますか?」
「いや、葉巻じゃないし…肩身狭い」
「じゃあ昨日みたいにバルコニーに行きましょうか?」
「でも…」
「ノアールが子どもではないとわかったでしょう?ミズキが禁煙するつもりならそれはそれでいいですが、慣れない環境で無理に禁煙するのも負担が大きいですよ」
「うーん…甘やかされちゃおうかな」

自分の意思の弱さに笑えてくる。禁煙、明日からがんばる

「でも持ってきてないよ?」
「私が持ってきてますよ。この袋で間違いないですか?」
「そう!ありがとージョエル」

ヒールは履いてるけどちょっとだけ背伸びしてほっぺにキスしてあげる。やべっグロスつけてたからラメついてるって思ったらやっぱり口にちゅーされた

「ミズキは本当にいけない人ですね。こんな人通りの多いところでいきなり頬にキスしてくるなんて」
「そっちは口にじゃん…」
「じゃあお互い様ですね」

今度はどちらからともなくまた唇を重ねてキスをする。

「ふふっ、本当に貴女はいけない人ですよ」

とてつもなくご機嫌になったジョエルにあたしもつられてしまう。

「ジョエルすき」
「私も好きですよ」

二人でいちゃいちゃしながら来た道を引き返す。行きより陰口?は減ったが相変わらず視線はすごい。あれでしょ?ジョエルがいい男だからでしょ?あたしの旦那様すごくいい男なの!優しいし!だーいすきって大声で叫びながらこの廊下を走りたい。

「ジョエルはどこで働いてるの?」
「執務棟ですよ。通ってもいいですが、私はミズキ以外に捕まりたくないので正直近寄りたくないですね」
「うーん、じゃあまた今度ね。ノアは?」
「ノアールは魔術師団の詰所に。一応外に詰所がありますから、魔術師団の詰所が見えるバルコニーにしましょうか。塀の外なのですこし遠くに見えますが、庭の緑や花がキレイですからミズキもきっと気に入りますよ」

お花を愛でるような女の子ではなかったけど、イングリッシュガーデン的なかんじなんだろうな楽しみ。
ジョエルは後ろにいた侍従さんになにか目配せしてたけどどうしたんだろう?

「邪魔が入らないといいのですが」
「なに?そんなヤバい所なの」
「いいえ、ただ花よりもミズキのほうが魅力的ですから心配なだけですよ」
「もー!ジョエルってば!」

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