乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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螺旋階段を上がったり下りたり一体何階なのかはわからないけれど私に与えられたらしい部屋へ着いた。部屋というよりももはや家。眼前には大きすぎるリビングのような部屋。リビング以外の表現がわからない。ダイニングテーブルとかはないの?キッチンは?暖炉あるじゃん!鹿の顔も!頭の中はもうパニックだ。そしてなによりも部屋の中にまた螺旋階段がある。ここメゾネットタイプだわ。ますます何階だかわからない。しかも上にだけかとおもいきや下にも続いてるよ。なんだここ

「奥の間と下は少しなので申し訳ありませんがこちらのサロンで」

アレとやらは気になるがおそらく掃除行き届いてないとかだろう。こんな広さがあればそうだろう。誰だって嫌だ。

「はぁ~つっかれた!」

大きなソファーに思いっきり腰掛ける。やっと寛げるかんじ。このだだっ広いソファーなのにノアとジョエルは真横に座ってきた。

「いや、なんでこんなに広いのにこんな至近距離に座るの?」
「私達3人はもう夫婦ですよ?これくらいの距離感は普通ではありませんか?」

そういって腰に手をまわしてくるジョエル。なんだこれ接待か?あたしは接待でもさせられるのか?
しかし夫婦か、そうか夫婦だ。夫は二人だけれど夫婦。

「手を、繋いでも、いいですか?」

上目使いでかわいいおねだりをしてくるノアには勝てない。

「うん、いいよ」

恋人繋ぎして太股の上に置けば顔を真っ赤にして俯いてしまったけれど、なんとなく喜んでいるんだろうなというのはわかるのでこちらはにやにやしてしまう。なんてかわいいんだノア。かわいいノアのためならなんでもしてあげたいよ。この世界じゃ住所不定無職の一文無しだけどね

「ところでミズキ、先程のタペストリーが読めたというのは本当ですか?」
「あー本題。そうそう。迷信じみたやつだけど日本と一緒だなーって。しかもそれ織物にしちゃう!?って関心もっちゃったんだよね」
「内容を伺いたいのも山々ですがこの国の古代文字はまだ解読できていないものが多く、そこまで読める人間はいません。まして内容が女児を授かりやすくする迷信となれば国の一大事です」

バカでもわかる、あの場で口にしていたらとんでもないことになっていたんだろうなと今更ながらジョエルが止めてくれたことに感謝しかない。でも内容は現代ではただの迷信と言われているものばかりだし役にたつとは思えない。
そもそも女の方が極端に少ないってなんでなんだろう?きっと理由はあるんだろうけどあたしが気にしたところでどうしようもない。

「申し訳ないのですが、明日には研究機関で専門の方々とお話をしていただきたいのです。」
「いいよ。なんも予定ないし。ジョエルもノアも一緒なんでしょ?」
「私は一緒ですが、ノアール、あなたの明日の予定は?」
「任務はありませんが、魔術師団に顔は出す予定でした。」
「では終わり次第合流という形ですね。あの方々がミズキをそう易々と解放してくださるとは思いませんし」

どんなところへ連れていかれるんだろう。あの方々とやらは会う前からやばいやつらだというのはわかった。

「え?ノアって魔術師?魔法使いなの?」
「言っていませんでしたか?ノアールは国一番の魔術師ですよ。あなたの召喚もノアールが行いましたよ。」
「えっ!?すごーい!魔法使い!火出したり凍らせたりとか?」
「大抵のことはできますが…ミズキを喜ばせてあげられるようなものがあればいいんですが…」
「え?そもそも魔法って概念ないから何見ても絶対感動する!」
「この国はほとんどの者がなにかしら魔術は使えますよ。私も使えますし、家政に特化したものや戦闘に特化したものもいます。しかしノアールのようにまんべんなく高位の魔術が使え、魔力の保有量も多いものはほとんどおりません」
「ノアってすごいんだね!!」

繋いでいた手をもう片方の手でおおってノアを見つめる。まだ照れてるほんとかわいい

「でもさー、ノアはこんなにかわいくて魔法も使えるし、ジョエルもいいとこのお坊っちゃんで顔もいいのになんで結婚しなかったの?この国って結婚も早いんでしょ?」

疑問ではあった。ノアは小さくてかわいくても成人はしてるしすごい魔法使いらしい。ジョエルはイケメンだし身分も高そうだしなんで結婚してないんだろう?日本なら奪い合いだよ。この男達を巡って女の戦が繰り広げられていたことだろうよ

「私はただ単に爵位目当てでくる浅ましい女が受け付けなかっただけですよ。結局見ているのは父の宰相位を継ぐであろう約束された地位だけでした。そのような女を近づかせるのも嫌だったので結婚はしない、と。自分が好きになれる人を待ちたいと思っていたらもう27です。この国ならもう一生独り身だろうなと思われる年齢にきてしまいました。」
「私は…そもそもが平民の出ですし、子爵子息といえども養子です。実の親も父親はわかりませんし、そもそも体質などもあり人からは見向きもされませんでした。特に女性には…」
「なにそれ、意味わかんない。27で行き遅れって…現代じゃ男の人は30過ぎだよ?女も29!なに考えてるんだこの国の人たちは…」

そしてあたしが一番頭にきているのはノアのことだ。実の父がわからないのはこの際置いておく

「平民だからってなによ…あたしなんて超がつくほど一般市民だし、お母さん離婚してるから片親だし、仕事はセクキャバだったわよ。この国じゃ娼婦?ノアを受け入れないってなんなの…こんなにかわいくて優しくていい男なのに…」

あたしのほうが悔しくて涙がでてきた。こんなにも素敵な人を…しかも国一番の魔術師って。尊敬をしても軽蔑することなんてないのにどうして?

