5 / 77
5
しおりを挟む
螺旋階段を上がったり下りたり一体何階なのかはわからないけれど私に与えられたらしい部屋へ着いた。部屋というよりももはや家。眼前には大きすぎるリビングのような部屋。リビング以外の表現がわからない。ダイニングテーブルとかはないの?キッチンは?暖炉あるじゃん!鹿の顔も!頭の中はもうパニックだ。そしてなによりも部屋の中にまた螺旋階段がある。ここメゾネットタイプだわ。ますます何階だかわからない。しかも上にだけかとおもいきや下にも続いてるよ。なんだここ
「奥の間と下は少しアレなので申し訳ありませんがこちらのサロンで」
アレとやらは気になるがおそらく掃除行き届いてないとかだろう。こんな広さがあればそうだろう。誰だって嫌だ。
「はぁ~つっかれた!」
大きなソファーに思いっきり腰掛ける。やっと寛げるかんじ。このだだっ広いソファーなのにノアとジョエルは真横に座ってきた。
「いや、なんでこんなに広いのにこんな至近距離に座るの?」
「私達3人はもう夫婦ですよ?これくらいの距離感は普通ではありませんか?」
そういって腰に手をまわしてくるジョエル。なんだこれ接待か?あたしは接待でもさせられるのか?
しかし夫婦か、そうか夫婦だ。夫は二人だけれど夫婦。
「手を、繋いでも、いいですか?」
上目使いでかわいいおねだりをしてくるノアには勝てない。
「うん、いいよ」
恋人繋ぎして太股の上に置けば顔を真っ赤にして俯いてしまったけれど、なんとなく喜んでいるんだろうなというのはわかるのでこちらはにやにやしてしまう。なんてかわいいんだノア。かわいいノアのためならなんでもしてあげたいよ。この世界じゃ住所不定無職の一文無しだけどね
「ところでミズキ、先程のタペストリーが読めたというのは本当ですか?」
「あー本題。そうそう。迷信じみたやつだけど日本と一緒だなーって。しかもそれ織物にしちゃう!?って関心もっちゃったんだよね」
「内容を伺いたいのも山々ですがこの国の古代文字はまだ解読できていないものが多く、そこまで読める人間はいません。まして内容が女児を授かりやすくする迷信となれば国の一大事です」
バカでもわかる、あの場で口にしていたらとんでもないことになっていたんだろうなと今更ながらジョエルが止めてくれたことに感謝しかない。でも内容は現代ではただの迷信と言われているものばかりだし役にたつとは思えない。
そもそも女の方が極端に少ないってなんでなんだろう?きっと理由はあるんだろうけどあたしが気にしたところでどうしようもない。
「申し訳ないのですが、明日には研究機関で専門の方々とお話をしていただきたいのです。」
「いいよ。なんも予定ないし。ジョエルもノアも一緒なんでしょ?」
「私は一緒ですが、ノアール、あなたの明日の予定は?」
「任務はありませんが、魔術師団に顔は出す予定でした。」
「では終わり次第合流という形ですね。あの方々がミズキをそう易々と解放してくださるとは思いませんし」
どんなところへ連れていかれるんだろう。あの方々とやらは会う前からやばいやつらだというのはわかった。
「え?ノアって魔術師?魔法使いなの?」
「言っていませんでしたか?ノアールは国一番の魔術師ですよ。あなたの召喚もノアールが行いましたよ。」
「えっ!?すごーい!魔法使い!火出したり凍らせたりとか?」
「大抵のことはできますが…ミズキを喜ばせてあげられるようなものがあればいいんですが…」
「え?そもそも魔法って概念ないから何見ても絶対感動する!」
「この国はほとんどの者がなにかしら魔術は使えますよ。私も使えますし、家政に特化したものや戦闘に特化したものもいます。しかしノアールのようにまんべんなく高位の魔術が使え、魔力の保有量も多いものはほとんどおりません」
