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file06. 盗撮調査
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file06. 盗撮調査
「失礼ですが探偵事務所ってもっとむさ苦しい所かと思ってましたの」
とドールが喋った。ように見えるほどちょっと人間離れした美少女が事務所のソファに座っている。今回の依頼者の1人だ。クラロリ(クラシックロリィタ)の衣装がこれ以上ない似合い方をしている。むしろ普通の服の方が浮いてしまうだろうと思わせるくらいに。
「十分むさ苦しいですよ、すみません。うちは男性2人に女性1人ですから」
と話す珠莉に
「だってこんな可愛らしい方がいらっしゃるじゃないですか。事務員さんじゃないんですよね?探偵さんなんでしょ?」
と珠莉の手を取って包み込むように握る。
「危ないことはないんですか?」
「危ないことばかりですがうちの探偵たちは優秀なので、大丈夫ですよ」
目の端で珠莉がどうしたらいいのという問いたげな視線を見せてくるのを無視して諒介は依頼者ににっこり笑って見せる。
「清香(さやか)さん、これ以上は迷惑かと」
一見おとなしそうに見えていた飛鳥(あすか)が清香の手を押し戻して諭す。
「すみません。うちの清香は可愛いものに目がなくて」
「大丈夫ですよ。気にしないでください」
と慌てて珠莉がフォローを入れるのに対し
「いえ、気に入ったものに対しては際限がないので。ちょっと強引なこともするので気をつけてくださいね」
「飛鳥、ひどいわ。」
と眉根を寄せて清香が抗議する。一瞬同情しかけたところに
「そんなこと言ったら警戒されてしまうじゃないの」
という爆弾発言が続き探偵たちは顔を見合わせることもなく(逃げて、珠莉逃げて)と心の中で共有した。
「こちらって元女子大のところですよね?」
資料を読みながら秋人が尋ねる。
「はい、3年前に共学化されました。今はすっかり男子も増えて6:4の割合でしょうか」
来客用のソファに腰掛けているのは白百合学園大学の文化祭実行委員会の女子学生たち3人だった。
依頼の案件は盗撮調査。体育棟内の更衣室に盗撮器が仕掛けられているようでその画像が既に学内のSNSで拡散もされてしまっているとのことだった。
「被害はどのくらい出ているんでしょうか」
「SNSには10数人。……私たちもです」と俯く2人に反し清香は
「ロリィタは下着も抜かりないので」と意味の取りにくい発言をして躱し
「SNSの方は学内ということもあって解決が見込まれているのです。問題はこのまま放置していればいずれ外部への拡散も考えられるのですわ」
「学園祭当日は学生以外の利用者もありますので……」
背の高い方の女子学生美幸(みゆき)が続ける。
「それにしても6月に学園祭って珍しいですね」
珠莉が不思議そうに尋ねるのに
「学園の創始者の誕生祭がこの学園祭の元でしたので」
と飛鳥が答える。
「そうなんですね。それで学園祭が浴衣祭になったのはここ5年くらいと。近頃めっきり猛暑になりましたもんね」
「当日は学部生だけでなく学外からの方も浴衣で参加できるように更衣室を解放する予定になっています」
美幸の説明に続けて清香が
「これ以上被害者を出さないためお引き受けいただけますでしょうか?」
と依頼する。それに応えて諒介が
「もちろんお受けします。盗撮はされてる事がわかった時点でこちらにアドバンテージがあるんです」
「アドバンテージ、ですか?弱みではなくて。……あ、気づかれなければいつまでも対策されずに済んでいたってことですの?」
「えぇ、雉も鳴かずば撃たれまいですかね。狩る側の方が有利でしょ」
と清香に応えて
「なにせうちにはエースがいましてね。発見と除去ならすぐにでも可能ですが……」
との諒介の言葉に
「でしたらすぐにでも……」
と飛鳥が食いつく。
