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しおりを挟む開いた扉の先にはさっきの3人とその後ろにおっさん2人、壁際には恐らく近衛兵たちがいた。
「随分と遅かったじゃないか」
顔はとてつもなくいいが相変わらず偉そうなやつだ。いや、実際偉いとさっきジョエルに教えてもらった。
「王子様こそもう帰ってるかと、って!!なにしてんの!?」
一緒に落ちてきたキャリーケースが勝手に開けられて王子の二人の付き人が中身を勝手に出して一つずつ見ている。いや、あんたらが持ってるの下着!マジなにしてんの
「怪しいものがないかみてい、ブフッ!!!」
「ちょっと何勝手にしてんのよ!バカ!ふざけんなっ!!!!!!」
お金を貯めて買った某ブランドの50万強のハンドバッグで男3人を殴る。大事に使ってたけど異世界じゃ価値もないのだろう。仕方ないが凶器となってもらった。
「お前、なにするんだっ」
「それはこっちのセリフよ!なんで人の荷物勝手に漁って下着出してんのよ!しかもこんなに人がいるところで!ふざけんなよマジで!!」
キャリーケースを見てみれば鍵の部分は破壊されてる。絶対こいつ、王子のマブダチがやったんだ。
「まぁ、落ち着け異世界からの花嫁よ」
「はぁ?なによおっさん。座って見てたくせに」
いきなり立ち上がってでてきたプラチナブロンドのおっさんに宥められるがしらない。多分30か40代?おい、イケメンだなってこの王子に似てるじゃん
「ミズキ、この方は陛下。この国の王です」
耳元で周りに聞こえないように言ったあと膝をついたジョエルにはなにかを聞き返すことなんて出来なかった。
「愚息達のしでかしたことについては我が謝ろう。それでどうか気をおさめてくれないか」
イケオジによくわかんないけも恐らく許してごめんと言われたから少し落ち着くことにした。周りは王様が立ち上がってわざわざ私の前まできたから膝をついている。
え?あたしもした方がいい系?
ジョエルの真似をしようとしたら王様に止められた。
「異世界からの花嫁がそのようなことを我にせずともよい。」
あーあ、職場の同僚がいたらこの王様即食われてるよ。イケオジって意外と需要あるんだよね。落ち着きとテクニックがいいと言っているのを聞いた。
「皆のもの楽にせよ。この場は非公式、畏まらなくてもよい」
マジ翻訳つけてくれ。日本語喋ってるけど言葉わからん
「ところで花嫁よ、少しは落ち着けたか?」
花嫁ってあたしか!この場に女はあたししかいない、王様が話しかけてるのもあたし。
「ま、まぁまぁですかね?」
なに言ってんだお前みたいな目で王子様に見られてるけど知らない
そもそもお前達のせいであたしは王様の前でハンドバッグで男3人を殴ったんだから、暴力女のレッテルをはられたくはない。
「花嫁のような美しい適齢期の女性が未婚とはこの国ではとてつもなく危険である。どうかこな場から婿を選んではくれないだろうか?」
思ったより急展開だった。この場で選べと?せめて明日選べとかだと思って戻ってきたけどのの場!今!soon!
「この場所の中だったらいいんですよね?じゃあノア」
「えっ!?」
ホールの中がざわざわとする。選ぶのはせめてこの3人の中だと思って婿を選べと言ったんだと思うが、人の荷物勝手に漁ったり下着を普通に地べたに並べるようなやつらは嫌だ
「ノアとなら結婚したいけど、ノアは嫌?」
「嫌なんてまさか…でも私なんかではミズキに…」
あたしより後ろにいたノアに向かい合ってお願いする
ノアは周りを伺っている。
「あたしノアと結婚できないなら絶対にこの3人はイヤ!死んでもイヤ!誰に何を言われようとノアがいいのっ!」
店のワガママ女の真似をして言ってみたら周りが静まり返ってしまった。ほら、だからその営業方法はハイリスクローリターンだよって店長にいつも言われてるんじゃん。もし戻れるならその営業方法やめろとすぐに言ってあげたい。
「そのように泣かなくても…しかしさすがに一人というのは…異世界の花嫁をノアールであっても一人では守りきれるとは思えぬ。せめて、せめてあと一人選んではくれないだろうか」
王様ももうたじたじ。こっちも申し訳ないと思ってるから!マジで!ほんとに!