「ノアってすごいんだね!!」
繋いでいた手をもう片方の手でおおってノアを見つめる。まだ照れてるほんとかわいい
「でもさー、ノアはこんなにかわいくて魔法も使えるし、ジョエルもいいとこのお坊っちゃんで顔もいいのになんで結婚しなかったの?この国って結婚も早いんでしょ?」
疑問ではあった。ノアは小さくてかわいくても成人はしてるしすごい魔法使いらしい。ジョエルはイケメンだし身分も高そうだしなんで結婚してないんだろう?日本なら奪い合いだよ。この男達を巡って女の戦が繰り広げられていたことだろうよ
「私はただ単に爵位目当てでくる浅ましい女が受け付けなかっただけですよ。結局見ているのは父の宰相位を継ぐであろう約束された地位だけでした。そのような女を近づかせるのも嫌だったので結婚はしない、と。自分が好きになれる人を待ちたいと思っていたらもう27です。この国ならもう一生独り身だろうなと思われる年齢にきてしまいました。」
「私は…そもそもが平民の出ですし、子爵子息といえども養子です。実の親も父親はわかりませんし、そもそも体質などもあり人からは見向きもされませんでした。特に女性には…」
「なにそれ、意味わかんない。27で行き遅れって…現代じゃ男の人は30過ぎだよ?女も29!なに考えてるんだこの国の人たちは…」
そしてあたしが一番頭にきているのはノアのことだ。実の父がわからないのはこの際置いておく
「平民だからってなによ…あたしなんて超がつくほど一般市民だし、お母さん離婚してるから片親だし、仕事はセクキャバだったわよ。この国じゃ娼婦?ノアを受け入れないってなんなの…こんなにかわいくて優しくていい男なのに…」
あたしのほうが悔しくて涙がでてきた。こんなにも素敵な人を…しかも国一番の魔術師って。尊敬をしても軽蔑することなんてないのにどうして?
「ミズキ、泣かないで」
繋いでいない方の手でノアに涙を掬われるがなぜか涙が止まらない。ノアがかわいそうもあるが、お母さんなんて言ってしまったからだ。家に帰ってもお母さんは彼氏と海外に行っているからいない。だけどSNSや電話で存在だけは感じられた。この国ではスマホはイカれてしまったし家族も誰もいない。元いた場所に帰れるかもわからない。そう思ったら涙が止まらなくなった
「ノアール、ここはあなたが」
腰に回していた手を離してジョエルがソファーから立ち上がった。
「ジョエル様は?」
「私は食事の用意をお願いしてきますよ。温かい食事とお酒で少し気持ちを落ち着けましょう。ね?ミズキ」
言葉は発することができなかったが首を縦にふった。
ジョエルが出て行ったのは扉の音でわかった。落ち着かなきゃいけないとわかっていても涙がとまらない。
「ノア、お願い、抱き締めてほしいの」
人の温もりがほしかった。2人いるときはどちらに言えばいいかわからなかったけれど今はノアだけだ。
「ミズキ…」
ぎこちない手つきではあるがゆっくりとだきしめられた。むしろ抱っこされたというかんじではあるが首のあたりにノアの髪の毛が当たってこそばゆい。
「泣かないでミズキ」
本来ならここで頭をなでられたり背中をポンポン叩いてもらったりするのだろうが、ノアがぎゅーっと抱きついてくれているだけで幸せな気持ちになれる。
「ねぇノア、ノアは本当にあたしと結婚してくれるの?」
「…私は子爵家に養子として迎えられたのは幸せでしたが、それはこの魔力をどうにかしなければならないという思惑があったのも理解しています。しかし子爵夫妻は私にとてもよくしてくださいます。男性女性問わずこの魔力を恐ろしい、気味が悪いと感じられることのほうが多く結婚なんて夢のまた夢でした。」