「ただ除去した時点で相手にはバレるということですわね?」
それに被せるようにして清香が言う。
「そうなんです。お望みはその、犯人を特定したいということかとお見受けしましたが」
「えぇ、もちろんです」
「ちなみに特定後は……」
「それはお気遣いなく。顧問弁護士もいますの」
「わかりました。あと体育棟の監視カメラや組織図などをお借りすることはできますか?学生さんには難しいかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。実は私理事長の身内でして全権を担って参りました。必要なものはなんでもおっしゃってくださいな」
と清香の言葉に諒介はさすがに眼を瞠り「わかりました。またその際はご連絡させてもらいます」
依頼者が事務所を後にした後に諒介が仕切って手を叩く。
「さー、会議しましょかー」
誰もあえて清香のことには触れない。
「犯人に気づかれないことが1番なんですよね。なら決行日は人が増える学園祭当日なんじゃないですか?」
秋人が言うのに珠莉は戸惑って
「でもそれじゃあ、秋人が更衣室に入れなくない?私が盗撮器を漏れなく特定するのはちょっと自信ないけど。」
「そこなんですけど、とりあえず盗撮器があるという理由は伏せたまま男女の更衣室を入れ替える措置取れないですか?」
「そうか、それはなかなか良い案だ。女子の被害は防げる。秋人は男子に紛れて盗撮器の特定、除去できる。おまけに犯人には祭の措置だからとこちらの意図がバレにくい」
うんうんと頷きながら諒介が秋人案を採択する。
「あと今の時点で画像の画角と間取りから目星のついてる物があります。……犯人もわかっちゃったかもです」
「えー、推理しないはずなのに!?」
秋人の言葉に驚く珠莉。ちなみに珠莉ちゃんそれはメタ……
夏の祭りといえばそれは浴衣の出番。
というわけで学園祭のドレスコードは浴衣なので珠莉たちも潜入に合わせて浴衣を着用することになった。諒介に着付けされて髪も結ってもらう。
「髪をいじってもらうの、気持ちいいね」
「そう?それは嬉しいな」
髪を結いながら耳元で無駄にイケボで囁くのに珠莉はくすぐったそうに首をすくめる。
「耳こそばゆい」
「耳?」
と耳輪から耳朶にかけてピアスを上手に避けて耳介をハムハムと唇で喰んでいく。同時に耳裏をマッサージするようにさすり上げる。そのまま耳裏を舐め上げられてゾクゾクとする快楽に珠莉の身体が震えた。
首の後ろも唇で軽くなぞってから大きな手のひらで優しく包み込むように掴む。じっくり体温を移すように押し当てた。それだけで珠莉の身体から力が抜ける。軽く力を込めながら引っ張るようにして手を引くと珠莉の身体が諒介の胸に倒れ込んでくる。
「……ズルい」
喘ぐように抗議する珠莉に笑いかけながら
「ほんとここ弱いなぁ。何のスイッチ付いてるの?」
と尋ねてみる。そして
「まだ教えたくないな、秋人君には」
諒介はそれを知った時の秋人を想像してにやにや笑いながら珠莉に
「もっと気持ちよくなる?」
と浴衣の脇の身八つ口から胸に手を差し込む。
「ひゃぅ」
「きっつ、この補正ブラ手動かしにくい」
「だって、胸潰さないと浴衣綺麗に着れないから。さらし代わりのブラ」
となぜか得意げに説明する珠莉に
「苦しくないの?」
「胸揺れないのはかえって楽な時もあるよ」
「この重い胸揺れると痛そうだしなーって萎えた会話してる場合じゃなくて」
となぜか自分を奮い立たせ
「指先だけ動かすから乳首責めな」
「え、まだするの?ま、待って……はぁん、ひゃうん、はぁ…!」
喘ぎながら身悶えするので浴衣が乱れ裾がはだける。それをいつの間にか陰から撮影している秋人だった。
珠莉の着崩れを直し終えて
「ほら、秋人も着替えるから来て。ステテコ履いてきた?」
言いながら諒介に下着姿に剥かれる秋人の上半身を見て珠莉が目を丸くする。
「なに、このゴリゴリの筋肉!着痩せするタイプか?」
