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森火戦争編
雷花の巫女(2)
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「あ、あの……ごめんなさい、迷惑かけてしまって……」
「気にしなくていいわ。何か被害があった訳ではないって管理局の人も言ってたし」
事件から数時間後。
流石に買い物を続行する訳にもいかず、何でも屋の面々は憔悴したロータスと気を失っていた少女を連れて事務所に戻ってきていた。
ロータスは少し眠ったら回復したようで、今は現場にいなかったリリーに事の説明をしている。
彼女もつい先程目を覚まし、何でも屋の面々にぺこぺこと頭を下げていた。
悪魔族らしく、背中の黒い翼は室内でも出しっぱなしになっている。
しかし、今まで見かけてきた悪魔族とはどこか異なる雰囲気を感じる。
そういえば、ロータスが神花と言っていた気がする。
デイジーができることはあまり無さそうなので、タイミングを見計らってロータスとリリーに近づき、尋ねてみることにした。
「ロータス」
「あ、デイジー……ごめん、買い物中に巻き込んじゃって」
デイジーに気付いたロータスは、気まずそうな顔で謝罪を返す。
机に座って書類の山に向かっていたリリーは、顔を上げていつもより真面目なトーンで声を掛けた。
「もー、綺麗に収めてくれたのに何言ってんの。気にしすぎちゃダメだよ。…んで、デイジーはあの子のことについて聞きたいと見た」
リリーがロータスに視線を向ける。
ロータスははっとして、苦笑を零した。
「あ、そっか、デイジーには何が何だか分かんないよね。えっと、神花のことは知らないよな?」
こくりと頷く。
ロータスも頷いて、詳しく説明してくれた。
「神花って言うのは、ミリシア様に仕えてる巫女のことだよ。ミリシア様のお世話をしたり、神事の手伝いをしたり……一言で言うなら、ミリシア様の従者ってところかな」
「……神様と、お話できるの?」
「そう。ミリシア様に直接お会いするなんて、神官か神花でもないと出来ないことだからね。この国では、大切に扱われてる人達でもあるんだけど……」
ロータスが若干顔を曇らせる。
しかし、デイジーが瞬きをするともう元の表情に戻ってしまっていた。
「神花は全部で二十人いて、それぞれミリシア様から特別な御力を頂いてるんだ。それは、基本的にはミリシア様が司る自然に関わる力で、神花によって異なる。で……」
ロータスが背後に目を向ける。
ソファーに腰掛け、何だか複雑そうな顔のアイリスから受け取った紅茶を啜る少女─サンダーソニアがそこにいる。
「サニー……あの子は、『雷』の神花なんだ。自由に雷を呼び出して操れる強力な能力者なんだけど……」
口篭るロータス。
言葉を引き継いだのはリリーだった。
「強力すぎるが故に、制御が出来てない。だから、ロータスがその補助をしてあげてるってことでいいのかな?」
「……うん、その通り」
ロータスはこくりと頷き、苦笑いを浮かべる。
「詳しくは皆がいるところで話すよ。…ジオも帰ってきたしね」
ロータスがそう言うと、ちょうど事務所の扉が開いてジオが姿を見せた。
確か、聖樹管理局職員の事情聴取に協力していた筈だ。
散らばっていたメンバーも、ジオの姿を認めるとリビングスペースに集まり始める。
ロータスとリリーも動き出し、デイジーは彼らの後を追った。
︎✿
「よし、全員揃ったな。色々気になることはあるが、一旦俺から報告させてもらう」
リビングに何でも屋メンバーが全員揃うと、まずジオが声を上げた。
正面のソファーに座る、未だ遠慮がちな様子のサンダーソニア─サニーに、優しい視線を送る。
