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第16話

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王都カスティア

「ようこそ日本国のみなさん。私はオルスター王国国王、スタンシュ・ボーデッヒ・ナスランと申します。歓迎いたしますぞ」

王都にある王城まで馬車で6時間ほど移動した一行は、王城にてオルスター王国国王による歓迎を受けていた。外交の際に用いられるのか、ずいぶんと大きい部屋で国王の座る椅子の目にはレッドカーペットが敷かれ、レッドカーペットの外側には騎士が並んでいる。

現在の部屋も含む王城は石造りで造られていて、装飾も適所に施され高貴な雰囲気が醸し出されている。

「日本国外務副大臣の阿須 忠と申します。今回はお招きいただきありがとうございます」

阿須に倣い、付随する外交官も礼をする。護衛の配置としては車に残留する自衛官が4名、副大臣らに随行するのが6名となった。

「では早速会談をはじめましょう。まぁまずは文化交流と行きましょうぞ」

国王の秘書官か補佐官かわからないが、別の部屋に阿須らを案内する。



数十分前 王都会議室

「日本国...か。我々も全容をつかんでいないが軍事大国とみてよろしいのか?」

「はい。報告ではバナスタシア帝国の刺客を返り討ちにしたとかなんとか」

「なに?まさか情報局の奴らか?だとしたらやばいな。我々に矛を向けられたらまずいな」

オルスター王国の省庁のトップたちが口をそろえて会談をする。

「現在我が国はバナスタシア帝国と緊張状態になっている。マスニカ半島の先端部分およそ250Kmは一応我が国の領有が確定されているが、数十年前までの大戦までは旧バナマ帝国の領地だったからな。旧バナマ帝国の政権が後を継ぐバナスタシア帝国が領有を主張してもおかしくはないが」

「やはり日本国とは関係を断つように上申するか」

「しかし、日本国とうまいこと関係を持つことが出来れば立場が逆転できるかもしれんな」

「そうですな。日本がこの事実を知ってどのような立場を示すか、見極めばならん。またたとえ日本国の庇護下に入るとしてもバナスタシア帝国に敗北するわけにはいかん」

「そうですな。あの国は異常だ。植民地化した土地以外はな」

深刻そうな表情で話し合う政府幹部たち。しかし、そんなに長くは話すことが出来なかったようだ。

「失礼します。日本国の使節団が今到着しました。これより国王陛下が顔を合わせた後、会談がございます。どうぞご準備を」

一人の騎士が部屋にいたものに告げる。

「とりあえず、友好的な関係を持つ。程度で納めておきましょう」





別室に到着した阿須たちは着々と準備を進めていた。

「では会談を始めましょう。まずは我が国の概要についてご説明いたします」

国王や王国政府の幹部が集まって、会談が始まった。

「まずはお手元の資料をめくっていただきましょう。はじめは日本の国土と文化などについてご説明いたします」

「とても白くて丈夫な紙だな。こんなもの我が国で製造できるのか?」

「確かに上質な紙だ。技術力の高さがうかがえますな」

「あの光っている物体は何だ?不思議だな」

「お褒めの言葉ありがとうございます。日本は島国であり、数千の島で構成されております。また、南北に長く気候に富んだ地形でございます。人口は約1億2千万人で残念ながら人口は減少しておりますが。

文化といたしましては約1万年前、日本人の祖先が日本列島が定住したところから始まります~

.

.

.

そして我が国は太平洋戦争で敗戦をいたしました。そのご、大日本帝国から日本国へと生まれ変わり平和主義への国家へと変化いたしました。そして70年近く平和に過ごしておりましたが、10日ほど前、元の惑星から今いる惑星へと転移してしまったのです。」

モバイルプロジェクターで画像を映し出しながら、説明を行った。これもまた感心された。

「日本はこの世界の国ではなかったのか。それなら気付かないのも当然であるか」

「はい。おかげさまで現在我が国はガタガタですが」

「そうであるか」

「では次に我が国の現在の政治、防衛、産業についてご説明いたしましょう。

現在我が国は民主主義、資本主義を採っています。我が国における最高法規は日本国憲法であり、三つの基本原理は基本的人権の尊重、国民主権、平和主義であります。そのため我が国は人格を否定するような概念は存在いたしません。また、政治を決めるのは国民である、という考え方から選挙というものが行われたりもしております。

そして日本には交戦権が認められておりません。また、軍隊の所持も認められておりません。しかし、自衛権に関しては認められるため、日本の平和と独立を守る自衛隊という組織が存在しております。実際、後ろの彼らは自衛官ですね。後ほど、自衛隊の装備もご覧になられたらと思います。

次に我が国の産業といたしましては、農業・畜産・水産業などを括り、第一次産業というのですが、第一次産業は年々衰退しており、結果としては現在我が国は食糧危機に陥っています。次に製造業、建設業などを括り、第二次産業と言いますが我が国は前惑星では世界トップの技術を有しておりました。しかし、原材料は輸入に頼っていましたのでね。お察しください。ちなみに我が国ではこのスマートフォン(懐から携帯を出しながら)も開発しております。また、私たちの荷物などを運送してきたやつわかりますかね。あれは自動車というもので我が国の経済の中核ともいえる製造産業です。

以上で紹介を終えます。ご質問等ございましたら私まで。答えられる範囲でお答えいたします」

長々と解説を終えた阿須は水を一口飲み、着席した。

今回の紹介では日本がオルスター王国に求めているものを含んでいた。(食料や金属類など)

「では次に我々オルスター王国についてご説明いたします」







首相官邸

「う~ん。これって国民に説明すべきか?」

オルスター王国による紹介では以下の情報が得れた。

・建国は約150年前で前身はバナマ帝国で革命が起きて逃亡してきた政権が新たに建国した国である。

・そのため軍備が十分とは言えないが、第一次産業は供給過多となりつつあるとのこと。

・政治に関しては王政を取っているようですが、立憲君主制で国民の支持は高そうな印象だったとのこと。

・軍備に関しては友好国から協力を得て保っているらしい。

・バナスタシア帝国については軍事国家でありこちら側の国家では先進国だそう。また、先日我々を襲撃したのは多分バナスタシア帝国国家情報局というところの可能性が高いと。

「どうでしょうか。次の夜の会談では輸出などの話をするようです。その話を踏まえて総合的に判断しましょう」

「分かった。副大臣に日本に有利なように話を進めるように伝えておいてくれ」

「承知いたしました」

総理大臣と会話していた補佐官は受話器を上げて電話をかける。
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