横にいる紳士めっちゃ笑い堪えてるけど大丈夫?多分この人も偉い人だろうけどもう気にしない
「じゃあジョエル」
王様の横の紳士は遂に吹き出した。もう笑いが堪えきれなかったのか大笑いしている。
だって二人にすればいいんでしょ?ジョエルさっき独り身って言ってたし、この場にはノアとジョエルしかわかる人がいないからジョエルには申し訳ないけれど、今だけでも婿になってもらう。
この国の婚姻がどうこうとかはもう考えない。もしかしたら日本に戻れるかもしれないし、旦那様と言うよりセフレと思うことにする。
「王様がせめて二人にしろって言ったよね?ノアとジョエル。それで駄目なんてないよね?」
王様は困った顔をしていたけれど隣の大笑いしていた紳士はようやく笑い疲れたのか私の方を向いて話をしてくれた。
「申し遅れました、私はそこにいるジョエルの父で国の宰相をしております。異世界の花嫁様におかれましては我が愚息との婚姻をお考えいただけるとのこと、私としては反対する理由は何一つありませんが、何分結婚はしないと常日頃から申している息子のことですので」
「私はミズキと結婚しますよ」
斜め後ろにいると思っていたジョエルは私の横に立っていて、お父さんに目をくれることもなく私の手をとり膝まずいた。
「ミズキ、私にもあなたを愛する権利を頂けたことを幸せに思います。どうか私のことも夫として愛していただきたい」
これだ!あたしが知ってるプロポーズって!文言は全く違う気もするけれど、小さい頃に憧れたプロポーズとはこういったものだった気がする。
そう思うと同時にあたしはノアに対して逆プロポーズどころではなく、ワガママで夫になれと言ったようなものだと気付いてしまった。そしてノアからは返事をもらっていない。
「ジョエルがいいのであれば我が家は喜んで異世界の花嫁との婚姻を認めましょう。式の日取りなどはシャルダン卿と話をして決めましょう。屋敷はあまりにも急なことで受け入れる体制は整っておりませんので、しばらくは王宮でお過ごしいただくことになるでしょう」
ねぇ、なんか話めっちゃ進んでるけど大丈夫?あたしノアから返事ももらってないんだけど。ジョエルは結婚する気みたいだけど大丈夫なの?
「陛下!私たちではなかったのですか!?なぜノアールとジョエルが婚姻を許され私たちは拒否されるのか!そもそも私たちのために召喚した異世界の者ではありませんか!」
「お前達は花嫁に選ばれなかった、ただそれだけだ。しかし婿はまだ2人。そのような態度を花嫁が好ましく思わないのもお前にはわからないのか?」
キャーギャーと親子喧嘩が始まったけれども、私には今気になっていることが別にある。
ノアの返事も気になるがちがう。王様の後ろにある文字が織り込まれたタペストリーだ。
何語かは理解出来ないが、何故か読むことのできる文字にあたしはなんとも言えない気分になっている。
「ねぇジョエル」
隣にいたジョエルに小さな声で話しかける。目の前ではまだ王様と王子様が言い合っている。
「ミズキ、どうかされましたか?」
「あの壁に飾ってあるタペストリーさ、この国の人実践してんの?」
「実践?あれは古代文字で書かれていて尚且織物なので未だ解読には至っていないものですが…」
「あたしあれ読めるんだけどさー、女の子を授かりやすくするにはみたいなこと書いてあるよ」
「えぇっ!?」
ジョエルのあまりにも大きな声に目線が親子喧嘩からこちらへ向けられてしまった。いや、いいんですよまだ言い合ってて。
「申し訳ありません。すこし確認したい事がでてきてしまいましたので…私とノアール、そして彼女は下がらせていただいてよろしいでしょうか?」
「何故お前達だけで!」
「私達は殿下達とは違い、彼女より直接求婚をされております。私に至っては父の許可もでており今すぐにでも夫婦として認められることもできます。しかし今は初めての場に不慣れな彼女を一時も早く休ませてあげたいのです。夫として初めてできる妻への気遣いとして、どうかお認めいただけないでしょうか」
もっともらしいことを言っているが私があの変な文字を読めると知って早くなんとかしたいのだろう。確かにそろそろ疲れたしお腹空いたしトイレも行きたいからここから退散したい気もする。そもそもここはどこなんだろう
まだギャーギャー言ってる王子様は置いておいて私は鍵を破壊され開けられたキャリーケースを取り巻き二人から取り返す。
「あたしの荷物返して」
一応物はいれてくれたようだ。並べられていた下着や服はケースに戻されている。
「異世界の花嫁様、私は…」
ネイビーの美人がなにかを言おうとしているが、荷物を漁られた恨みはまだ晴れない。
「あなたたちとは話したくない」
キャリーケースを奪い返してノアとジョエルの元に戻る。
「では私達はこれで。迎賓室を一部屋、しばらくお借りしますよ。どうせ殿下達のために用意はさせていたでしょう?」
「あぁ。くれぐれも異世界の花嫁のことを宜しく頼んだぞ」
キャリーケースとハンドバッグはノアが持ってジョエルに腕を組むように言われてこの場から去る。あーやっと解放!
近衛兵さんたちついてこようとしていたけれどジョエルが止めてた。なんでも3人で話したいことがあるからだそうだ。だだっ広い廊下を無言で歩き続ける。
さっきの部屋もだけどここ広くね?無駄にキラキラしてるしマジでお城なのかも。冗談だと思ってたけどマジっぽい。
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