「ミズキ、泣かないで」

繋いでいない方の手でノアに涙を掬われるがなぜか涙が止まらない。ノアがかわいそうもあるが、お母さんなんて言ってしまったからだ。家に帰ってもお母さんは彼氏と海外に行っているからいない。だけどSNSや電話で存在だけは感じられた。この国ではスマホはイカれてしまったし家族も誰もいない。元いた場所に帰れるかもわからない。そう思ったら涙が止まらなくなった

「ノアール、ここはあなたが」

腰に回していた手を離してジョエルがソファーから立ち上がった。

「ジョエル様は?」
「私は食事の用意をお願いしてきますよ。温かい食事とお酒で少し気持ちを落ち着けましょう。ね?ミズキ」

言葉は発することができなかったが首を縦にふった。




ジョエルが出て行ったのは扉の音でわかった。落ち着かなきゃいけないとわかっていても涙がとまらない。

「ノア、お願い、抱き締めてほしいの」

人の温もりがほしかった。2人いるときはどちらに言えばいいかわからなかったけれど今はノアだけだ。

「ミズキ…」

ぎこちない手つきではあるがゆっくりとだきしめられた。むしろ抱っこされたというかんじではあるが首のあたりにノアの髪の毛が当たってこそばゆい。

「泣かないでミズキ」

本来ならここで頭をなでられたり背中をポンポン叩いてもらったりするのだろうが、ノアがぎゅーっと抱きついてくれているだけで幸せな気持ちになれる。

「ねぇノア、ノアは本当にあたしと結婚してくれるの?」
「…私は子爵家に養子として迎えられたのは幸せでしたが、それはこの魔力をどうにかしなければならないという思惑があったのも理解しています。しかし子爵夫妻は私にとてもよくしてくださいます。男性女性問わずこの魔力を恐ろしい、気味が悪いと感じられることのほうが多く結婚なんて夢のまた夢でした。」

抱き締められている腕からわかるくらいノアが震えてきたのがわかる。もういいよと言ってあげたいけれど、ノアが一生懸命話してくれているのだから最後まで聞かなくちゃいけない。涙はいつの間にか止まっていた。

「王族の方や宰相様など高位貴族の方々は私を受け入れてくださいましたが、貴族の方々には私を受け入れられない者も多数いらっしゃいます。魔術師団の中も例外ではありませんし、近衛騎士団の方々は尚更です。子爵子息という身分がありながらも男爵や貴族位、ましてや平民からも私は忌み嫌われているのです」

魔力が人よりあるから、平民から子爵へ養子に入ったから、王族達に受け入れられているから、そんなどうでもいいことでノアはツラい思いをしていたのかと思うとやるせない気持ちになる。

「陛下や閣下に言われ、異世界の花嫁の召喚の儀を行ったのは私です。閣下の御希望の方をと願いましたが、心の奥底では私を嫌わない、そのような方がいいと思ってしまったのです。そしてミズキが…」

ノアは自分のせいであたしがこちらへ来てしまったのだと思っているのだ。自分が呼んだ人間に自分を嫌ってほしくないなんて当たり前の感情だと思う。それをノアは王子様の希望だけを叶えてやれなかったと…そしてあたしにも迷惑をかけてしまったと言いたいのだろう。

「ノア、あたしノアのせいだなんて思ってないよ。むしろノアに会えてすごく嬉しい」

あたしからもノアの背中に腕をまわす。こんな小さな背中に色々なものを背負っていたのかと

「ねぇノア、あたしのこと見て」

肩口にあったノアの顔が上を向いて目があう。少し潤んでいるような気もするが、先程ようやく涙がひいたあたしも同じようなものだ

きれいな形の唇に自分の唇を重ねた。
びくんとノアがはねた気がするが目をつむってしまっているので表情を窺い知ることはできない

一瞬のような、はたまた長い時間だったのか自分にもわからないが、唇を離せばノアは顔を赤く染めながらもまだ潤んだ目でこたえてくれた。

「あなたが現れた瞬間から、私はあなたに心奪われてしまいました。夫として選んで頂けたことは生きてきた中で一番の幸せです。ミズキ、どうか私を夫として…」

堪えていたであろう涙が大きな瞳からボロボロと溢れ落ちている。

「陛下や閣下のために呼んだとはわかっていてもあなたへの想いは止められません」

抱き締められていた腕をはずされたと思ったらソファーに押し倒された。

「ミズキ、愛しています。私を愛してください」

かわいい見た目からは想像も出来なかった激しいキスをされる
口を開けばあたしより小さい舌が入ってきて口腔内で舌を絡めあう。
唇の端から唾液が溢れようと止まらないキスに愛されているんだなと同時に19歳なんだなと感じてしまった。歯が少し当たったのも若々しい。たった2つしか変わらないはずなのに

「二人とも気持ちの確認はできましたか?」

いつの間にか戻ってきたジョエルに声をかけられ我にかえった。ノアも飛び上がってあたしの上から降りた。起き上がったあたしの横にはジョエルがきて顎を掴まれ軽くキスをされた

「夫はノアールだけではないことをお忘れなく」

忘れられません!
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