抱き締められている腕からわかるくらいノアが震えてきたのがわかる。もういいよと言ってあげたいけれど、ノアが一生懸命話してくれているのだから最後まで聞かなくちゃいけない。涙はいつの間にか止まっていた。
「王族の方や宰相様など高位貴族の方々は私を受け入れてくださいましたが、貴族の方々には私を受け入れられない者も多数いらっしゃいます。魔術師団の中も例外ではありませんし、近衛騎士団の方々は尚更です。子爵子息という身分がありながらも男爵や貴族位、ましてや平民からも私は忌み嫌われているのです」
魔力が人よりあるから、平民から子爵へ養子に入ったから、王族達に受け入れられているから、そんなどうでもいいことでノアはツラい思いをしていたのかと思うとやるせない気持ちになる。
「陛下や閣下に言われ、異世界の花嫁の召喚の儀を行ったのは私です。閣下の御希望の方をと願いましたが、心の奥底では私を嫌わない、そのような方がいいと思ってしまったのです。そしてミズキが…」
ノアは自分のせいであたしがこちらへ来てしまったのだと思っているのだ。自分が呼んだ人間に自分を嫌ってほしくないなんて当たり前の感情だと思う。それをノアは王子様の希望だけを叶えてやれなかったと…そしてあたしにも迷惑をかけてしまったと言いたいのだろう。
「ノア、あたしノアのせいだなんて思ってないよ。むしろノアに会えてすごく嬉しい」
あたしからもノアの背中に腕をまわす。こんな小さな背中に色々なものを背負っていたのかと
「ねぇノア、あたしのこと見て」
肩口にあったノアの顔が上を向いて目があう。少し潤んでいるような気もするが、先程ようやく涙がひいたあたしも同じようなものだ
きれいな形の唇に自分の唇を重ねた。
びくんとノアがはねた気がするが目をつむってしまっているので表情を窺い知ることはできない
一瞬のような、はたまた長い時間だったのか自分にもわからないが、唇を離せばノアは顔を赤く染めながらもまだ潤んだ目でこたえてくれた。
「あなたが現れた瞬間から、私はあなたに心奪われてしまいました。夫として選んで頂けたことは生きてきた中で一番の幸せです。ミズキ、どうか私を夫として…」
堪えていたであろう涙が大きな瞳からボロボロと溢れ落ちている。
「陛下や閣下のために呼んだとはわかっていてもあなたへの想いは止められません」
抱き締められていた腕をはずされたと思ったらソファーに押し倒された。
「ミズキ、愛しています。私を愛してください」
かわいい見た目からは想像も出来なかった激しいキスをされる
口を開けばあたしより小さい舌が入ってきて口腔内で舌を絡めあう。
唇の端から唾液が溢れようと止まらないキスに愛されているんだなと同時に19歳なんだなと感じてしまった。歯が少し当たったのも若々しい。たった2つしか変わらないはずなのに
「二人とも気持ちの確認はできましたか?」
いつの間にか戻ってきたジョエルに声をかけられ我にかえった。ノアも飛び上がってあたしの上から降りた。起き上がったあたしの横にはジョエルがきて顎を掴まれ軽くキスをされた
「夫はノアールだけではないことをお忘れなく」
忘れられません!
「奥の間と下は少しアレなので申し訳ありませんがこちらのサロンで」
アレとやらは気になるがおそらく掃除行き届いてないとかだろう。こんな広さがあればそうだろう。誰だって嫌だ。
「はぁ~つっかれた!」
大きなソファーに思いっきり腰掛ける。やっと寛げるかんじ。このだだっ広いソファーなのにノアとジョエルは真横に座ってきた。
「いや、なんでこんなに広いのにこんな至近距離に座るの?」
「私達3人はもう夫婦ですよ?これくらいの距離感は普通ではありませんか?」
そういって腰に手をまわしてくるジョエル。なんだこれ接待か?あたしは接待でもさせられるのか?