「父親が警察関係で子どもの頃から武道はひと通り習わされてたので。今もトレーニングは時々」
「所長は知ってたの?」
「はいはい、どいてね。もちろん知ってたよ。こちとら危ない仕事だからね。自分の身を自分で守れない子は雇わないよ」
話しながらも手早く秋人にも浴衣を着付け終えて諒介は秋人の頭に手をやる。
「今日は人前に出る仕事だからさすがに髪くくっておこうか」
「……そうですね」
諒介の言葉に頷き秋人は厚い前髪をハーフアップのようにくくる。珠莉に初めて顔が見えた。
「何この、綺麗な顔!なんでいつも隠してるの?」
背伸びして秋人の顔を両手で挟み珠莉は驚嘆の声を上げる。その反応に珍しく秋人は当惑しながら
「傷があるでしょう。大きな」
と右目の下から鼻にかけての傷を指先でなぞってみせる。
「そう言われてみたらほんとだ。……痛かった?」
「……そんなこと聞かれたの初めてです」
「でも大丈夫。メイクしたらほとんどわかんないくらいだよ。待ってて、取ってくる」
3階に駆け上がっていく珠莉を見送り秋人はふーっと息を吐いた。
「いい娘だろ、うちのお嬢は?」
腕組みでなぜか得意げに言ってくる諒介に秋人はほとんど呟くように応えた。
「ほんと可愛いですね」
学園祭の当日となった。
挨拶がてら寄った実行委員室ではフリルの帯揚げ、帯締め代わりのリボンといったロリィタ仕様の浴衣姿の清香に実行委員男女ともどもうっとりのハーレム状態だった。
確かに陶器肌にぱっちりした瞳、長い睫毛とビスクドールと見紛うような美少女ぶりに理事長譲りのカリスマ性と憧れる人も多いのだろう。
現場に向かうことを告げて部屋を後にし体育棟に向かう。
「受信チャンネルは割り出せてます。あとで実際に確認しますが盗撮器は案外少ない。3つですね」
「仕事が早いね。優秀優秀」
「では行ってきます」
更衣室に向かう秋人を見送り珠莉は諒介に
「それにしても男女比が大きくなくて良かったよね」
「まあな。共学成り立ての時期だったら更衣室の入れ替えも難しかっただろうし」
体育棟の周辺を見回りながら
「犯人わかったって言ってたけどどうやって?」
「盗撮器の場所でそこに設置できる人間が絞り込まれるってことかな」
「女子更衣室だから女の人?」
「それも一つの考えだな。女性が同じ女性を盗撮することだってあり得る。あとの種明かしは秋人の仕事」
2人が話しているところに秋人が来る。
「チェック終わりました。ただ、場所が場所なので祭開催中は除去難しいです。まぁ、映るのは男子だけですけど」
「おつかれ。こちらも画像をリアルタイムでチェックしてそうなのは今のところ見かけなかった」
「受信距離からしたらこの辺にいないと無理ですからね。あとは録画を後から鑑賞でしょうか。映ってるの男子ですけど」
秋人の言葉に頷き諒介は2人に声をかける。
「では、報告と行きますか」
文化祭開催中ということで報告は実行委員会室ではなく理事長室で行うこととなった。清香が理事長の孫とはいえ格別の待遇を得ている事がこれでもわかる。
室内は豪華な設えでソファの座り心地も事務所のと比べると雲泥の差だ。
「それで特定はできまして?」
と清香が尋ねる。他の実行委員は探偵事務所に来たのと同じ面子で清香の信頼を得ているメンバーなのだろう。
「まずは盗撮器ですが3つ発見してどれもまだ生きている状態です」
と諒介は秋人のほうに目を向ける。
「受信電波、画像の画角、発見器、目視でも確認しました」
「それでどこに?」
美幸が尋ねる。それに応えるように秋人が上を指差す。
?となる実行委員たちにわかるように諒介が
「火災報知器です」
と答えそれにうなずく秋人。
「そんな所に!?」
上を見上げてみて清香が尋ねる。
「火災報知器の管轄は学生課でしたね。2日前に点検と称して職員が梯子を持って入室しているのが監視カメラでも確認されました」
諒介が説明を続ける。