「管理局からの通達だ。今回は事故ということで方がついた。故意に能力を暴走させた訳ではないし、何より神花だからな。被害者も破損物も無し、よって罰は無い。それは安心してくれていい」
「……はい、分かりました」
サニーは、俯きがちに返事をする。
被害もお咎めも無しの割に好意的な雰囲気ではない。
ジオも少し不思議そうな表情を見せたが、すぐに切り替えて今度はロータスに話を促す。
「で、ロータス。お前は、彼女と元々知り合いだったってことでいいんだな?」
「……うん」
ロータスは小さく頷き、頭を下げた。
「ごめん……個人的なことだったから、ずっと黙ってた。彼女はサンダーソニア。俺はサニーって呼んでる。『雷』の神花で、俺が何でも屋に入る前から仲良くしてた……まぁ、いわゆる幼馴染みってやつ」
「……おさななじみ……」
ぽつりとアイリスが呟いたのをデイジーは聞き逃さなかった。
どうも彼女はサニーに出会ってから様子がおかしい。
まだ付き合いが短いので断言はできないが、どうもアイリスはロータスのことが好きなようだ。
彼の姿を見かけると感情が明るくなるのを何度か見ていたし、好きな人にかなり付き合いの深そうな異性の幼馴染みがいたと聞くと動揺するのは無理もないのかもしれない。
しかしロータスはその様子に気付く余裕がないようで、特に反応せず話を進める。
「俺は他に神花の知り合いはいないから断言は出来ないけど、サニーはどうも能力が強すぎるみたいでさ。流石に今日みたいになったことはないけど、度々能力の制御が効かなくて困ってる時があったんだ」
その言葉にサニーは更に表情を曇らせる。
美しい金の瞳に覇気はなく、細い腕を不安げにぎゅっと握りしめている。
ロータスは慌ててサニーを宥めた。
「ああもう、責めてる訳じゃないって。どうしようもないことだろ。…で、俺は元々このステルラを持ってたからさ。友達同士ってこともあって、週に一回くらい様子を見に行ってたんだ」
ロータスの個人能力は、他者の能力を制御するというかなり特殊なものだ。
具体的には、出力の調整が可能らしい。
能力で操る範囲や強度を上げたり、逆に制限して制御を容易にしたり。
何でも屋の中でも、同じく能力が強すぎて制御ができていないアイリスと、日常生活に支障を来すというリリーは彼の恩恵に与っているそう。
実はリリーの眼鏡にはロータスの能力が付与されており、眼鏡を掛けることで能力の影響をシャットダウンしているのだとか。
閑話休題。
その説明でようやく腑に落ちたらしく、ジオがああと声を上げる。
「そういや、お前たまに外出許可取ってたよな。言ってくれれば便宜図ったのに」
「いや、さっきも言ったけど、個人的な問題だったからさ。何でも屋入る前からやってたことだし、皆を巻き込むことでもないかなって」
ロータスは苦笑いしている。
…デイジーには何となく分かった。
彼の言ったことは本当だが、本音ではない。
歳の近い異性の友人を何でも屋の面々に紹介するのが気恥ずかしかったのだろう。
証拠に、顔が見るからに赤い。
友達─ではあるのだろうが、どちらかと言うとガールフレンドに近いのかもしれない。
アイリスの情緒が心配である。
そんなデイジーの内情が察せられることはなく(表情はぴくりとも動いていないので)、場の空気は真剣そのものであった。
「事情は分かったが……ロータス、あまり一人で抱え込むなよ。相談相手が多ければ、他に対策が見つかるかもしれないしな」
「う……ごめん」
ジオの言葉は的確で、ロータスは申し訳なさそうに項垂れている。
レアはレアで、サニーに興味を持ったようだ。
「それにしても、神花の友人がいたのね。この仕事を始めてから、何人かには会ったことあるけど……確かに、サニーはちょっと違った雰囲気ね。能力が特別強いっていうのは、思い込みじゃないと思うわ」
「そうだねぇ」