しかし夫婦か、そうか夫婦だ。夫は二人だけれど夫婦。
「手を、繋いでも、いいですか?」
上目使いでかわいいおねだりをしてくるノアには勝てない。
「うん、いいよ」
恋人繋ぎして太股の上に置けば顔を真っ赤にして俯いてしまったけれど、なんとなく喜んでいるんだろうなというのはわかるのでこちらはにやにやしてしまう。なんてかわいいんだノア。かわいいノアのためならなんでもしてあげたいよ。この世界じゃ住所不定無職の一文無しだけどね
「ところでミズキ、先程のタペストリーが読めたというのは本当ですか?」
「あー本題。そうそう。迷信じみたやつだけど日本と一緒だなーって。しかもそれ織物にしちゃう!?って関心もっちゃったんだよね」
「内容を伺いたいのも山々ですがこの国の古代文字はまだ解読できていないものが多く、そこまで読める人間はいません。まして内容が女児を授かりやすくする迷信となれば国の一大事です」
バカでもわかる、あの場で口にしていたらとんでもないことになっていたんだろうなと今更ながらジョエルが止めてくれたことに感謝しかない。でも内容は現代ではただの迷信と言われているものばかりだし役にたつとは思えない。
そもそも女の方が極端に少ないってなんでなんだろう?きっと理由はあるんだろうけどあたしが気にしたところでどうしようもない。
「申し訳ないのですが、明日には研究機関で専門の方々とお話をしていただきたいのです。」
「いいよ。なんも予定ないし。ジョエルもノアも一緒なんでしょ?」
「私は一緒ですが、ノアール、あなたの明日の予定は?」
「任務はありませんが、魔術師団に顔は出す予定でした。」
「では終わり次第合流という形ですね。あの方々がミズキをそう易々と解放してくださるとは思いませんし」
どんなところへ連れていかれるんだろう。あの方々とやらは会う前からやばいやつらだというのはわかった。
「え?ノアって魔術師?魔法使いなの?」
「言っていませんでしたか?ノアールは国一番の魔術師ですよ。あなたの召喚もノアールが行いましたよ。」
「えっ!?すごーい!魔法使い!火出したり凍らせたりとか?」
「大抵のことはできますが…ミズキを喜ばせてあげられるようなものがあればいいんですが…」
「え?そもそも魔法って概念ないから何見ても絶対感動する!」
「この国はほとんどの者がなにかしら魔術は使えますよ。私も使えますし、家政に特化したものや戦闘に特化したものもいます。しかしノアールのようにまんべんなく高位の魔術が使え、魔力の保有量も多いものはほとんどおりません」
「ノアってすごいんだね!!」
繋いでいた手をもう片方の手でおおってノアを見つめる。まだ照れてるほんとかわいい
「でもさー、ノアはこんなにかわいくて魔法も使えるし、ジョエルもいいとこのお坊っちゃんで顔もいいのになんで結婚しなかったの?この国って結婚も早いんでしょ?」
疑問ではあった。ノアは小さくてかわいくても成人はしてるしすごい魔法使いらしい。ジョエルはイケメンだし身分も高そうだしなんで結婚してないんだろう?日本なら奪い合いだよ。この男達を巡って女の戦が繰り広げられていたことだろうよ
「私はただ単に爵位目当てでくる浅ましい女が受け付けなかっただけですよ。結局見ているのは父の宰相位を継ぐであろう約束された地位だけでした。そのような女を近づかせるのも嫌だったので結婚はしない、と。自分が好きになれる人を待ちたいと思っていたらもう27です。この国ならもう一生独り身だろうなと思われる年齢にきてしまいました。」
「私は…そもそもが平民の出ですし、子爵子息といえども養子です。実の親も父親はわかりませんし、そもそも体質などもあり人からは見向きもされませんでした。特に女性には…」
「なにそれ、意味わかんない。27で行き遅れって…現代じゃ男の人は30過ぎだよ?女も29!なに考えてるんだこの国の人たちは…」
そしてあたしが一番頭にきているのはノアのことだ。実の父がわからないのはこの際置いておく
「平民だからってなによ…あたしなんて超がつくほど一般市民だし、お母さん離婚してるから片親だし、仕事はセクキャバだったわよ。この国じゃ娼婦?ノアを受け入れないってなんなの…こんなにかわいくて優しくていい男なのに…」
あたしのほうが悔しくて涙がでてきた。こんなにも素敵な人を…しかも国一番の魔術師って。尊敬をしても軽蔑することなんてないのにどうして?
