上 下
23 / 32

第23話

しおりを挟む
翌日

日本政府は護衛の不完全さや、海上の警備のずさんさをアトラン港にある外交部に非難したが、まぁ不意打ちだったこともあり、そこまで怒っているわけでもなかった。

しかし、日本政府はこの世界の警備を信用できないことを知り、他国に来訪する場合は自国での警備を強化することになった。

なおこの件に関しての国民感情は政府の怠慢であるとの見解が多かった。が、自衛隊の法律である自衛隊法や憲法の問題もあるだろうと一部の有識者が発言していた。



その後、1週間後。国会では憲法改正の審議が終わり、結果は可決であった。そしてあとは国民投票を残すだけとなった。今回の憲法改正は自衛隊を日本の平和と独立及び国民の安全を最優先に行動する軍事組織であると定義することとなった。

もちろん、武力を国際紛争を解決する手段として用いないことは規定しているが、我が国の存続のために最善の手段を行使するともされていた。



とまぁ右寄りの皆さんはこの国会の議決に歓喜したが、左寄りの皆さんは猛反発した。政権は理由も当然のことながら理解していたわけで、端的に言えばこの改正によってもし日本が地球に戻った場合に韓国や中国などに自衛隊の矛先を向けられると考えたからだ。よって政府はこの改正は今の世界の状態を鑑みて改定したものであり、地球に戻った場合は国民に現行憲法の可否を問うことによってその主張を抑えた。

もちろん、悲惨な殺戮をまたもや繰り返すのかなどの反発もあったが、現状の世界に不安を抱いている国民はそんな戯言を聞こうともしなかった。





一方そのころ、政府では新しい土地の開発を進めていた。慢性的な資源不足に陥っている日本は、何としてでも新しい土地で開発を迅速に行い、資源不足を解決しなければならなかった。

そのため、許可が下りてから即座に必要な人員の確保が行われた。なお、懸命な外交努力により、免税特権の取得も完了していた。



輸送艦しもきた・くにさき

現在2隻の輸送艦にはさまざまな装甲車両が積載されている途中であった。積載されている車両の一覧は、

・90式戦車x3台

・16式機動戦闘車x3台

・89式装甲戦闘車x5台

・87式偵察警戒車x4台

・高機動車8台

・LAV4台

・輸送用トラック数台

・重機十数台

などであった。これらの装備の目的は開発地の警備や自衛用などである。また、現地は悪路であることがあらかじめ予想されているので、装軌装甲車も準備した。なおこれらのほとんどは富士から調達された。

今回の派遣の目的は、現地において開発拠点として駐屯地を設営することにある。もちろん簡易的に迅速に設営できるよう、資材も積載されていた。



LCACがフル稼働したことによって、自衛官約100名と数十台の車両が陸揚げされた。

「では今よりマスニカ半島先端部、第1種特別地域の治安維持及び新駐屯地建設を開始する」

特別地域開発派遣部隊、通称"特域派遣隊"の長となる岩谷 正則一等陸佐は高らかに宣言した。

ひとまずの任務は周辺の土地開発である。そのためまずは対象地域の調査である。自衛官はそれそれの車両に乗車する。

その後、上空からの視察によって悪路と思われる地域には90式と89式が2手に分かれて調査を。そのほかに関しては16式と87式と高機動車の混合の部隊が、3手に分かれて調査を。残りのLAVは残留するトラックなどの護衛を担当する。ちなみに今回は89式、87式の兵員輸送車としての役目はこなさない。

装備する火器に関しては89式小銃と64式小銃を半々に。数人に一人にMINIMIを装備させた。(62式、お前は用済みだ。)



「しかしなんでこんなところに来なければならないんだよ」

89FVに乗車している隊員がほざく。

「仕方がねぇよな?日本の存続の危機ですもん」

「まぁな。だからこそ憲法改正の国民投票も行われるんだろ」

「ああ。行けるかどうかわからんがな」

「自衛官は損な立ち回りだよな」

「それ言ったらしまいだぜ」

その時、調査隊から無線から一報入る。

『前方に生物の群れを視認。注意されたし』

「やはり熊かなんかでしょうね」

しかし、その瞬間隊員たちの考察は打ち砕かれる。

なんと、生物の口からから火や氷の矢のようなものが飛び出してきたのだ。

『全車、戦闘用意!』

第1調査隊(と呼応されている)の隊長から戦闘行動が発令される。

先ほどの攻撃は装甲によって弾かれたのだが、脅威として変わりない。

『89式、照準前方、徹甲弾撃ち方始め』

この命令によって89式の35㎜砲が火を噴く。前方の生物の群れは血を吹き出しながら倒れた。

「うっ、見ててなんかグロイな」

「抑えろ。『目標撃破』」

『了解。警戒体制に移行されたし』

その後、同様の生命体は同地域で多数確認された。調査を担当する隊員らは連日対応に苦労したという。また、89式で対応できなかったものに関しては90式の120㎜砲で対応したのだが、その射撃音によってまた新たな生物体が出てくるという泣きたくなるような始末であった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

1514億4000万円を失った自衛隊、派遣支援す

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一箇月。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 これは、「1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す(https://ncode.syosetu.com/n3570fj/)」の言わば海上自衛隊版です。アルファポリスにおいても公開させていただいております。 ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈りいたします。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

超克の艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」 米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。 新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。 六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。 だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。 情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。 そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。

処理中です...