仲間に入れて嬉しそうなリリーも頷いている。
「ミリシア様から貰った力が相当強いんだと思うよ。神花って役職との親和性が高いのかも」
「そ、そうなのかな……」
しかし、当のサニー本人は一貫して不安げな様子だ。
視線を彷徨わせ、縋るようにロータスの服をぎゅっと掴んでいる。
「私、昔からずっとこうで……ローくん─ロータスにもいっぱい迷惑かけてきたし、今日は街中で……あんなことに……」
声は震えている。
今にも泣き出してしまいそうだ。
そこでアイリスはようやく躊躇を捨てたのか、親身な様子でサニーに声を掛けた。
「で、でも、何事も無かったから、大丈夫だよ……!わざとじゃ、ないんだし……あんなにすごい力なのに、誰も怪我してないの、すごいことだと思う……それで、十分じゃないかな……」
「っ……そう、だね。ありがとう」
同じく能力制御に苦労しているアイリスの言葉は特に響いたらしい。
サニーは顔を上げ、ようやく少し笑ってくれた。
場が和んだところで、話は更に先に進む。
最初に話を振ったレアが提示したのは、疑問だった。
「それにしても、あんなにすごい雷が落ちたところ、今まで見たことないわよ。今までは、ここまでじゃなかったのよね?」
天候に関して彼女より詳しい者はいない。
その言葉に、ロータスとサニーは揃って頷いた。
「うん。せいぜい部屋がちょっと焦げるとか、感電しかけるくらいだった。最近は暴走することも少なくなってたし、完全に制御が離れるって訳じゃないから」
「あ、あはは……でも、そうだね。今日みたいに、全く言うことを聞かなくなることは、今までなかったと思う」
…以前からかなりの苦労はあったようだが。
それでも、二人とも訝しげなのは間違いない。
今日の暴走は、明らかにイレギュラーなのだ。
ジオが難しい顔になる。
「穏やかじゃない話だが……だとすると、何らかの要因で暴走させられた可能性があるな」
「……えっ?」
サニーが間の抜けた声を上げる。
ジオの意見を後押しするように、リリーも冷静な声音で告げた。
「サニーちゃんの能力を利用して、社会を混乱させようとする……一種の反社会行為かな。ロータスみたいに、他人の能力に干渉するステルラを持っている人がいたら、有り得ない話じゃない」
「そ、そんな……」
リリーの説明でジオの含意を理解し、青ざめるサニー。
ロータスも動揺した様子で二人を見つめる。
「サニーの能力を利用って……本気か?それ、ミリシア様に喧嘩売ってるのと同じことだろ……」
先述の通り、神花はミリシア直属の巫女だ。
彼女らに悪意を持って接するということは、それ即ち主神たるミリシアを敵に回すということだ。
それは同時に、この王国の大多数の国民からの反感を買うということでもある。
つまり、酔狂でやることではない。
ジオは目を鋭く細め、腕を組む。
「残念ながらそういうことになる。もし、神花を利用しようとする輩が本当にいたとしたら……この話は、サニーの対応だけでは何も解決しない。下手をすれば、またこの街が火の海になる」
その言葉で、先程まで弛緩していた空気が一気に張り詰めた。
ここにいるのは、デイジーを除けば皆ミリシア教徒であり、何より十年前の災禍を知っている者達である。
心穏やかでいられる訳がない。
特に、ジオは。
「……何か、ここ最近の生活でおかしなことはなかったか?ちょっとした違和感でもいい」
サニーに問いかける声のトーンが低くなっている。
アイリスが若干怯え気味にレアに縋り付いた。
「違和感……ですか?うーん……」
サニーは首を捻って考え込んでいる。
ジオは何でも屋の面々にも視線を向けた。
「お前らも、何か気になることがあったら言って欲しい。もしかしたら、他にも何か異常があるかもしれない」
そう言われると、全員難しい顔をする。
「異常かぁ……何かあったっけ……」
「最近はそんなに事件らしい事件も起きてなかったしな」
「……強いて言うなら、デイジーが来たことくらい?」
「わ、私、サニーのこと、おかしくした……?」
「ないでしょ」
「ないな……」
途中で矛先を向けられたデイジーがしゅんとするが、即座に否定される。
いくらイレギュラーな存在とはいえ、デイジーに他者の能力を暴走させるような力はないだろう。
その点に疑う余地はない。
ジオは皆の様子を見て、静かに目を閉じた。
「まぁ、杞憂であればいい。いずれにせよ、サニーの暴走の原因は知りたいところだが」
「う、うぅ、迷惑かけてごめんなさい……」
「責めてないってば!ジオも別に怒ってるわけじゃないからな!あれが平常運転!」
「……」
泣きそうなサニーに慌てて呼びかけるロータスの言に複雑そうな顔をするジオ。
だんだん混沌としてきた会議の場で、デイジーはサニーを観察することにした。
まだこの世界に来て間もないデイジーが役に立てることと言えば、この『眼』しかない。
デイジーの瞳は、ステルラによって他の人より多くのものが見えている筈だ。
何かがサニーに起きたのであれば、それを見抜くことも出来るかもしれない。
そこまで万能ではないだろうと思いつつも、今出来ることはそれくらいしかない。
隣のレアが若干不審がるくらいに目に力を込め、金色の少女をじっと見つめる。
金糸のような鮮やかな髪に、思わず目を惹かれる整った顔立ち、雷をそのまま閉じ込めたかのように煌めく金の瞳、そして隅々まで美しい刺繍のされた、手の込んだ巫女服─
「───あ」
ふと、デイジーは声を上げて立ち上がった。
一気に注目を浴びたが、恥ずかしがっている暇もない。
サニーに近づき、戸惑う彼女の服─正確には日除け用の短い外套─に手をかけ、そっとどかす。
「え、えっと……」
困惑しているサニーに、デイジーは静かな声で言った。
「これ……元々、ついてるもの?」
デイジーが指差した先にあったもの。
それは、胸元に飾られた虹色の花だった。
結晶のように光を反射して輝くそれは、宝石のように煌びやかで美しい。
彼女の派手な衣装にも見劣りしていない装飾品に見える。
しかし、サニーはそれを見て顔を強ばらせた。
「違う……これは、私のものじゃない」
震える指がその花に触れる。
その直前、ジオが叫ぶ。
「──やめろっ、触るな!!!」
「え」
しかし、時は既に遅く。
サニーがそれを手に取った瞬間。
部屋が、爆発した。
眩い閃光と、凄まじい衝撃、そして耳を劈く轟音が世界を白く染める。
「わっ?!」
「ひゃあ……っ」
震源地の間近にいたデイジーは勿論、共に机を囲んでいた何でも屋の仲間たちも勢いよく吹き飛ばされる。
その衝撃で、デイジーの意識は半分刈り取られた。
僅かに残った感覚が伝えたのは、肌を撫でる空気に伝わる電流、そして自分を包む柔らかく暖かい感触だけ。
視界はちかちかと明滅し、音も聞こえない。
そして、しばらくの硬直状態から立ち直ったデイジーが恐る恐る目を開けると、ぼやけた視界に部屋の惨状が飛び込んできた。
木の中に作られたこの応接スペースは勿論木製である。
木で出来た壁と家具は、ところどころ焼け焦げて見るも無惨な状態になっていた。
木の破片が飛び散り、食器は散乱し、部屋の中で嵐が巻き起こったかのような有様である。
その中心には、魂が抜けたように呆けて座り込んでいるサニー。
そして、身体のあちこちを焦がしながら転がっているメンバーの姿が見えた。
「……!!」
遠目からでは、無事なのかどうかも分からない。
慌てて起き上がり、皆の状態を確かめようとして…
…自分が、怪我一つ負っていないことに気がついた。
最もサニーに近い位置にいたにもかかわらず、何事もないことに気がついた。
ステルラのおかげ?
まさか、そんな訳ない。
ただ視ることしか出来ない目に、そんな芸当は不可能だ。
だったら…
はっとして、視線を下にずらす。
そこでようやく、自分に覆い被さっていたものに気がついた。
鮮やかな赤髪と、黒い着流し。
ジオだ。
彼が、あの衝撃から自分を守ってくれていた。
…そのことに気づいた瞬間。
ずるりと、彼の身体が床に崩れ落ちる。
デイジーの細腕では受け止められず、どさりと重たい音がする。
「……ジ、オ……?」
震え声で彼の名を呼び、そして気付く。
ジオは、血塗れだった。
黒焦げになった床に鮮やかな赤が広がり、染み込んでいく。
煤けて破れかけた着流しの隙間から、焼け爛れた肌が見える。
デイジーの分まで爆発を受け止めたジオは、紛うことなき重傷であった。
デイジーは我に返る。
悲鳴を上げることすら出来なかった。
震える足で取り憑かれたように部屋を飛び出し、階段を転がり落ちる勢いで駆け下りる。
目指すは隣。
治癒院である。
「気にしなくていいわ。何か被害があった訳ではないって管理局の人も言ってたし」
事件から数時間後。
流石に買い物を続行する訳にもいかず、何でも屋の面々は憔悴したロータスと気を失っていた少女を連れて事務所に戻ってきていた。
ロータスは少し眠ったら回復したようで、今は現場にいなかったリリーに事の説明をしている。
彼女もつい先程目を覚まし、何でも屋の面々にぺこぺこと頭を下げていた。
悪魔族らしく、背中の黒い翼は室内でも出しっぱなしになっている。
しかし、今まで見かけてきた悪魔族とはどこか異なる雰囲気を感じる。
そういえば、ロータスが神花と言っていた気がする。
デイジーができることはあまり無さそうなので、タイミングを見計らってロータスとリリーに近づき、尋ねてみることにした。
「ロータス」
「あ、デイジー……ごめん、買い物中に巻き込んじゃって」
デイジーに気付いたロータスは、気まずそうな顔で謝罪を返す。
机に座って書類の山に向かっていたリリーは、顔を上げていつもより真面目なトーンで声を掛けた。
「もー、綺麗に収めてくれたのに何言ってんの。気にしすぎちゃダメだよ。…んで、デイジーはあの子のことについて聞きたいと見た」
リリーがロータスに視線を向ける。
ロータスははっとして、苦笑を零した。
「あ、そっか、デイジーには何が何だか分かんないよね。えっと、神花のことは知らないよな?」
こくりと頷く。
ロータスも頷いて、詳しく説明してくれた。
「神花って言うのは、ミリシア様に仕えてる巫女のことだよ。ミリシア様のお世話をしたり、神事の手伝いをしたり……一言で言うなら、ミリシア様の従者ってところかな」
「……神様と、お話できるの?」
「そう。ミリシア様に直接お会いするなんて、神官か神花でもないと出来ないことだからね。この国では、大切に扱われてる人達でもあるんだけど……」
ロータスが若干顔を曇らせる。
しかし、デイジーが瞬きをするともう元の表情に戻ってしまっていた。
「神花は全部で二十人いて、それぞれミリシア様から特別な御力を頂いてるんだ。それは、基本的にはミリシア様が司る自然に関わる力で、神花によって異なる。で……」
ロータスが背後に目を向ける。
ソファーに腰掛け、何だか複雑そうな顔のアイリスから受け取った紅茶を啜る少女─サンダーソニアがそこにいる。
「サニー……あの子は、『雷』の神花なんだ。自由に雷を呼び出して操れる強力な能力者なんだけど……」
口篭るロータス。
言葉を引き継いだのはリリーだった。
「強力すぎるが故に、制御が出来てない。だから、ロータスがその補助をしてあげてるってことでいいのかな?」
「……うん、その通り」
ロータスはこくりと頷き、苦笑いを浮かべる。
「詳しくは皆がいるところで話すよ。…ジオも帰ってきたしね」
ロータスがそう言うと、ちょうど事務所の扉が開いてジオが姿を見せた。
確か、聖樹管理局職員の事情聴取に協力していた筈だ。
散らばっていたメンバーも、ジオの姿を認めるとリビングスペースに集まり始める。
ロータスとリリーも動き出し、デイジーは彼らの後を追った。
︎✿
「よし、全員揃ったな。色々気になることはあるが、一旦俺から報告させてもらう」
リビングに何でも屋メンバーが全員揃うと、まずジオが声を上げた。
正面のソファーに座る、未だ遠慮がちな様子のサンダーソニア─サニーに、優しい視線を送る。
「管理局からの通達だ。今回は事故ということで方がついた。故意に能力を暴走させた訳ではないし、何より神花だからな。被害者も破損物も無し、よって罰は無い。それは安心してくれていい」
「……はい、分かりました」
サニーは、俯きがちに返事をする。
被害もお咎めも無しの割に好意的な雰囲気ではない。
ジオも少し不思議そうな表情を見せたが、すぐに切り替えて今度はロータスに話を促す。
「で、ロータス。お前は、彼女と元々知り合いだったってことでいいんだな?」
「……うん」
ロータスは小さく頷き、頭を下げた。
「ごめん……個人的なことだったから、ずっと黙ってた。彼女はサンダーソニア。俺はサニーって呼んでる。『雷』の神花で、俺が何でも屋に入る前から仲良くしてた……まぁ、いわゆる幼馴染みってやつ」
「……おさななじみ……」
ぽつりとアイリスが呟いたのをデイジーは聞き逃さなかった。
どうも彼女はサニーに出会ってから様子がおかしい。
まだ付き合いが短いので断言はできないが、どうもアイリスはロータスのことが好きなようだ。
彼の姿を見かけると感情が明るくなるのを何度か見ていたし、好きな人にかなり付き合いの深そうな異性の幼馴染みがいたと聞くと動揺するのは無理もないのかもしれない。
しかしロータスはその様子に気付く余裕がないようで、特に反応せず話を進める。
「俺は他に神花の知り合いはいないから断言は出来ないけど、サニーはどうも能力が強すぎるみたいでさ。流石に今日みたいになったことはないけど、度々能力の制御が効かなくて困ってる時があったんだ」
その言葉にサニーは更に表情を曇らせる。
美しい金の瞳に覇気はなく、細い腕を不安げにぎゅっと握りしめている。
ロータスは慌ててサニーを宥めた。
「ああもう、責めてる訳じゃないって。どうしようもないことだろ。…で、俺は元々このステルラを持ってたからさ。友達同士ってこともあって、週に一回くらい様子を見に行ってたんだ」
ロータスの個人能力は、他者の能力を制御するというかなり特殊なものだ。
具体的には、出力の調整が可能らしい。
能力で操る範囲や強度を上げたり、逆に制限して制御を容易にしたり。
何でも屋の中でも、同じく能力が強すぎて制御ができていないアイリスと、日常生活に支障を来すというリリーは彼の恩恵に与っているそう。
実はリリーの眼鏡にはロータスの能力が付与されており、眼鏡を掛けることで能力の影響をシャットダウンしているのだとか。
閑話休題。
その説明でようやく腑に落ちたらしく、ジオがああと声を上げる。
「そういや、お前たまに外出許可取ってたよな。言ってくれれば便宜図ったのに」
「いや、さっきも言ったけど、個人的な問題だったからさ。何でも屋入る前からやってたことだし、皆を巻き込むことでもないかなって」
ロータスは苦笑いしている。
…デイジーには何となく分かった。
彼の言ったことは本当だが、本音ではない。
歳の近い異性の友人を何でも屋の面々に紹介するのが気恥ずかしかったのだろう。
証拠に、顔が見るからに赤い。
友達─ではあるのだろうが、どちらかと言うとガールフレンドに近いのかもしれない。
アイリスの情緒が心配である。
そんなデイジーの内情が察せられることはなく(表情はぴくりとも動いていないので)、場の空気は真剣そのものであった。
「事情は分かったが……ロータス、あまり一人で抱え込むなよ。相談相手が多ければ、他に対策が見つかるかもしれないしな」
「う……ごめん」
ジオの言葉は的確で、ロータスは申し訳なさそうに項垂れている。
レアはレアで、サニーに興味を持ったようだ。
「それにしても、神花の友人がいたのね。この仕事を始めてから、何人かには会ったことあるけど……確かに、サニーはちょっと違った雰囲気ね。能力が特別強いっていうのは、思い込みじゃないと思うわ」
「そうだねぇ」
仲間に入れて嬉しそうなリリーも頷いている。
「ミリシア様から貰った力が相当強いんだと思うよ。神花って役職との親和性が高いのかも」
「そ、そうなのかな……」
しかし、当のサニー本人は一貫して不安げな様子だ。
視線を彷徨わせ、縋るようにロータスの服をぎゅっと掴んでいる。
「私、昔からずっとこうで……ローくん─ロータスにもいっぱい迷惑かけてきたし、今日は街中で……あんなことに……」
声は震えている。
今にも泣き出してしまいそうだ。
そこでアイリスはようやく躊躇を捨てたのか、親身な様子でサニーに声を掛けた。
「で、でも、何事も無かったから、大丈夫だよ……!わざとじゃ、ないんだし……あんなにすごい力なのに、誰も怪我してないの、すごいことだと思う……それで、十分じゃないかな……」
「っ……そう、だね。ありがとう」
同じく能力制御に苦労しているアイリスの言葉は特に響いたらしい。
サニーは顔を上げ、ようやく少し笑ってくれた。
場が和んだところで、話は更に先に進む。
最初に話を振ったレアが提示したのは、疑問だった。
「それにしても、あんなにすごい雷が落ちたところ、今まで見たことないわよ。今までは、ここまでじゃなかったのよね?」
天候に関して彼女より詳しい者はいない。
その言葉に、ロータスとサニーは揃って頷いた。
「うん。せいぜい部屋がちょっと焦げるとか、感電しかけるくらいだった。最近は暴走することも少なくなってたし、完全に制御が離れるって訳じゃないから」
「あ、あはは……でも、そうだね。今日みたいに、全く言うことを聞かなくなることは、今までなかったと思う」
…以前からかなりの苦労はあったようだが。
それでも、二人とも訝しげなのは間違いない。
今日の暴走は、明らかにイレギュラーなのだ。
ジオが難しい顔になる。
「穏やかじゃない話だが……だとすると、何らかの要因で暴走させられた可能性があるな」
「……えっ?」
サニーが間の抜けた声を上げる。
ジオの意見を後押しするように、リリーも冷静な声音で告げた。
「サニーちゃんの能力を利用して、社会を混乱させようとする……一種の反社会行為かな。ロータスみたいに、他人の能力に干渉するステルラを持っている人がいたら、有り得ない話じゃない」
「そ、そんな……」
リリーの説明でジオの含意を理解し、青ざめるサニー。
ロータスも動揺した様子で二人を見つめる。
「サニーの能力を利用って……本気か?それ、ミリシア様に喧嘩売ってるのと同じことだろ……」
先述の通り、神花はミリシア直属の巫女だ。
彼女らに悪意を持って接するということは、それ即ち主神たるミリシアを敵に回すということだ。
それは同時に、この王国の大多数の国民からの反感を買うということでもある。
つまり、酔狂でやることではない。
ジオは目を鋭く細め、腕を組む。
「残念ながらそういうことになる。もし、神花を利用しようとする輩が本当にいたとしたら……この話は、サニーの対応だけでは何も解決しない。下手をすれば、またこの街が火の海になる」
その言葉で、先程まで弛緩していた空気が一気に張り詰めた。
ここにいるのは、デイジーを除けば皆ミリシア教徒であり、何より十年前の災禍を知っている者達である。
心穏やかでいられる訳がない。
特に、ジオは。
「……何か、ここ最近の生活でおかしなことはなかったか?ちょっとした違和感でもいい」
サニーに問いかける声のトーンが低くなっている。
アイリスが若干怯え気味にレアに縋り付いた。
「違和感……ですか?うーん……」
サニーは首を捻って考え込んでいる。
ジオは何でも屋の面々にも視線を向けた。
「お前らも、何か気になることがあったら言って欲しい。もしかしたら、他にも何か異常があるかもしれない」
そう言われると、全員難しい顔をする。
「異常かぁ……何かあったっけ……」
「最近はそんなに事件らしい事件も起きてなかったしな」
「……強いて言うなら、デイジーが来たことくらい?」
「わ、私、サニーのこと、おかしくした……?」
「ないでしょ」
「ないな……」
途中で矛先を向けられたデイジーがしゅんとするが、即座に否定される。
いくらイレギュラーな存在とはいえ、デイジーに他者の能力を暴走させるような力はないだろう。
その点に疑う余地はない。
ジオは皆の様子を見て、静かに目を閉じた。
「まぁ、杞憂であればいい。いずれにせよ、サニーの暴走の原因は知りたいところだが」
「う、うぅ、迷惑かけてごめんなさい……」
「責めてないってば!ジオも別に怒ってるわけじゃないからな!あれが平常運転!」
「……」
泣きそうなサニーに慌てて呼びかけるロータスの言に複雑そうな顔をするジオ。
だんだん混沌としてきた会議の場で、デイジーはサニーを観察することにした。
まだこの世界に来て間もないデイジーが役に立てることと言えば、この『眼』しかない。
デイジーの瞳は、ステルラによって他の人より多くのものが見えている筈だ。
何かがサニーに起きたのであれば、それを見抜くことも出来るかもしれない。
そこまで万能ではないだろうと思いつつも、今出来ることはそれくらいしかない。
隣のレアが若干不審がるくらいに目に力を込め、金色の少女をじっと見つめる。
金糸のような鮮やかな髪に、思わず目を惹かれる整った顔立ち、雷をそのまま閉じ込めたかのように煌めく金の瞳、そして隅々まで美しい刺繍のされた、手の込んだ巫女服─
「───あ」
ふと、デイジーは声を上げて立ち上がった。
一気に注目を浴びたが、恥ずかしがっている暇もない。
サニーに近づき、戸惑う彼女の服─正確には日除け用の短い外套─に手をかけ、そっとどかす。
「え、えっと……」
困惑しているサニーに、デイジーは静かな声で言った。
「これ……元々、ついてるもの?」
デイジーが指差した先にあったもの。
それは、胸元に飾られた虹色の花だった。
結晶のように光を反射して輝くそれは、宝石のように煌びやかで美しい。
彼女の派手な衣装にも見劣りしていない装飾品に見える。
しかし、サニーはそれを見て顔を強ばらせた。
「違う……これは、私のものじゃない」
震える指がその花に触れる。
その直前、ジオが叫ぶ。
「──やめろっ、触るな!!!」
「え」
しかし、時は既に遅く。
サニーがそれを手に取った瞬間。
部屋が、爆発した。
眩い閃光と、凄まじい衝撃、そして耳を劈く轟音が世界を白く染める。
「わっ?!」
「ひゃあ……っ」
震源地の間近にいたデイジーは勿論、共に机を囲んでいた何でも屋の仲間たちも勢いよく吹き飛ばされる。
その衝撃で、デイジーの意識は半分刈り取られた。
僅かに残った感覚が伝えたのは、肌を撫でる空気に伝わる電流、そして自分を包む柔らかく暖かい感触だけ。
視界はちかちかと明滅し、音も聞こえない。
そして、しばらくの硬直状態から立ち直ったデイジーが恐る恐る目を開けると、ぼやけた視界に部屋の惨状が飛び込んできた。
木の中に作られたこの応接スペースは勿論木製である。
木で出来た壁と家具は、ところどころ焼け焦げて見るも無惨な状態になっていた。
木の破片が飛び散り、食器は散乱し、部屋の中で嵐が巻き起こったかのような有様である。
その中心には、魂が抜けたように呆けて座り込んでいるサニー。
そして、身体のあちこちを焦がしながら転がっているメンバーの姿が見えた。
「……!!」
遠目からでは、無事なのかどうかも分からない。
慌てて起き上がり、皆の状態を確かめようとして…
…自分が、怪我一つ負っていないことに気がついた。
最もサニーに近い位置にいたにもかかわらず、何事もないことに気がついた。
ステルラのおかげ?
まさか、そんな訳ない。
ただ視ることしか出来ない目に、そんな芸当は不可能だ。
だったら…
はっとして、視線を下にずらす。
そこでようやく、自分に覆い被さっていたものに気がついた。
鮮やかな赤髪と、黒い着流し。
ジオだ。
彼が、あの衝撃から自分を守ってくれていた。
…そのことに気づいた瞬間。
ずるりと、彼の身体が床に崩れ落ちる。
デイジーの細腕では受け止められず、どさりと重たい音がする。
「……ジ、オ……?」
震え声で彼の名を呼び、そして気付く。
ジオは、血塗れだった。
黒焦げになった床に鮮やかな赤が広がり、染み込んでいく。
煤けて破れかけた着流しの隙間から、焼け爛れた肌が見える。
デイジーの分まで爆発を受け止めたジオは、紛うことなき重傷であった。
デイジーは我に返る。
悲鳴を上げることすら出来なかった。
震える足で取り憑かれたように部屋を飛び出し、階段を転がり落ちる勢いで駆け下りる。
目指すは隣。
治癒院である。
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