「点検も本当なんでしょうが点検には普通支持棒を使うので梯子を利用する必要はあまりないかと」
と火災報知器点検用のセットの写真を見せる。長い棒が写っており梯子を必要とせず点検できることがわかる。
「ということでこの職員にお話を聞かれることをお勧めします。除去はどうなさいますか?」
「わかりました。ありがとうございます。除去もお願いしても?」
「承ります」
盗撮器の除去も済ませた後の帰り途。
「浴衣久しぶりに着たけどいいもんだな。みんな5割り増しで可愛かったり、かっこよく見える」
学内でもらったうちわを扇ぎながら諒介が言う。学園祭は夕闇の中も続いており賑やかだ。
「そうですね。で浴衣はやっぱりノーパンですよね」
と秋人は珠莉の尻を撫で
「…ってなんでほんと履いてないんんですか!?」
と驚きの声をあげながら思わず飛び退る。
「あー、浴衣スリップ着てて着付けしたから全然気づかなかったわ。なんかこの子時々間違った常識覚えるんだよな」
慣れっことなっている諒介はゆるゆる応えた。逆に珠莉の方は戸惑いながら
「え!?、浴衣はパンツ履かないって書いてたもん」
と反論する。
「これはそういうことですか?」
と指をわきわきさせながら珠莉に近づく秋人に
「どういうことだよ!それより普段人の身体触りまくってるんだから今度は自分の身体触らせなよ」
と言いもって逆に自分から距離を詰める。
「…え、何言ってるんですか?痴女ですか?」
「秋人と違って変なとこ触らないよ。筋肉触るだけ」
「やですよ、勘弁してください」
「けちー。減るもんじゃなし!」
「ほーぅ、減るもんじゃないんですね」
自分は触られないよう秋人はバックハグで珠莉を抱きしめ衿元から手を入れる。
「何このブラ、手が……」
そんな喧騒を傍に諒介は目を閉じて夜の空気を感じながら独りごちた。
「いやはや本格的に夏が始まるねー」
「失礼ですが探偵事務所ってもっとむさ苦しい所かと思ってましたの」
とドールが喋った。ように見えるほどちょっと人間離れした美少女が事務所のソファに座っている。今回の依頼者の1人だ。クラロリ(クラシックロリィタ)の衣装がこれ以上ない似合い方をしている。むしろ普通の服の方が浮いてしまうだろうと思わせるくらいに。
「十分むさ苦しいですよ、すみません。うちは男性2人に女性1人ですから」
と話す珠莉に
「だってこんな可愛らしい方がいらっしゃるじゃないですか。事務員さんじゃないんですよね?探偵さんなんでしょ?」
と珠莉の手を取って包み込むように握る。
「危ないことはないんですか?」
「危ないことばかりですがうちの探偵たちは優秀なので、大丈夫ですよ」
目の端で珠莉がどうしたらいいのという問いたげな視線を見せてくるのを無視して諒介は依頼者ににっこり笑って見せる。
「清香(さやか)さん、これ以上は迷惑かと」
一見おとなしそうに見えていた飛鳥(あすか)が清香の手を押し戻して諭す。
「すみません。うちの清香は可愛いものに目がなくて」
「大丈夫ですよ。気にしないでください」
と慌てて珠莉がフォローを入れるのに対し
「いえ、気に入ったものに対しては際限がないので。ちょっと強引なこともするので気をつけてくださいね」
「飛鳥、ひどいわ。」
と眉根を寄せて清香が抗議する。一瞬同情しかけたところに
「そんなこと言ったら警戒されてしまうじゃないの」
という爆弾発言が続き探偵たちは顔を見合わせることもなく(逃げて、珠莉逃げて)と心の中で共有した。
「こちらって元女子大のところですよね?」
資料を読みながら秋人が尋ねる。
「はい、3年前に共学化されました。今はすっかり男子も増えて6:4の割合でしょうか」
来客用のソファに腰掛けているのは白百合学園大学の文化祭実行委員会の女子学生たち3人だった。
依頼の案件は盗撮調査。体育棟内の更衣室に盗撮器が仕掛けられているようでその画像が既に学内のSNSで拡散もされてしまっているとのことだった。
「被害はどのくらい出ているんでしょうか」