「ミズキ、泣かないで」
繋いでいない方の手でノアに涙を掬われるがなぜか涙が止まらない。ノアがかわいそうもあるが、お母さんなんて言ってしまったからだ。家に帰ってもお母さんは彼氏と海外に行っているからいない。だけどSNSや電話で存在だけは感じられた。この国ではスマホはイカれてしまったし家族も誰もいない。元いた場所に帰れるかもわからない。そう思ったら涙が止まらなくなった
「ノアール、ここはあなたが」
腰に回していた手を離してジョエルがソファーから立ち上がった。
「ジョエル様は?」
「私は食事の用意をお願いしてきますよ。温かい食事とお酒で少し気持ちを落ち着けましょう。ね?ミズキ」
言葉は発することができなかったが首を縦にふった。
ジョエルが出て行ったのは扉の音でわかった。落ち着かなきゃいけないとわかっていても涙がとまらない。
「ノア、お願い、抱き締めてほしいの」
人の温もりがほしかった。2人いるときはどちらに言えばいいかわからなかったけれど今はノアだけだ。
「ミズキ…」
ぎこちない手つきではあるがゆっくりとだきしめられた。むしろ抱っこされたというかんじではあるが首のあたりにノアの髪の毛が当たってこそばゆい。
「泣かないでミズキ」
本来ならここで頭をなでられたり背中をポンポン叩いてもらったりするのだろうが、ノアがぎゅーっと抱きついてくれているだけで幸せな気持ちになれる。
「ねぇノア、ノアは本当にあたしと結婚してくれるの?」
「…私は子爵家に養子として迎えられたのは幸せでしたが、それはこの魔力をどうにかしなければならないという思惑があったのも理解しています。しかし子爵夫妻は私にとてもよくしてくださいます。男性女性問わずこの魔力を恐ろしい、気味が悪いと感じられることのほうが多く結婚なんて夢のまた夢でした。」
抱き締められている腕からわかるくらいノアが震えてきたのがわかる。もういいよと言ってあげたいけれど、ノアが一生懸命話してくれているのだから最後まで聞かなくちゃいけない。涙はいつの間にか止まっていた。
「王族の方や宰相様など高位貴族の方々は私を受け入れてくださいましたが、貴族の方々には私を受け入れられない者も多数いらっしゃいます。魔術師団の中も例外ではありませんし、近衛騎士団の方々は尚更です。子爵子息という身分がありながらも男爵や貴族位、ましてや平民からも私は忌み嫌われているのです」
魔力が人よりあるから、平民から子爵へ養子に入ったから、王族達に受け入れられているから、そんなどうでもいいことでノアはツラい思いをしていたのかと思うとやるせない気持ちになる。
「陛下や閣下に言われ、異世界の花嫁の召喚の儀を行ったのは私です。閣下の御希望の方をと願いましたが、心の奥底では私を嫌わない、そのような方がいいと思ってしまったのです。そしてミズキが…」
ノアは自分のせいであたしがこちらへ来てしまったのだと思っているのだ。自分が呼んだ人間に自分を嫌ってほしくないなんて当たり前の感情だと思う。それをノアは王子様の希望だけを叶えてやれなかったと…そしてあたしにも迷惑をかけてしまったと言いたいのだろう。
「ノア、あたしノアのせいだなんて思ってないよ。むしろノアに会えてすごく嬉しい」
あたしからもノアの背中に腕をまわす。こんな小さな背中に色々なものを背負っていたのかと
「ねぇノア、あたしのこと見て」
肩口にあったノアの顔が上を向いて目があう。少し潤んでいるような気もするが、先程ようやく涙がひいたあたしも同じようなものだ
きれいな形の唇に自分の唇を重ねた。
びくんとノアがはねた気がするが目をつむってしまっているので表情を窺い知ることはできない
一瞬のような、はたまた長い時間だったのか自分にもわからないが、唇を離せばノアは顔を赤く染めながらもまだ潤んだ目でこたえてくれた。
「あなたが現れた瞬間から、私はあなたに心奪われてしまいました。夫として選んで頂けたことは生きてきた中で一番の幸せです。ミズキ、どうか私を夫として…」
堪えていたであろう涙が大きな瞳からボロボロと溢れ落ちている。
「陛下や閣下のために呼んだとはわかっていてもあなたへの想いは止められません」
抱き締められていた腕をはずされたと思ったらソファーに押し倒された。
「ミズキ、愛しています。私を愛してください」
かわいい見た目からは想像も出来なかった激しいキスをされる
口を開けばあたしより小さい舌が入ってきて口腔内で舌を絡めあう。
唇の端から唾液が溢れようと止まらないキスに愛されているんだなと同時に19歳なんだなと感じてしまった。歯が少し当たったのも若々しい。たった2つしか変わらないはずなのに
「二人とも気持ちの確認はできましたか?」
いつの間にか戻ってきたジョエルに声をかけられ我にかえった。ノアも飛び上がってあたしの上から降りた。起き上がったあたしの横にはジョエルがきて顎を掴まれ軽くキスをされた
「夫はノアールだけではないことをお忘れなく」
忘れられません!
26
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる