転生未遂から始まる恋色開花

にぃ

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第29話 男女の親友は恋人関係を超える

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「えと、話を戻すけど、結局雪野君と水河さんってどういう関係なのかしら? クラス中がその答えを待っているのだけど」

「わわ、みんな見てる。えと、そんなに注目しなくてもいいよ。そんなに面白いものでもないので」

 クラス中の視線に今気づいたのか、雫は慌ててクラスの皆に手をパタパタ振って照れ笑いをする。
 見るなと言われても無理な話だろう。僕も逆の立場だったら絶対凝視している。

「えー、こほん。私とキュウちゃんはね、『友達』なんて小さいカテゴリには収まらない関係なのだよ」

「つ、つまり、友達……以上ってことですか!?」

「そう!」

「ガーンっ!」

 なぜか雨宮さんは悲しそうに膝を折ってしまっていた。

「つまり、雪野くんと水河さんの関係は『アレ』ってことね」

「そう! アレなんだよ瑠璃川さん!」

「ガーンガーン!」

 言っちゃ悪いけど雨宮さんのリアクションが面白すぎて会話に入っていけない。
 小説みたいなリアクションするんだなぁ雨宮さん。

「そう。お二人はいつからそのような関係なのかしら?」

「んー、この関係になったのはつい最近だよ。本当に数日前。それまではただの『同士』って感じだったんだけどね。私から勇気を振り絞って関係値を変えに行ったんだ」

「す、数日前っ!? そ、そんなぁ」

「今の関係になれて信じられないくらい心地良い自分がいるんだ。ここまで仲良くなれる人、キュウちゃん以外に居なかったからさ。こんな気持ちになれるならもっと早く行動を起こしておけばよかったな」

「こ、行動力の差……! うぅ……!」

「文化祭デートとはやるわね。羨ましいわ。さっ、花恋ちゃん。負け犬は黙って去りましょう。二人の邪魔になるわよ」

「なんか急にドライに!? うぅ、お幸せに。雪野さん」

 雨宮さんはなぜか少し涙目になりながら瑠璃川さんと共に下がっていこうとする。 
 雫が慌てて待ったをかけた。

「ねね。せっかくだから4人で一緒に回ろうよ。キュウちゃんの友達なら私の友達だよ!」

「あら? 良いの? 恋人同士の時間を私たちが奪っても」

「えっ? 誰と誰が恋人同士??」

「その……雪野さんと水河さんが……」

「わわっ。違う違う! 私とキュウちゃんは恋人じゃないよ!」

 なんか変な勘違いしているなと思ったら僕らが恋人同士と思っていたのかこの二人は。
 残念ながら僕らはそんな桃色っぽい関係ではない。

「そ、そうなのですか!?!?!?!?」

「おぉう。なんか今日一番の大声を出してきたね雨宮さん」

 泣きそうな表情から一転。
 今度は目を輝かせて僕らに顔をずいっと寄せてくる。

「ふふーん。私とキュウちゃんは恋人以上の関係を築いているといっても過言じゃないかな」

「過言だよ!?」

 雫が変なこというから雨宮さんの顔がまた悲壮なものになっちゃったじゃないか。

「恋人以上……まさか許嫁!?」

「ふふふーん。許嫁以上の関係と言っても――」

「ややこしくなるからちょっと黙ろうね」

「むぐぐっ!」

 両ほっぺと摘まんで雫の口を塞ぐ。

「僕と雫はただ親友なだけだよ。友達以上のだけど恋人未満っていうか」

「ぷはぁ! 何言っているの! キュウちゃん! 親友関係が恋人程度に負けるわけないじゃん!」

「そうなの!?」

 あ、あれ? 僕の中では友達<親友<恋人の認識だったけど、親友と恋人の位置逆だった?

「恋人関係よりも親友関係の方が希少だろうし、水河さんの言っていることもわからないこともないわ」

「そ、そうかなぁ?」

「親友って呼べる交友関係を持っているって素敵だわ。素直に二人が羨ましいわね」

「えへへ。ありがとう瑠璃川さん。ほら見たことか~」

 言いながら肘でツンと突いてくる雫。
 その理屈だと僕らは恋人を飛び越えた関係ということになるのだが、雫的にはそこは良いのだろうか?

「てなわけで雪野くんの恋人枠はまだ埋まってないと」

「キュウちゃんの恋人枠……そういえばキュウちゃんとそういう恋バナ的な話したことなかったけど、まさか居るの!? 居ないよね!?」

「い、居ないけど……」

「「「居ないのかなぁ~」」」

 なぜか3人の感嘆な声がハモっていた。

「何!? 居るわけないでしょ!? こんな根暗ぼっちに! そんなのわかりきっていることをわざわざ聞かないでよ!」

 恋人なんて小説の中だけの代物だ。現実味なんてまるでない。
 現実で『大恋愛は忘れた頃にやってくる』みたいな恋ができたらとも思わなくはないけど、それはそれで大変そうなので瞬時に否定した。

「雪野さんは優しいのできっとすぐ素敵な恋人ができますよ」

 笑顔で肩に触れてくる雨宮さん。
 僕のこと『優しくない』とかいって転生未遂していたのはどこの誰だ。

「雪野くんは面白いからきっとすぐ素敵な恋人ができるわよ」

 反対側の方にポンと手を置いてくる瑠璃川さん。
 『面白い』というのは『面白がる』とちょっと違うんですよ瑠璃川さん。

「キュウちゃん可愛いからきっとすぐ素敵な恋人できちゃうよ」

 背後から首に手を回してくる雫。
 可愛いと言われても嬉しくないわけじゃないけど、手放しに喜べない。

「何!? この慰められている感!? 別にいいよ! 僕は独り身でも! あと照れるからみんな一斉に触ってこないで~!」

 最近急激に女の子の知り合いが増え、異性の耐性は少しできたと思っていたのだが、こういう直接的なスキンシップには弱い。すぐ顔を赤くしてしまうからこうも簡単に弄られてしまうのかもしれない。

「しず×雪……いいじゃねーか」

「いや、俺は断固、瑠璃×雪を推すね」

「わかってないわね男子。雨×雪が一番絵になるってなぜわからないのかしら」

 そして何やらクラスの背後の方で謎のカップリング論争が起こっているが敢えて気にしないことにした。
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