「SNSには10数人。……私たちもです」と俯く2人に反し清香は
「ロリィタは下着も抜かりないので」と意味の取りにくい発言をして躱し
「SNSの方は学内ということもあって解決が見込まれているのです。問題はこのまま放置していればいずれ外部への拡散も考えられるのですわ」
「学園祭当日は学生以外の利用者もありますので……」
背の高い方の女子学生美幸(みゆき)が続ける。
「それにしても6月に学園祭って珍しいですね」
珠莉が不思議そうに尋ねるのに
「学園の創始者の誕生祭がこの学園祭の元でしたので」
と飛鳥が答える。
「そうなんですね。それで学園祭が浴衣祭になったのはここ5年くらいと。近頃めっきり猛暑になりましたもんね」
「当日は学部生だけでなく学外からの方も浴衣で参加できるように更衣室を解放する予定になっています」
美幸の説明に続けて清香が
「これ以上被害者を出さないためお引き受けいただけますでしょうか?」
と依頼する。それに応えて諒介が
「もちろんお受けします。盗撮はされてる事がわかった時点でこちらにアドバンテージがあるんです」
「アドバンテージ、ですか?弱みではなくて。……あ、気づかれなければいつまでも対策されずに済んでいたってことですの?」
「えぇ、雉も鳴かずば撃たれまいですかね。狩る側の方が有利でしょ」
と清香に応えて
「なにせうちにはエースがいましてね。発見と除去ならすぐにでも可能ですが……」
との諒介の言葉に
「でしたらすぐにでも……」
と飛鳥が食いつく。
「ただ除去した時点で相手にはバレるということですわね?」
それに被せるようにして清香が言う。
「そうなんです。お望みはその、犯人を特定したいということかとお見受けしましたが」
「えぇ、もちろんです」
「ちなみに特定後は……」
「それはお気遣いなく。顧問弁護士もいますの」
「わかりました。あと体育棟の監視カメラや組織図などをお借りすることはできますか?学生さんには難しいかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。実は私理事長の身内でして全権を担って参りました。必要なものはなんでもおっしゃってくださいな」
と清香の言葉に諒介はさすがに眼を瞠り「わかりました。またその際はご連絡させてもらいます」
依頼者が事務所を後にした後に諒介が仕切って手を叩く。
「さー、会議しましょかー」
誰もあえて清香のことには触れない。
「犯人に気づかれないことが1番なんですよね。なら決行日は人が増える学園祭当日なんじゃないですか?」
秋人が言うのに珠莉は戸惑って
「でもそれじゃあ、秋人が更衣室に入れなくない?私が盗撮器を漏れなく特定するのはちょっと自信ないけど。」
「そこなんですけど、とりあえず盗撮器があるという理由は伏せたまま男女の更衣室を入れ替える措置取れないですか?」
「そうか、それはなかなか良い案だ。女子の被害は防げる。秋人は男子に紛れて盗撮器の特定、除去できる。おまけに犯人には祭の措置だからとこちらの意図がバレにくい」
うんうんと頷きながら諒介が秋人案を採択する。
「あと今の時点で画像の画角と間取りから目星のついてる物があります。……犯人もわかっちゃったかもです」
「えー、推理しないはずなのに!?」
秋人の言葉に驚く珠莉。ちなみに珠莉ちゃんそれはメタ……
夏の祭りといえばそれは浴衣の出番。
というわけで学園祭のドレスコードは浴衣なので珠莉たちも潜入に合わせて浴衣を着用することになった。諒介に着付けされて髪も結ってもらう。
「髪をいじってもらうの、気持ちいいね」
「そう?それは嬉しいな」
髪を結いながら耳元で無駄にイケボで囁くのに珠莉はくすぐったそうに首をすくめる。
「耳こそばゆい」
「耳?」
と耳輪から耳朶にかけてピアスを上手に避けて耳介をハムハムと唇で喰んでいく。同時に耳裏をマッサージするようにさすり上げる。そのまま耳裏を舐め上げられてゾクゾクとする快楽に珠莉の身体が震えた。
首の後ろも唇で軽くなぞってから大きな手のひらで優しく包み込むように掴む。じっくり体温を移すように押し当てた。それだけで珠莉の身体から力が抜ける。軽く力を込めながら引っ張るようにして手を引くと珠莉の身体が諒介の胸に倒れ込んでくる。
「……ズルい」
喘ぐように抗議する珠莉に笑いかけながら
「ほんとここ弱いなぁ。何のスイッチ付いてるの?」
と尋ねてみる。そして
「まだ教えたくないな、秋人君には」
諒介はそれを知った時の秋人を想像してにやにや笑いながら珠莉に
「もっと気持ちよくなる?」
と浴衣の脇の身八つ口から胸に手を差し込む。
「ひゃぅ」
「きっつ、この補正ブラ手動かしにくい」
「だって、胸潰さないと浴衣綺麗に着れないから。さらし代わりのブラ」
となぜか得意げに説明する珠莉に
「苦しくないの?」
「胸揺れないのはかえって楽な時もあるよ」
「この重い胸揺れると痛そうだしなーって萎えた会話してる場合じゃなくて」
となぜか自分を奮い立たせ
「指先だけ動かすから乳首責めな」
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喘ぎながら身悶えするので浴衣が乱れ裾がはだける。それをいつの間にか陰から撮影している秋人だった。
珠莉の着崩れを直し終えて
「ほら、秋人も着替えるから来て。ステテコ履いてきた?」
言いながら諒介に下着姿に剥かれる秋人の上半身を見て珠莉が目を丸くする。
「なに、このゴリゴリの筋肉!着痩せするタイプか?」
「父親が警察関係で子どもの頃から武道はひと通り習わされてたので。今もトレーニングは時々」
「所長は知ってたの?」
「はいはい、どいてね。もちろん知ってたよ。こちとら危ない仕事だからね。自分の身を自分で守れない子は雇わないよ」
話しながらも手早く秋人にも浴衣を着付け終えて諒介は秋人の頭に手をやる。
「今日は人前に出る仕事だからさすがに髪くくっておこうか」
「……そうですね」
諒介の言葉に頷き秋人は厚い前髪をハーフアップのようにくくる。珠莉に初めて顔が見えた。
「何この、綺麗な顔!なんでいつも隠してるの?」
背伸びして秋人の顔を両手で挟み珠莉は驚嘆の声を上げる。その反応に珍しく秋人は当惑しながら
「傷があるでしょう。大きな」
と右目の下から鼻にかけての傷を指先でなぞってみせる。
「そう言われてみたらほんとだ。……痛かった?」
「……そんなこと聞かれたの初めてです」
「でも大丈夫。メイクしたらほとんどわかんないくらいだよ。待ってて、取ってくる」
3階に駆け上がっていく珠莉を見送り秋人はふーっと息を吐いた。
「いい娘だろ、うちのお嬢は?」
腕組みでなぜか得意げに言ってくる諒介に秋人はほとんど呟くように応えた。
「ほんと可愛いですね」
学園祭の当日となった。
挨拶がてら寄った実行委員室ではフリルの帯揚げ、帯締め代わりのリボンといったロリィタ仕様の浴衣姿の清香に実行委員男女ともどもうっとりのハーレム状態だった。
確かに陶器肌にぱっちりした瞳、長い睫毛とビスクドールと見紛うような美少女ぶりに理事長譲りのカリスマ性と憧れる人も多いのだろう。
現場に向かうことを告げて部屋を後にし体育棟に向かう。
「受信チャンネルは割り出せてます。あとで実際に確認しますが盗撮器は案外少ない。3つですね」
「仕事が早いね。優秀優秀」
「では行ってきます」
更衣室に向かう秋人を見送り珠莉は諒介に
「それにしても男女比が大きくなくて良かったよね」
「まあな。共学成り立ての時期だったら更衣室の入れ替えも難しかっただろうし」
体育棟の周辺を見回りながら
「犯人わかったって言ってたけどどうやって?」
「盗撮器の場所でそこに設置できる人間が絞り込まれるってことかな」
「女子更衣室だから女の人?」
「それも一つの考えだな。女性が同じ女性を盗撮することだってあり得る。あとの種明かしは秋人の仕事」
