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しおりを挟む『拝啓
いつ見ているかわからないけどこの手紙をよんでいるということはこの世界に転生か転移をしてしまった人ですね。ご愁傷さまです。』
のっけからイライラする。
『私、佐藤陽菜は16歳でこの世界に転移(※1)してきました』
※1ってなんだ?何枚かめくってみたら『解説』と書いた便箋が見つかった。
『※1
転移とはいきなり別の世界にとばされちゃうこと。召喚される場合もあるって。
記憶が最初からある人もいればなにかしらの衝撃とかで記憶が甦る人もいます』
私も転移か。今思えばヒールがなんにもないコンクリートに挟まったのって呼ばれたから?召喚されたとか言ってた?
それより紅茶おいしい。あとお菓子もおいしい。ノアも嬉しそうにお菓子たべてるかわいい。
『この世界は乙女ゲーム(※2)の世界で私はヒロインでした。』
やべぇやつだよ。ゲームなのここ?あたしも冒険とか出ちゃう系かな?一列で歩くやつ?
『※2
乙女ゲームとは女性向け恋愛ゲームの主人公が女の子のゲームのことです。』
一列で歩くやつじゃなくてスマホの広告に出てくるようなやつってことか。え?じゃあゲームするの?プレステ?スイッチ?スマホも役に立たないのにどうするんだろ…そもそもテレビとかあるのかな?
そんなことより本文だ。本文に戻ろう。
『学園に男装して入学したけどひょんなことから女だとバレてゲーム通り5人と同時恋愛してました。でも私ってばそんな器用じゃないからエンディング無視して、1人だけ選んで、他は童貞だけもらって卒業前に退学して結婚して今はビジネスで旦那様と色々旅行してます♡彼は伯爵家の次男だから国にいなくても好きにできるの。異世界旅しながら旅行記でも書いてまた儲けようと思うの。残りの4人も教えておきます。』
鬼だ鬼。男しかいない場所に現れた女の子を好きになって童貞まで捧げたのに捨てられた4人がかわいそうすぎる。しかもこの旅行?の旅行記は出版されるの?本屋さんでその4人の目についてしまったらどうするんだろう。追い討ちをかけてるようなものだ。やっぱり鬼だ。
『第3王子(ノーマル)とその近衛兵(絶倫)と執事の息子(テクだけ早漏)。その3人は国にいると思う。会った?絶対会ってるよね。なんかセットで婿にいくらしいよ。4Pとかはしてないから安心して。』
あれだ、ブロンドとボルドーとネイビー。セット販売が前提なのか。だから達ね
()は見なかったことにしたい
『もう1人は隣の国のえらい人の息子。結局家を継がなきゃだから普通に帰ったよ。許嫁と結婚しなきゃならなかったんだって。思い出に童貞もらってほしいって言われただけだから多分言い寄ってこないよ!安心して』
陽菜って結構とんでもない女なのかもしれない。
『日本人が作ったゲームの世界だから結構なんでもありみたい。魔法が使えたりはするけど、色々日本と一緒だったり便利だよ。月とか曜日、時間も一緒だし、トイレは洋式、バストイレ別、シャワーもあるし清潔。百貨店とかもあるから買い物も楽しめるよ。ロング丈のドレスかワンピースなのが面倒かもしれないね。娼婦(※3)しか脚みせちゃいけないんだって。その娼婦でも膝丈くらいらしいよ』
『※3
風俗嬢のことだよ。日本とちがって本番有りの』
ブロンド王子に破廉恥呼ばわりされた理由が今判明した。膝丈で風俗嬢、なら私はなんだ?もう下着じゃないか…近い仕事をしてはいたけれど下半身のおさわりはほぼなかった。
ノアが顔を赤くした理由も今ならわかる。19歳と言えどこんなにかわいい男の子には本当に目に毒だったろう。童貞か経験済みかなどもうどうでもいい、本当に悪いことをしてしまった
「ねぇ、ジョエル…私って娼婦にみえる?」
「何が書いてあったんですか?」
「百貨店で娼婦でも膝丈のスカートだと…」
「…内容はまぁ置いておいて確かにそうですが、ヒナ様もこちらに来られたときは膝も太股もみえている制服と呼ばれる服を着てらっしゃいましたよ」
先に書けよ陽菜!しかも制服ってことは年下!いや、何年前かわからないから一概に年下とは言えない。異世界?おそるべし
「あーもうっ!なんか読むの疲れちゃったよ。あの場所にも戻らなきゃでしょ?」
残っていた紅茶を飲み干してジョエルを見る。ノアは相変わらずお菓子を食べている。成長期だな。素晴らしい。
「そうですが…大丈夫ですか?」
「うーん、よくわかんなかったけどとりあえず陽菜が食い散らかした3人をどうにかしろって話なんでしょ?あたしここで家とかないから住所不定無職のやべぇやつだけど」
「ご身分であれば如何様にもなりますよ」
「あーっノア!ごめんね、こんな格好で話しかけて。あたしの世界じゃ普通の格好なんだけど娼婦よりもとんでもない格好してるんでしょ?目に毒だよねごめんね」
ジョエルは達観してそうだから動じないけど、ノアは絶対童貞(見ないようにしててもチラチラ胸や太ももみてくるからきっとそう)だから本当に申し訳ない。あたしにも羞恥心はあるのだ。
「いっ、いえっ!娼婦などとは思っておりません!扇情的な服装ではありますが、いえっ!やましい気持ちがあるわけではなくっ!」
なんてかわいいんだノア!!!!エロい目で見てますと言われているようなものだが全く嫌な気はしないしむしろ嬉しい。おっぱい触られまくる仕事してたからノアも触っていいよ!
