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少女はただ願う

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少女はこの世界が嫌いだった、世界に絶望していた、そしてそれは親、周りの人間、自分さえも



一人の少女が部屋の中の窓の外を見て手を伸ばしている、ただ少女は空に憧れがあるわけでもなく、星を綺麗だとは思ったこともない、無数にあるため霞んで見えるとさえ思っていた


少女はただ、この絶望した世界に光が欲しい、希望が欲しかった、だが、願うだけでは当然そんなことは叶わず、少女は絶望の渦に飲み込まれていく


少女はふと思ってしまった、この世界に神がいるならなぜこんな絶望しか産まない世界を作ったのかと、だが少女は頭が良かった、それは天才と言えるほどだろう、教える前にやり方を独自で編み出し、一度見たものは完璧に再現する、だから少女は親、周りの人間に腫れ物扱いをされていた、そしてこの環境にいながら自殺しなかっただけまだ理性があるのだろう、ただそれでも弊害はある、自殺というかわりに、自分に、親に、周りの人間に、世界に、絶望をした



だが少女は何もしない、絶望に諦めてるわけでもなく、ただ星を眺める、そして、少女は星に希望を縋るのをやめ、黒色一色のベッドで眠りにつく


そして少女の夢は特殊だった、夢は普通毎日見るものでもなく、そして毎日同じものを見るわけでもないのに、少女の夢は毎日続き、毎日同じ光景を流す、その空間は真っ黒で、それはさながら少女の心を表しているかのようだった


だから少女は思ってしまった、いや、何者かに、だが、それはどうでもいいことだと意識から外す、そして先ほど考えていたこと、これは自分の心そのものを表しているのだと


だから少女はこの夢が真っ黒じゃなくなれば絶望しないはずではないかと、だが、現実はそんなに甘くはなかった、何をしても真っ黒の空間は何一つ変わらない、希望なんて光は一つすら存在せず、ただ暗い空間に虚しさだけが残る


とっくに少女の心は砕けていたのだろう、少女は縋るという行為で自分はまだ諦めていないと思っていたかったのだろう、だが少女はそれに、心の奥底では薄々気づいてはいる、だがそれを偽って、心の闇を払おうとする、無くそうとする



そして、いつも通りに起床する、そしてその夢で気付いたことは忘れる、いつものことだろう、黒い空間ということは覚えている、だがそこで思いついたことは何一つ覚えてはいない


そして少女は朝食を食べ、心底つまらない学校に行く、上部だけの友達とただ無駄な喋りをしながら、そして授業が終わり、少女はいつも通りに帰路につき、家に帰って部屋に戻る、すでになれたと言えば慣れた、上部だけの人間、家に帰っても何も言わない親、そして部屋の中で絶望する自分、結局はいつも通り、何も変わらない、いや変えられないというべきだろうか


少女はただいつも通りに空を見る、だが今日は星が見えない、でも少女はただ手を伸ばし、空にすがる、天高くに聳える空に、そして自分の心を偽っていく


絶望は積もり、山となる、いや、正しく言えば、全ては闇になる、それは真っ黒とも言えるし、何もないとも言える、だが少女の心には絶望が確かにある、真っ黒でも何もないわけではなかった



少女はいつも通りだと思い、天にすがるのをやめる、空に求めるのをやめる、だが次はと、次こそはと、また縋るのだろう、愚かだと内心わかっていながら、それでも自分を偽る、そしてその偽りは心を壊し、蝕み、絶望は広がっていく



だが、今日は特別な日だった、少女は一番心を開き、一番年相応の少女になれる日だろう、それはさながら恋する乙女のような瞳でみる、縋るような愚かなことはせず、ただ何も考えずに楽しみ、笑う


そして少女は待ちわびた、その少年とも、青年とも呼べる男の子がやってくる、普通の人ならそれで異常なことだと分かるだろう、だが少女は驚かない、週に一回、必ずあってるからだ



少年は少女を見つけると、綺麗な、そして誰もが見惚れるような笑顔で、久しぶりと言う、そして少女は一瞬、思考停止したが、いつものことだと思い、自分も久しぶりと返す



そして少年と少女はいつものように雑談を繰り返す、時には笑い、時には笑顔で、気分を害すなんてことはなく、楽しい時間が過ぎていく、そしていつもの少女には思えないほどの笑顔と、心底楽しいような心からの笑い声、少年はそれを見ると自分と同じように嬉しく思う、それくらいに少女が大事だったのだ



そして、少年はプライバシーを無視してなんでもないように言う、恋人はできたの?と、それに少女は他の人に聞かれたら淡々と答えるのに、顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうに言う、いない、と、そして少年はそれを聞いた瞬間嬉しそうに笑顔を浮かべる



そして少年はそろそろ時間だと言って少女との雑談を終える、そして空を飛んで、何処かへ消えていく、少年がさった後には星空が人生で一番輝いているように見えた、これは少年からのささやかなプレゼントだろう、と思いながら



そして少女は少年が去った後、また、あの人が来るまで、一週間かと言って残念そうに肩を落とす、そしていつもの心底つまらなさそうな表情に戻り、ベッドで眠りにつく




そして少女の夢はいつもの違った、真っ黒の空間のようなところに綺麗な星がある、星と言っていいかわからないが、まるでプラネタリウムみたいだと思った、だが、何故いつも星なんて霞んで見えるのに、ここまで綺麗で輝いて見えるのだろうと思った、やはり少年が何かしたのだろうかと疑問に思う



そして空は青くなり、小鳥のさえずりがする時間、少女は起床する、そしていつもは忘れている夢も何故か覚えてることに気付く、これもあの人のお陰かなと思いながら



そして少女はいつも通りつまらない学校に行く、昨日の夜、少年が来たからいつもより、尚つまらなさそうな雰囲気で



少年は少女にとっての希望だろう、少女は心を偽ってはいるが、それはほんの一部、気付いてない部分が大半だ、そして少年はにとって希望は少女だろう、二人で一つ、とはいかないが、大変仲がいい、少女は死んだら少年は世界を終わらすだろう、もちろん人為的という言葉がつくが、実際少年の力を使えば少女を不死身にすらできる、それをしないのは少女が自分の状態に気づいていないからだろう、やはり少女に嫌われるというのは少年にとってそれほど嫌なことなのだろう

しかも、少女は神を信じない、そして憎んですらいると思ってしまう、それほどに少女は絶望していると思えた、自分といるときは少女は本当の笑顔を見せてくれるが、あの顔がなくなると思ったら怖くてできない


まぁ、そんなことはいいだろう、少年は少女が好きで、少女も少年が好きということだろうね、だが少年と少女には厄介な事情がある、一つは絶望を抱えているということだろう、そしてもう一つは少年の正体、何者かははっきりせず、ただそこにいるだけで全てを動かせる存在、それを人はなんで呼ぶんだろうか






そして、少女は神に願う、少女は神なんてものは存在しないと考えているだけで憎んではいない、だが少女はそんな幻想にすがるほどに弱々しくなっていた、そして願う、「私を絶望から、世界から、親から、周りの人から、全てをなくしたところに連れて行ってください」、と



そして少女は何処かへ消えた、この世界から少女の記憶も消え、とされた、少年の手によって












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