2人が話しているところに秋人が来る。
「チェック終わりました。ただ、場所が場所なので祭開催中は除去難しいです。まぁ、映るのは男子だけですけど」
「おつかれ。こちらも画像をリアルタイムでチェックしてそうなのは今のところ見かけなかった」
「受信距離からしたらこの辺にいないと無理ですからね。あとは録画を後から鑑賞でしょうか。映ってるの男子ですけど」
秋人の言葉に頷き諒介は2人に声をかける。
「では、報告と行きますか」
文化祭開催中ということで報告は実行委員会室ではなく理事長室で行うこととなった。清香が理事長の孫とはいえ格別の待遇を得ている事がこれでもわかる。
室内は豪華な設えでソファの座り心地も事務所のと比べると雲泥の差だ。
「それで特定はできまして?」
と清香が尋ねる。他の実行委員は探偵事務所に来たのと同じ面子で清香の信頼を得ているメンバーなのだろう。
「まずは盗撮器ですが3つ発見してどれもまだ生きている状態です」
と諒介は秋人のほうに目を向ける。
「受信電波、画像の画角、発見器、目視でも確認しました」
「それでどこに?」
美幸が尋ねる。それに応えるように秋人が上を指差す。
?となる実行委員たちにわかるように諒介が
「火災報知器です」
と答えそれにうなずく秋人。
「そんな所に!?」
上を見上げてみて清香が尋ねる。
「火災報知器の管轄は学生課でしたね。2日前に点検と称して職員が梯子を持って入室しているのが監視カメラでも確認されました」
諒介が説明を続ける。
「点検も本当なんでしょうが点検には普通支持棒を使うので梯子を利用する必要はあまりないかと」
と火災報知器点検用のセットの写真を見せる。長い棒が写っており梯子を必要とせず点検できることがわかる。
「ということでこの職員にお話を聞かれることをお勧めします。除去はどうなさいますか?」
「わかりました。ありがとうございます。除去もお願いしても?」
「承ります」
盗撮器の除去も済ませた後の帰り途。
「浴衣久しぶりに着たけどいいもんだな。みんな5割り増しで可愛かったり、かっこよく見える」
学内でもらったうちわを扇ぎながら諒介が言う。学園祭は夕闇の中も続いており賑やかだ。
「そうですね。で浴衣はやっぱりノーパンですよね」
と秋人は珠莉の尻を撫で
「…ってなんでほんと履いてないんんですか!?」
と驚きの声をあげながら思わず飛び退る。
「あー、浴衣スリップ着てて着付けしたから全然気づかなかったわ。なんかこの子時々間違った常識覚えるんだよな」
慣れっことなっている諒介はゆるゆる応えた。逆に珠莉の方は戸惑いながら
「え!?、浴衣はパンツ履かないって書いてたもん」
と反論する。
「これはそういうことですか?」
と指をわきわきさせながら珠莉に近づく秋人に
「どういうことだよ!それより普段人の身体触りまくってるんだから今度は自分の身体触らせなよ」
と言いもって逆に自分から距離を詰める。
「…え、何言ってるんですか?痴女ですか?」
「秋人と違って変なとこ触らないよ。筋肉触るだけ」
「やですよ、勘弁してください」
「けちー。減るもんじゃなし!」
「ほーぅ、減るもんじゃないんですね」
自分は触られないよう秋人はバックハグで珠莉を抱きしめ衿元から手を入れる。
「何このブラ、手が……」
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恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
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【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
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