「キャリーケースに普通のTシャツとパンツあるからあとで着替えるよ。よし、戻ろう。なに言われるかわかんないけど」
戻る前にあの3人のことを教えるとジョエルに言われたので通信もなにも出来ないスマホをいじりながら聞いた。ノアにはスマホに入ってる写真をみせてあげた。
王子はエスコフィエ公爵。殿下と呼ばれていたけれど公の場では閣下と呼ぶように言われた。
近衛兵はロラン・ディヴリー。お父様がディヴリー侯爵で軍のお偉いさんで王族とは親戚。
ミシェル・ベルトルッチは代々王家に使える執事長一家の次男。お父様は執事長で今は第3王子付きで仕事を学んでいる最中らしい。
こーしゃくこーしゃく訳がわからないから多分覚えなくて大丈夫だろう。
それより私が店で撮った写真(バニー)をみてノアは耳まで真っ赤にしていた。ハイレグだからだきっと。
「これ持ってきてるからあとで着てあげる」
耳元でささやいてあげたらノアは椅子から落ちた。あーもうかわいいっ
「ミズキ、聞いてました?」
「うん。なんとなく。ねぇみてみて、かわいいでしょ?」
ジョエルにもみせてあげたら「かわいいラパンですね」でおわった。ノアくらいかわいい反応してくれてもいいのに~
ラパンて。バニーだよバニー。車じゃないもん
「この国ってさー、こんなに女にペコペコするの?」
たいした距離でもない先程のホールに戻りながらもお揃いの服を着た男性(執事?侍従?らしい)や王宮の近衛兵達にペコペコされてる。中にはこの服装のせいで股間を押さえてしゃがみこむヤツもいた。
「まぁ極端に女性が少ないですからね、平民の家に女子が産まれれば貴族が大金を払ってでも養子にしたがるくらいには女性は貴重な存在ですよ。一生独身、女性に触れることもできない男性も多数います」
「え?でも娼婦って仕事としてあるんでしょ?」
「他国から出稼ぎにきたり、余程のすきものですよ。他国からの娘はあわよくば貴族や裕福な商家へ嫁ぐためにやって来ているものがほとんどです」
ほんとに商売と割りきってる子なのね。
すきものと言われた人は夫だけでは満足できなかったりお金があっても足りない浪費家やとどまることをしらない性欲の持ち主らしい。ある程度年を重ねた方でも需要はかなりあるそうだ。
「あたしも似たような商売だったよ。上半身だけだから下半身はなかったけど40分8000円でいちゃいちゃしほーだい、ダウンタイムのときはおっぱい触ったりしゃぶりたいほーだい」
ドサドサっと音がしたから振り返ってみたらノアは口を押さえて息を呑んでいるし、ついてきた近衛兵達は腰に差した剣をおとしたりなんかもう色々な反応をしている。
「ミズキ、それは絶対に他の者に言ってはいけません。あなたのような適齢期の未婚の美しい女性がお金さえ払えば仕事として触らせてくれるとあれば殆どの男性はこのような反応になります。いいですか、皆の者。今のミズキの発言は必ず忘れなさい」
剣や落としたものを拾っている。近衛兵の皆さんごめんなさい。
ノアはまだ口元を手のひらで覆っている。ドン引きしてんじゃん。
「ノア、ごめんね。引いたよね。さっき見せたあの服は仕事の制服なんだ…ノアはあたしがこの世界にきて最初に話しかけてくれた人だから嫌われたくはないの」
ダメと言われたけれどしゃがみこんで下からノアをみあげる
「ミズキのことを引くなんてありえません。ただ、ただ私が未熟なだけなのです。今までにミズキに触れたものが何人もいるのだと思うとなんともいえない気持ちになってしまって…」
うつむくとあたしと目が合うのがわかっているのか斜め上をみながら話すノアに少し悲しくなった
「ほんと?ノアは私のこと嫌いになってない?」
「なりませんよ!本来ならば私のような者がミズキとこのように話をするのも憚られるというのにミズキを煩わせてしまうなんて…」
なんか言葉が難しいからよくわからないけれどノアが嫌がってないことだけは理解できたからこれでよしとする。
「ジョエルは?なんかすげー冷静ぶってるけど奥さんいいの?」
「私は独り身ですよ」
こんないい男が!?この国の女はよっぽど数がたりないか見る目のない女ばかりだということもわかった
「もったいないね。日本だったらもう秒で女群がるよ」
ジョエルはただ笑うだけだった。
さっきはタバコ吸いたいの一心だったから気付かなかったけど、とんでもないデカイ扉の前に戻ってきた。いや、何人で開けるんだよ
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